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第2話 空間魔法使い

「……ルミス、お前をこのパーティーから追放する!」


「……………………」


「戦闘に参加しないお前を、今まで荷物持ち(ポーター)として雇ってやっただけでもありがたいと思え!」


 迷宮から冒険者ギルドへ帰ると、リーダーのギルメスが唐突に俺に言い放った。他のメンバーは知らん顔だ。


「とっとと今回の遠征で集めた戦利品を出せ! それと、お前に預けていた消耗品と10万バースの金もな!」


 俺は何も言わず、言われた通りに空間魔法で収納していた物を出す。


「……ちょろまかしてねぇだろうな。まあいい。ああ、それと今お前が使ってる剣、それも置いてけよ。へっへっへ」


 ニヤついた顔でギルメスが俺に手を差し出してくる。


「……わかった」


 俺は素直に身に付けていた剣を渡す。


「へっへっへ、今日はやけに素直じゃねぇか。こんくらいで勘弁してやるよ~、ああ、さすがに今日の飯を食う金くらいは恵んでやるかぁ~」


 ニヤついたまま、ギルメスが数枚の金貨を投げてよこす。俺はそれを空中でキャッチして、


「…………まいど~。またよろしくね~。にしても、このくだり、毎回やるの??」


「ごめんね、ルミス。うちの馬鹿リーダーが」


 困り顔で美人魔法使いのリッカさんが謝ってくる。


「これも仕事の内だと思って付き合ってくれ。こいつ病気だから」


 シブおじ斥候職のセシムさんが、呆れ顔でギルメスさんを親指でクイッと指さす。


「なんでだよ! 盛り上がるだろ、こっちの方が!」

「アンタだけね」 「お前だけな」


 そう言って、仲間2人から呆れた視線を向けられる剣士のギルメスさん。どうも別の街で、こんな追放劇を見たらしい。だからと言って悪役をやりたがる心情はわからないけど。


 俺はというと、今回、この帝国北部の街バルサド所属のB級パーティー『雪原の剣(せつげんのつるぎ)』に、荷物持ち(ポーター)として雇われて、迷宮探索に赴いたソロのE級冒険者。固有スキルとして【空間魔法】を持っているため、時々こうして格上パーティーの荷物持ち(ポーター)役として仕事をもらう。

 ただ、【空間魔法】に内在魔素をだいぶ使うので、ほとんど戦闘には参加できない……ということにしている。本当はちょっと違うけどね。


 ちなみにさっき渡した剣はギルメスさんからの借りものだし、10万バースのお金は、一応、契約の保証金として預かっていただけで、終了したら返すもの。そして投げられた数枚の金貨が、今回の正当な報酬だ。


「そんなことより、ルミス。本当にウチに来ない? あなたなら大歓迎なのだけれど?」


「そうだぜ。お前は色々準備から雑務までこなしてくれるし、【空間魔法】ってのは貴重だ。最低限の自衛はできるし、問題ないぜ!」


 リッカさんとギルメスさんはだいぶ前から俺を誘ってくれる。セシムさんも否やなさそうだ。だけど俺は、


「E級の俺がB級パーティーに入るなんて無理だよ。それに俺は、自分の奴隷パーティーを作るって野望があるからね」


 そのためにソロや雇われで、多少リスクを負ってでも効率よく金を稼いでいるんだ。俺には奴隷を生かす“すべ”があるのだ。


「はぁ~、お前もかわいい顔して、『美少女だらけの“えろえろハーレムパーティー”作りたい』って……たいがいだよなぁ~」


「そこまで言ってないでしょ!」


「ムラムラしたら、いつでもお姉さんに言うのよ。ルミス~」


 子供の頃は完全に儚げ美少女に間違われていた俺も、15歳になり少しは中性的な顔立ちになってきた。そうなるとそうなるで、年上お姉さん受けが良い。

 多めのボディタッチで強制的にムラムラさせてくるリッカさんを、うまくかわしながら「まいどごひいきに~」と笑顔を残して、俺は常宿に戻った。


 ◇


 翌日、俺はバルサド近郊の森に来ていた。『迷宮バルサド』はD級以上でなければ入れないので、俺みたいなE級までの冒険者は野外活動が基本だ。ここで魔獣狩りや、魔草・薬草の採取をして、お金を稼いでいる。

 まあ、普通はこの森も4~5人のパーティーで活動するんだけど、正直、それだとお金なんて全然貯まらない。稼ぎをパーティーで均等割りすると、日々の生活で精一杯だ。だから大抵は、ここで経験を積み、『魂位』と『冒険者階級』を上げて、稼ぎのいい迷宮を目指すのだ。

 だが、ソロなら多少リスクはあるが、パーティーでの取り分の倍は稼げる。俺はソロで頑張って、『魂位』と『冒険者階級』を上げつつ、ガッツリ金を貯めて奴隷を買って、その奴隷パーティーを率いて迷宮に行くんだ! はーっはっは!


 ……さ、頑張ろう。あ、リュカ草みーっけ! お、魔鉱石の欠片もあった。 ぬお、出たな~、ホーンラビット! でぇ~い! はぁはぁ、勝てない相手ではないけど、すばしっこいから疲れる。でもこいつは角も肉も金になるから、とってもいい獲物。


「……はい、〈収納〉っと」


 俺の強さは平均的なE級。別に弱くはないけど、ソロで無双するほど強くもない。その俺が、ソロでやっていける理由。それがこの固有スキル【空間魔法】。

 【スキル】や『職』は、このロマリア帝国に住む帝国民であれば15歳の時に【魂鑑定】というものをエルウェ教神殿で受けることができ、その際に、ほんの一握りの人々が【スキル】や剣士などの『職』を得ることができる。

 だが、この固有スキルについては、先天的なもの。俺は物心ついた時からこの【空間魔法】を使えていた。それこそ幼少期に自分の身体を自由に動かせるようになる感覚で、この魔法を使いこなせるようになってきた。まさに成長と共に、といった感じだ。


 この【空間魔法】のおかげで、余計な荷物なしに、いつでも身軽に動き回れる。スピードでかく乱して戦闘するタイプの俺には最適な魔法だ。なにより強敵に出会っても、逃げやすい。スピードに自信があることに加えて……


 ん? 少女が、いや、美少女が——いや、超絶美少女が駆け寄ってくる!


「そこな少年! 私を君の奴隷にしてくれっ!!」


「………………は??」

お読みいただきありがとうございます。

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