第17話
やがて、景色が開け、市街に入った。
交通量が増えてきたので、国道から離れて、川に沿って進むことにした。
「なに、川の行き着くところは、海か、湖じゃわい。この川に沿って進めば諏訪湖じゃ」
地図も見ずに豪田さんが請け負うと、僕も、ついていった。
そろそろ暑くなってきた日差しも、川沿いだとまだましに感じる。
山々を眺めながら、降るような蝉の声をBGMに、のんびり進んだ。
川沿いの田舎道が尽き、県道に出ると、あたりが開け、諏訪湖が見えてきた。
さすがに日差しも痛いくらいになってきたし、とにかく腹ペコだった。
矢上さんいわく、ハンガーノックをバカにしてはいけない。
ロード競技では、走りながら少しずつ食べるそうだ。
そこまでしなくても、そろそろ走れなくなりそうだった。
湖岸の通りを走りながら、先頭の豪田さんに声をかけた。
「そろそろ、昼めしにしませんか」
「そうだな。諏訪と言えば、みそじゃな」
豪田さんは、独り言のようい言い、湖畔のドライブインへ誘った。
座るなり、出された冷たい水で、生き返えった。
豪田さんが、僕には、なじみがないみそ天丼を、二つ注文した。
たっぷりと汗をかいた後のみそ味は、体にしみるようにおいしかった。
僕がお金を払おうとすると、「約束じゃ、ちっとは、年上らしくさせろや」といって受け取らなかった。
湖畔の木陰を見つけて、ふたりで湖を見ながら食休みをとった。
「ええ旅じゃな。やっぱ旅は道連れとはよう言ったもんじゃ」少し涼しい湖畔の風に吹かれながら、豪田さんがつぶやいた。
さすがにメジャーな観光地だけあって、訪れる人が引きも切らない。
大部分がマイカーのカップルや家族連れだった。
その中にたたずむ、むさいサイクリスト二人は、かなり浮いた存在だった。
そのまま、諏訪湖畔を左まわりに走り、途中、諏訪大社によって、旅の安全を祈願した。
諏訪大社の荘厳な境内で休憩して英気をやしない、中山道を進んで、今日の第二の難所である塩尻峠に向かうことにする。




