第28話 やるべきこと
C級冒険者のビルガン・ノース。『職なし』だが、確かスキル【剣技】を使えたんだったか……そして、その仲間たち。C級冒険者パーティーとして登録されているはずだ。――そして、サブマスの金にたかる子飼いの冒険者でもある。
「俺は寛大だからよぉ~、お前が逃げ出しても、別に怒っちゃいないが……まだきちんとお前、俺に謝ってなかったよなぁ?」
「……俺は謝らないといけないことはしていないからね」
「おいおい……俺たちの荷物を持って、迷宮から逃げ出した奴が何言ってんだ?――ッイテ」
――パシッ!
ビルガンは俺の胸ぐらをつかもうと手を伸ばすが、リヴィアに手を払われた。
「薄汚い手で我が君に触れるな」
払われた手をさすりながら、ビルガンはニヤついた表情で舐め回すようにリヴィアを眺めていた。
「ネェチャン……あとでいっぱい触らしてやるからよぉ~、今は引っ込んどけ」
さらにリヴィアが前に出ようとするが、俺は手を上げて、それを止めた。
「へっへ、わかってんじゃねぇか、ルミス。とにかく今晩、サブマスの屋敷にご招待されてんだ。素直についてきな。お前が迷宮から逃げ出した件。本来なら冒険者資格を失っても仕方ないところを、俺がサブマスに取りなして、事なきを得たんだからなぁ。そんなお前が、たいそうな剣を引っ提げて、ましてや、とんでもねぇきれいなネェチャン連れてよぉ……お前も含めてそのネェチャンたちにも、まずはしっかりお詫びとお礼をしてもらわなきゃなぁ」
後ろの男たちも含めて……まぁ欲望に歪んだ醜い笑みを浮かべてらっしゃる。
……嫌なんだよなぁ、馬鹿を正面切って相手にするの。どうしても“面倒くさい”という気持ちが先に立ってしまう。これでも立ち回るの結構うまいから、こういったトラブルは回避してきたけど。
そういや、兄上や親父殿に怒られたよなぁ。時には正面切って自分の主張をしなければならないって。俺はなるべく表に出ないよう立ち振る舞っていたから……
俺が昔のことを思い出し黙り込んでいたのを見て勘違いしたのか、ビルガンは気持ち悪いほどの優しげな声をかけてきた。
「おいおい、そう怖がるなよ、ルミス。別に痛めつけようってわけじゃねぇんだ。ただ仲直りに一緒に気持ちいいことしようぜってだけなんだからよぉ~。大丈夫、ネェチャンたちにも優しくしてやるよぉ。傷つけちゃあ、もったいないだろ……?」
俺にだけ聞こえるように、顔を寄せてつぶやくビルガン……息が臭い。
「おい、ルミスに何やってんだよ」
顔なじみの冒険者たちが、集まってきてくれた。
「ああ? 関係ねぇだろ。てめーらには! サブマスの伝言を伝えてるだけだ、失せろ!」
「……っ、またあいつかよ!」
「おいおい、仮にも副ギルド長に向かって、アイツだと! それに、こいつを荷物持ち役として雇って迷宮に行ったとき、こいつは勝手に逃げ出したんだ! ギルドにもそう報告済みだ、知ってんだろ、てめーらも! それについてのお話合いだぞぉ~ 邪魔すんのか!?」
「くっ……」 「どうせ、それもお前たちが……」「クソどもが……」
勢いをなくした冒険者たちに、ドヤ顔を見せたビルガンはまた俺に顔を近づけた。
……にしても、みんなありがとう。ちょっと、というか、かなりうれしい。
「ここじゃ、まともにお話合いが出来ねぇな。さ、行こうぜ、ルミス」
ヤバい……リヴィアとリルが怒り心頭になっている。リルなんて、怒りのあまり口から牙が生えかけている。
さぁ、そろそろ……
「あのさ……なんでついていくって思ってんの? 頭沸いてんのか?」
「……は?」
予想外の言葉に、ビルガンは間抜け面を浮かべた。にしても、不細工だな。
「だからさぁ、俺たちがこのままついていったら、俺とこの二人を無理やり犯すんでしょ? 嫌がる俺たちを無理やり自分たちのおもちゃにするんでしょ? サブマスの金の力を借りて、弱い立場の俺たちを強姦するんでしょー?」
俺はギルドの隅々にまで聞こえるように、大声で言い放った。まったく抑揚のない言い方になってしまったが……
しかし、それが、今までこちらに関心を払っていなかった冒険者やギルド職員までざわつかせ始める。
「おい! てめぇっ……何、大声で言ってんだ、馬鹿か! 恥ずかしくねぇのか!」
うわ……なんか、こんな奴に非常識扱いされてる……でも、
「だって……馬鹿に対抗するためには馬鹿なことするしかないじゃん?」
「ああ!?」
俺は立ち上がり、ゆっくりと歩きながら演説を始めた。
「えー、皆さんもお聞きください。ご承知の通り、俺はこんな見てくれですが、もちろん男です。でもそこにいるビルガンさん一味は……」
俺は“ビッ”と奴らを指さし、
「迷宮内で、夜中に汚いナニをオッタテて、俺を襲おうとしましたー。こいつらは俺が魔物にビビッて逃げ出したって、ギルドに報告しているけど、もちろん嘘です。俺はこいつらが気持ち悪くて、空間魔法で身を隠しながら、こいつらから逃げ出しましたー」
「ふ、ふざけんなっ! 証拠でもあんのか!?」
さすがに俺もため息をついた。
「はぁ~。じゃあ、お前の言い分に証拠でもあんのかよ? 要はギルドがどっちの証言を是とするか、だろ? そしてお前はサブマスの後ろ盾があるから、うまくいくって思ってたんだろ? 馬鹿だねぇ~、いくわけないでしょ。アイツは何の権限も持ってないんだぜ? ただ、ちょっくら小金もってるだけのクソブタじゃねーか」
「お、おま、おま、お前っ!」
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