第48話
別れの時がきた。
「ほんとにお世話になりました」
僕は、玄関で見送ってくれる沙紀ちゃんや、おかあさん、おばあさんに、深々と頭をさげた。
沙紀ちゃんは、もう泣いてはいなかったが、やっぱりさみしそうだった。
来た日と同じ、白いサマードレス姿だった。
「じゃあ、沙紀ちゃん、今度は、東京においでよ!」僕が言うと、
「うん。おにいちゃんも元気でね」とやっと笑顔になった。
「じゃあ、沙紀ちゃん、東京で」
「うん」沙紀ちゃんが頷く。
「また、来ます!」僕は、ハヤブサにまたがると、一礼した。
「きっとだよーっ!」
振り返ると、坂の上で沙紀ちゃんが大きく手をふっているのが見えた。
来た時と同じ、入道雲の湧き立つ夏空を背景にして。
僕は、もう一度、振り返って、手をあげて挨拶すると、そのまま、ウォルバーのタイヤを軋ませて急坂をくだっていった。
漁港のところまで下ってくると、浅葱食堂が見えてきた。
浩一君達の姿を探したが、その前には人の姿は見えなかった。
そのままノーブレーキで、海岸線の広い道に出ると、海岸線をひた走る。
岸壁の上に、サイクリングクラブのみんなが並んでいた。里美ちゃんや典子ちゃんもいた。
「貴ちゃん、またな!」皆一斉に手を振った。
「ありがとう。また来る!」
僕も大きく手を振ると、そのままスピードをあげて走り抜けた。
立ち止まってはいられない。僕の新しい旅がまた始まったんだ。
それは、きっと未来につながっている。
今回のこの旅で、心からそう思うことができた。
また、いつか海の見える街で!




