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第27話 お約束

「……ど、奴隷? またもや、こんな美人さんを!?」


「ええ……リヴィアと同じで、同郷の者で……」


「そうなんだ……それにしても……すごいね、その、色気というか……」


 リルは、それが自分の話題だと察したのか、にこりと受付嬢のセリスさんに微笑む――妖艶に。もちろん、本人にはまったくそのつもりはないのだが……


「――うひぃ……リヴィアさんもめちゃくちゃ美人だけど、また違った美しさと言うか……ルミス、本当に気をつけなよ〜。こりゃ、サブマスじゃなくても、ちょっかいかけられるよ」


 そうなんだよなぁ、厄介事が増えそうだ。俺がもっとしっかりしなければ。 


 ◇


「しっかし、一気に豪華になっちまったねぇ〜、ルミスは! こんな美人を二人も連れて! そしてコイツも引っ下げてんだ――はいよ、ルミスの『氷霜王剣フロスト・レガリア』だ!」


 ハルさんが店内の隅々まで響き渡る大声で、俺の『氷霜王剣フロスト・レガリア』について喧伝する。


「ち、ちょっとハルさん! あんまり大声で言わないで……!」


「大丈夫だよ! いいかい、この『氷霜王剣フロスト・レガリア』はルミス専用に作ってある! 刀身にルミスの名を刻んでいるし、埋め込んだ魔晶石にはルミスの魔素を登録している。ルミス以外が使っても、ただのなまくらさね! それに【追跡】の魔術も施しているから、盗まれてもルミスならすぐに見つけられるって寸法さ!」


 ハルさんはさっきよりさらに大声で、店外まで聞こえるように言った。というか、ほとんど叫んでいた。


「……えっ! そんなことまで! えっと、あっと……つ、追加の費用はおいくらで……?」

「そうさねぇ……まぁ、まけて一千万バースってとこかね!」

「――い、いい、一千万!」

「あはは! 冗談に決まってるじゃないか! あんたのその驚いた、かわいい顔見れたからタダにしてやるよ!」

「い、いや、さすがにタダは駄目ですよ!」


 その時、店の奥から主人のゲンブさんが、のっそりと現れた。


「うるせーぞ、小僧」


「す、すみません! あ、あのゲンブさん、ものすごい『氷霜王剣フロスト・レガリア』ありがとうございました! いろんな魔導術まで! あの、全部いますぐってわけにはいかないかもしれないけど、必ずお金払いますんで!」


「いらん」


「えぇー! でも……」


「小僧、お前の持ち込んだ『氷晶角』は最高の状態だった。加工する際に出る『氷晶片』が他の武具の加工にも使えるレベルだ。それがあれば、十分こちらに利益が出る」


 するとリヴィアが前に出て、深々と二人に頭を下げた。


「たとえそうであっても……ご主人、奥方、お二人のお気持ちはほんとうにありがたい。我が主へのお心遣い、心より感謝いたす」


「ありがとうございました!」


 慌ててリルも頭を下げる。


「大事に使います」


「おう。お前は武具の手入れは怠らねぇから、そこは心配してねぇ。だが、道具は所詮、道具だ。大事にし過ぎて道具に使われんなよ。てめぇが使いこなせ」


「はい!」


 ◇


 やばい、どうしよう……ウキウキが、ワクワクが……止まらない! 明日どこ行こう!


「ああ……とうとう氷霜王剣フロスト・レガリアを!」


「本当に欲しかったんだな、我が君(マイン・リーベ)


「ああ、これがあればもっと戦い方に幅が広がるんだ! 元々リヴィア達に出会うまではソロが基本だったから、遠距離攻撃の手段が弓しかなくて。でも……おれ弓術はイマイチだからさ……」


 宿へと向かう道すがら、抑えているつもりでも、胸の奥から湧き上がる喜びがどうしても隠しきれなかった。


『それ持つと、【氷魔法】が使えるんだよね? 確かにルミスには弓術より魔法の方が向いてるかな。【空間魔法】の固有スキル持ちなら、通常の魔法職より『魔素調整力』が高いはずだし。それに内在魔素なら心配しなくてもいいよ。私の内在魔素をいつでもあげるから』


「――えっ! どういうこと!?」


『ん? 【魔素譲渡術】だよ。本来は魔素欠乏症などの治療のために使う、少量の魔素を生命維持のために渡す治療術だけど、私の場合はその量が桁違いだから、普通に他人の内在魔素を回復できちゃうの。すごいでしょ?』


「……凄すぎです。聖女さま……すごいです」


『ふふーん!』


 フェリエは鼻高々だ。いや、それじゃ足りないくらい、とんでもないことだけど。そもそもフェリエの内在魔素量は底が見えないと言っていた。いや、これって……俺まで内在魔素量を気にしなくていいのでは……?


 ◇


 夕方の冒険者ギルド。宿に戻る前に、なにか良さげな依頼(クエスト)がないかを確認する。氷霜王剣フロスト・レガリアがあれば、今まで敬遠していた依頼(クエスト)も受けることができる、ふっふっふ。


「リヴィア、明日から別の狩り場に行こうと思うんだ。ちょっと剣では闘いにくい場所だけど、今は遠距離攻撃の手段もあるし」


我が君(マイン・リーベ)が思う通りに。我々はただついていくだけさ。な、リル?」

「うん! ずっと一緒!」


 おのれ……二人ともかわいい!


「随分と羽振りがいいじゃねぇか〜、ルミス〜」


 いやらしい声が聞こえてきた。振り返ると、ごつい男だけの六人組が、ニヤつきながらこちらへと近づいてきた。


「……ビルガンさん。何か用ですか?」


「おいおい、つれねぇな〜。一緒に迷宮探索した仲じゃねぇか。もっとも、途中で怖くて逃げ出したんだったか〜? おかげでこっちは迷惑したんだぜ! その時の迷惑料、まだ払ってもらってねぇよなぁ!」


 はぁ、さっそくですか……分かりやすい連中だ。


お読みいただきありがとうございます。

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