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第39話 白紋の渓谷5

 俺たちは昨日とは別の壁面の道をたどるため、谷底のさらに奥へと歩みを進めていた。


 ちなみに、ブラストルさんたちは戦闘の後、這々の体で去っていった。リヴィアの方は絶対見ないようにして……変な噂が広がらなければいいが。まぁ大丈夫かな、真に恐怖を感じていたようだし。酒の肴にするには心の傷が深すぎるだろう。

 それにしても……


「……リヴィアの()()って、トンデモナイものだね……」


「うっ……ごめんなさい」


 別に説教というわけではないが、今後、人前であそこまでの力を見せるのは、必要がなければしないようにと説得したところだ。


『リヴィアは私の身体になってから、確実に【聖剣技】の力が上がっているの。元々S級だったけど……今は、どこまで行ってるのか想像もつかないな』


「そうなのです。フェリエ様の魔調力が凄すぎて、【聖剣技】が自分の思い描く通りに放てるようになって……その、もう、楽しくて、もっと闘いたくて……」


「世界征服するの?? するならリルも一緒に!」


「はは、すべては我が魂の主(マイン・ゼーレ)我が君(マイン・リーベ)が決めることだ」


『私はみんなと一緒に楽しく暮らしたいだけ。でもルミスは……やりたいことあるでしょ?』


「うん…………そのためには、俺がもっと強くならなきゃ。自暴自棄な強さではなく、目的を達成するための、みんなを守るための強さを……手に入れる。そうしたら……」


 ……故郷に戻る。そして……


我が君(マイン・リーベ)は強くなるさ。私が保証する」

『うん、ルミスはS級には届くよ。それ以上になるかは……いや、絶対なるかなぁ、私とリヴィアがいれば』

「ルミスは絶対、いい旦那さんとお父さんになるよ!」


「うぉぉぉー! まずは魂位上げだぁ! お金稼ぎだぁ!」


 滅茶苦茶やる気出てきたぞぉ!


 ◇


 谷底の奥まったところに壁面の道を発見した。ここまで来るとあまり人はいないな。谷底の道も狭まり、光もあまり届かなくなり、周囲は薄暗い。

 先程から谷底を歩いていても、魔獣に遭遇する頻度が高いように感じる。さっきの十数体に一気に襲われたこともそうだが、それ以降もそこそこの数の魔獣に襲われた。

 『雪原の剣』に調査依頼が降りたのも納得だ。だが、今の俺には都合がいい。多くの魔獣を倒して、少しでも魂位を上げたい。皆は俺のサポートに回ってくれるし、ああ……贅沢。


 壁面の道にたどり着く。あまり人が来ないからだろう、道はあまり整備されておらず道幅も昨日の道より狭い。


「とにかく落下だけには気をつけよう。俺は【空間魔法】の応用で、多少落下の速度を軽減できるから、死ぬことはないと思う。だから、落ちそうになったら俺がかばうからね」


「ん? おそらく私も聖剣技で衝撃波を放てば、落下速度くらい相殺できそうだがな。爆風を【神盾庇護ディヴァイン・シールド】の面で受ければ、なおのこと大丈夫だろう」


「あ、私も幻氷聖狐ミラージュ・セイブルの姿だったら、少しは空を駆けることできるよ。鳥さんみたいには飛べないけど」


「…………へ?」


 なに? なんなの? この人たち……


『みんな大丈夫ってことだよ。落ちて大怪我しても、私が一発で完全回復してあげるから』


 いや、ちょっと……まぁ、頑張ろう……


 ◇


 壁面に軽く魔素を這わせながら、慎重に進む。結構進んだが、どうも上に登る道ではなさそうだ。狭まる渓谷の奥へと進んでいく道のようだ。大丈夫だろうか、ちょっと不安になってくるが、いざとなればこのメンツならどうにでもなるかと思い直す。


 それにとても実入りがいい。ここに来るまでに拳大の白輝石と冷晶石を合計で5つも手に入れた。だが、どれも壁面の奥深くに埋まっていたもので、フェリエに魔素を分けてもらいながら、慎重に慎重に、鉱脈を辿っていった結果だ。


 おそらく今日だけで100万バースは超える収入だ……昨日の分も合わせれば……すご……もう氷霜王鹿ひそうおうろく超えって……


 前からここでの採掘は俺の【空間魔法】と相性がいいとは思っていた。こんな採掘方法は、俺の【空間魔法】がなければできない芸当だ。だが、当然、俺一人ではできない芸当でもある。いや〜、本当に……


「――うわっ」  俺は慌てて壁面から手を放し、魔素を流すことを止めた。


『どうしたの!? ルミス!』


「……何だ、この感触。とてつもなく強い……魔素? いや、違う……」


『リヴィア、代わって』

「はい」


 リヴィアの姿のまま、フェリアが()()()に出てくる。


「ルミス、一緒に」

「うん……」


 フェリエと手を重ねて、先ほどの鉱脈に再度、魔素を這うように流す。俺の魔素にフェリエの魔素を重ねて、慎重に、慎重に……


「――っ、これ!」


「――うっ! すごい力……これは、魔素じゃない……魂の力と言われる……魂力こんりょくの塊……魔素を宿す輝石なら、いくらでもあるけど……魂力を宿す輝石なんて、聞いたことがないわ……」


 何か、よくはわからないけど、“魂力”って言葉を上級冒険者がたまに話しているのを聞いたことがある。一般的な印象としては魔素のワンランク上の力? みたいな感じで捉えられていることが多い。それの塊……魂力を宿す輝石って、とんでもない価値があるのでは……?


「とりあえず、このまま【空間魔法】で収納してみる……」


「ま、待って! ルミス、これはっ!」


「うわっ」「なにっ!」「わ〜!」


 壁面の道自体が激しく揺れ始めた。いや、違う。これは局所的な揺れじゃない。渓谷そのものが、唸りを上げて震えているみたいだ!


「なっ……地震か!? うわぁっ!」


 次の瞬間、俺たち三人は激震に耐えきれず、壁面の道から弾き飛ばされるようにして、谷底へと投げ出された。


お読みいただきありがとうございます。

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