第35話
河原に降りると、きれいな砂利を敷き詰めたようなところがあった。
そこに、まるで、あつらえたように、テーブル代わりの大きな平たい岩と、それを囲むように並んでいる、椅子によい岩があった。
河も淵になっていて、すぐ手前に滝が見えた。
何よりも、上の道からは、まったく見えない。絶好の秘密基地だった。
「いいところだね。せいせいする!」僕が言うと、
「たあ坊が、小学生の時にみつけたんや。それ以来、わしらの基地にしておる」
岩陰に自転車をたてかけると、皆めいめいに、岩に腰を降ろした。
「おまんた、持ってきたか」浩一君が言うと、それぞれが、ザックやら、バッグから、お菓子や、くだもの、煮物から、するめなどの干物まで、取り出して岩の上に並べだした。
最後に浩一君が、結構な大きさのお重をリアのボストンバッグから取り出した。浅葱食堂の特製だった。
彼は、この荷物を積んで登っていたんだ。
いい気になって、軽いハヤブサを飛ばしていた自分が恥ずかしくなった。
「それでは、いまいかサイクリングクラブの、萩原君の歓迎会をとりおこなう!」
皆が一斉に拍手をした。
「皆さん、ありがとう、皆の荷物も知らずに、いい気になって坂を飛ばしてきた自分が、恥ずかしい。
本当にごめん」僕は、正直に頭を下げた。
「何言うとる、おまんは速いよ。わしら感心した」慎太君が屈託のない笑顔で言った。
「だいぶ、ぬくとくなったが」浩一君が、缶のサイダーをみんなに配ると、「じゃーん!」と太一君が、リアのバッグからすいかを取り出して見せた。
「おまん、よく持ってこれたな」半分あきれて浩一君が言う。
「後ろの特大パニアバッグをなめんなよ」
あの膨らみは、すいかがはいっていたのか。
僕が驚いていると、太一君は、そのままスイカを河の淵につるして冷やした。
「萩原君を歓迎して乾杯や!」
「貴志だ。貴志でも、貴ちゃんでも、好きに呼んでくれていいよ」
「よし、日本を横断して来てくれた、貴ちゃんに、乾杯!」浩一君が音頭を取った。
「貴ちゃんに、乾杯!」皆でサイダー缶をぶつけ合った。
「おまん、さすが、東京モンや、いかしとる」慎太君が言うと、
「うちの里美が何かと、うるそうてしょうがないわ」浩一君が苦笑いしていった。
僕が、なんと答えていいか困っていると、「おまん、何月生まれや?」と浩一君に聞かれた。
「3月だけど」と僕は答えると、にやりと笑い、「それなら、名実ともにわしが、おにいさんやな」
浩一君、さすがに、それは先走りすぎだよ・・・と言おう思ったが。




