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第36話 白紋の渓谷2

「珍しいね、『雪原の剣』がこんなところに来るなんて」

「……………………」

「ギルメスさん?」

「……あれが……噂の二人か?」

「うわさ……?」

「ああ……セリスから聞いて、まさかと思ったが……こ、これほどまでとは……!」


 ギルメスさんがリヴィアとリルを見て、口をあんぐり開けている。美人魔法使いのリッカさんとシブおじ斥候職のセシムさんも同様だ。


「ああ、まだ紹介してなかったね。同郷のよしみで俺の仲間になったリヴィアとリルだよ」


 リヴィアとリルがゆっくりと近づいてきて、皆にあいさつをした。


「リヴィアだ。剣を使う。ルミスは仲間と言ってくれたが、私とリルはルミスの奴隷だ。故あって、ルミスを頼ることになった。よろしく頼む」


「リルです。こんにちは」


 リヴィアは一人ひとり握手を交わし、リルは妖艶にニコリと微笑む……自覚はないだろうけど。


「……本当にエロエロ奴隷ハーレムパーティーを作り上げたんだな。夢がかなって……良かったな……ルミス」


 一人で感慨深くなっているギルメスさん。


「いや、違うから……」


「そうか、まだまだハーレムと呼ぶには女の子が少ないからな……だがな、ルミス。俺は量より質だと思うぞ」


「だから、なんで俺の夢がハーレムになってんの!?」


 ◇


 「街に戻ったら、一緒に飲むぞ!」とギルメスさんに約束をさせられて、『雪原の剣』とはそこで別れた。今回、B級冒険者パーティー『雪原の剣』がここに来ていた理由は、冒険者ギルドから調査依頼を受けていたためだ。


 最近この『白紋の渓谷』の魔獣の動きが活発になっており、いつもより冒険者の被害が大きくなってきたらしい。


「俺らもここで10日間粘ったがよ、特に何も起きなかったんだよなぁ。まぁ、多少、魔獣は多かったけどな」

「そうね、時々、魔素が大きく乱れることはあったけど、すぐに収まったし……」

「……だが、確かに妙な気配は感じた。それが何かまではわからなかったが……気をつけろよ、ルミス」


 最後にセシムさんだけは少し難しい顔をしていた。


 少し進むと、石刃のような翼が唸りを上げ、岩翼蟲ロックウィング3匹が一直線に、こちらへ迫ってきた。霜喰い蟲(フロスト・グナウ)に羽を生やしたような魔獣であるこいつらは、特殊攻撃もなく単体ではさほど強くはないが、この足場で複数で襲われると倒すのに難儀する。何より硬いので、剣では相性が悪い。だが今なら、


「――【王鹿の吐息(おうろくのといき)】!」


 氷霜王剣フロスト・レガリアを横薙ぎに一閃し、白銀の冷気を岩翼蟲ロックウィングにぶつける。

 やはりリルみたいに凍らせることはできなかったが、羽の動きが止まり、谷底へ落下していった。

 ……ああ、素材が……と、つい貧乏性が出てしまう。


「なるほど、氷霜王剣フロスト・レガリアがなければ、我が君(マイン・リーベ)では対応が難しい狩り場だな」


「そうなんだよ。こいつら硬いから矢も通らないし」


「まぁ、我が君(マイン・リーベ)が対応しなくても、私とリルで相手をしておくさ」


「任せて! ルミス!」


「うん、任せる。俺は鉱脈探しに精を出すよ」


 そして俺は、壁面に魔素を薄く這わせながら、ゆっくりと道を進む。目的の『白輝石・冷晶石』は魔素との適合率が高く、地中へ伸ばした魔素が、かすかな反応を返してくる。

 その微細な応えを丁寧に辿り、鉱脈の位置を割り出していく――そんな算段だ。


『ルミスは本当に器用だね。まるで採掘専門の冒険者みたい……それも、相当な上級者の。魔調力が高くなければ、そんなやり方、まずできないよ』


「故郷にいた採掘者に、昔教わったんだ。結構筋が良いって褒められ……あ、この反応……」


 白輝石……と、もう一つ……この反応は……

 俺は氷霜王剣フロスト・レガリアを壁面に軽く突き刺す。


「――【氷脈柱ひょうみゃくちゅう】!」


 壁に氷霜王剣フロスト・レガリアを突き立て、刃から伸ばした氷の筋を壁面に這わせる。一点に集まった瞬間、大きな氷柱が壁面からが弾けるように突き出し、擬態していた壁にへばりついていた白壁鱗蜥はくへきりんせきの身体を押し出した。

 「ギェ!」と不気味なうめき声を残し、1.5メートル大のトカゲは壁から激しく押し出され谷底へと落ちていった。 

 ……ああ、素材が……


「……すごいな、そんなことまでできるのか。どれだけ氷霜王剣フロスト・レガリアを使いこなせるんだ、我が君(マイン・リーベ)は」


「ふふ、子供の頃からずっと夢想してきたからね……氷霜王剣フロスト・レガリアを使った闘い方を……フッフッフッ……」


「そ、そうか。いや、本当によかったよ。氷霜王鹿ひそうおうろくを倒せて」


 若干、リヴィアの顔がひきつったように見えたが、まぁ、気のせいだろう。それより、白輝石の反応もあったんだ。


「ちょっと、周囲の警戒を頼むよ」


 そう言って俺は、また壁面に魔素を薄く這わせる。

 ……あった、この薄い反応を辿るんだ……白輝石の鉱脈……


 ◇


 その日は谷底まで降りて野営することにした。俺の【空間魔法】とフェリエの【聖域展開】があれば、どこでも快適な野営ができるというこの贅沢。


 今日、採掘できた白輝石はこぶし大の塊が2つ……おそらく20万〜30万バース程にはなるだろう……すごい……ふへぇ〜。氷霜王鹿ひそうおうろくを除けば、今までに一日で稼いだ最高額だ。


「……てっきり採掘道具を用意してきたのかと思っていたら、いや、本当にすごい魔調力だな、我が君(マイン・リーベ)は」


 ふっふっふ……俺は鉱脈さえ見つければ、多少距離のある地中や壁内にそれがあっても、採掘できる……【空間魔法】でね! そう、鉱脈をたどり、ある程度の大きさのある白輝石を【収納レポノ】でいただく。

 これにはかなり集中力がいるので、ソロでは到底不可能だった。信頼できる仲間が不可欠だ。


「みんなのおかげだよ。一人でできる芸当じゃないしね」


 嘘偽りない言葉。仲間って……やっぱりいいもんだな。

お読みいただきありがとうございます。

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