↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/50

第36話

食堂特製のお重は文句なしにおいしかった。


もっとも、このすずしい河原のテーブルで、腹を空かせた少年なら、なんでもおいしいに決まっているが。


「貴ちゃんのあの自転車、ランドナーっていうんじゃろ」慎太君が、するめをかじりながら聞いた。


自然と、話題が自転車に集中する。


「ちょっと、違うんだ。車種的には、スポルティーフと言うらしい。最初は、ノーマルなランドナーにしようかとも思ったけど、コーチしてくれている自転車部のお兄さんが、ロードレースが専門なのでもう少し軽いのがいいかなと思ったんだ。長距離ライド専用だよ。」


「ただ、いくつも峠を越えなければならないんで、ギヤは軽めにしている。フロントが46―34T、リアが13―24Tだ。」皆ふむふむと聞いている。


「フレームは、全部クロモリけぇ?」と慎太君。


「石渡の019ダブルバテットチューブがメインだけど、シートと、ダウンチューブは022にしている。多少多めに荷物を積んでも、大丈夫なようにね」僕が解説すると、

「なんか、ほんとすげーなぁ。」浩一君が感心して言った。


「実は、すべて、大学の自転車部のお兄さん達の受け売りだけどね。でも、今回の旅で、本当に役にたってくれた。満足している。ぢなみに、僕は、ハヤブサって名前を付けた」


「ハヤブサかぁ、かっこええなあ」


「それ、いい!俺も名前つけよう。浩ちゃん、サトミってつけていい?」と慎太君。


「おまん、殺されっど」と結構真剣な顔の浩一君。


「おら、流星がええな」と太一君が言う。


「おまん、ドン亀の間違じゃろ」一同の笑い声が、河原にはじけた。


夏空の下の、一点の影もない少年達の宴だった。


さすがに、気温があがってきて、蝉の声がうるさく感じてきた。


「よっしゃ、腹もくちくなったし、泳ぐか!」浩一君が、言うと、


「よしきた!」良さんが、真っ先にTシャツを脱ぎ捨てると、短パンのまま、淵に飛び込んだ。


僕が、どうしていいか躊躇していると、


「貴ちゃん、気持ちええで!」と良さんが、誘う。続いて、浩一君や、慎太君も飛び込む。


「男同士や、フルチンでもええぞ!」浩一君がどなる。さすがに、それは、と思い、レーサージャージを脱ぐと、レーサーパンツのまま、太一君と、飛び込んだ。


後で、革サドルには、サドルカバーをかければいい。


淵は、すごく冷たくて、結構深く、すぐに足がつかなくなった。


でも、さすがは、海の子達だった。泳ぎが達者なのは、すぐわかった。


競争するには、狭いので、皆思い思いに、水と戯れている。


僕は、あおむけに浮かぶと、そのまま、川の流れに身をまかせた。


見上げる空が、青い。


少年の日の空は、いつも青空だ。


さんざん、水と戯れ、すっかり、涼しくなったので、河原にあがった。


冷えた身体に。今度は、夏の日差しが気持ちが良かった。


みんなで、めいめい岩の上に寝そべる。


「不思議なもんやな。ついこの間まで、貴ちゃんのこと、なんも知らんかった。貴ちゃんが旅してこんかったら、一生会わんかったろう。それが、もうずいぶん長いこと友だちだったような気いしとる」


浩一君が、言った。


僕は、何も言わず、彼らの方をみて頷いた。誰もが頷いていた。


この旅は、僕にいろいろなものを与えてくれた。


ほんとうにかけがいのない、いろいろなものを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。