第14話 今後
「……ああ。我が君は一見、華奢だし、動きも素早い。【剣士】の方が向いていると思ったが……あの戦い方を見れば納得だ。【戦士】はいくつもの武器に精通する『職』だからな。『職業補正』によって、様々な武器を使いこなすことが容易になる。まさに我が君には最適の『職』だ」
『あともう少しかな〜。ルミスの魂に【戦士】の気配は感じるから。あと少し、魂位を上げて〈魂の欠片〉を集めたら、私が【戦士】の『職』を与えてあげる。うふふ』
帝国民なら、十五歳の【成人の儀】で誰でも受けられる【魂鑑定】。だが、エルウェ教神殿で行われるその儀式で、実際に『職』やスキルを得る者はごくわずかだ。『職』を得ている人々の大半は、その後、多額の寄付を神殿に行い、幾度か【魂鑑定】を受けて『職』を得ているのが実情らしい。だが、そんなことできるのは元々才能があって稼ぎのいい冒険者か上級貴族くらいだ。だが俺は……
そうなのだよ。フェリエ様がいれば、多額の寄付をせずとも【魂鑑定】をしてもらい、『職』を授けてもらうことができる……しかも、毎日のようにフェリエ様が俺の魂を覗くもんだから、ちょっとゾクゾクして……じゃない、最短で『職』を得ることができる。恵まれ過ぎなんてレベルじゃないよなぁ……
◇ 〜少し時は遡り、宿での出来事〜
今後どうするか。結局、宿で話し合った結果は、『この街で冬を越す』ということになった。
まずは、何より先立つもの(お金)がない。フェリエ様も当然、無一文で逃げ出してきたし、E級冒険者の俺にそこまでの蓄えもない。この街には冬でも活動できる狩り場がいくつかあるし、何より『迷宮』がある。冬は雪に覆われ活動が制限されがちなこのノルヴァン州においては、冬も収入が見込める貴重な街なのだ。
そして、
「もうすぐ冬が来て峠越えが難しくなる。普通に考えればその前に、よりグロムザール大公国から遠ざかろうとするだろう。追手も峠の関所が封鎖される前に、急いでそちらに向かうはずだ」
とは、リヴィア談。今はリヴィアの白聖衣姿で、スラリとした脚を組んで椅子に座っている。スリットから覗く、白くて細い脚が艶めかしい。いや、白聖衣にスリット入ってるんかい! くっ……仕立てた奴、わかってやがる……いかん、話に集中せねば。
『そうですね。帝国中央部へと向かう街道と、聖ヴァルシア王国へ向かう街道と、最低でも二箇所には追手を向かわせるでしょう』
「なるほど。では、この冬はバルサドで息を潜めるとして……」
『え? 別に息なんて潜めないわよ。堂々とルミスと冒険するの!』
「えぇ!? でもさすがにあまり目立ちすぎるのは良くないですよ」
「大丈夫だ。活動するときは私の姿だからな。私を知っているものなど帝国にはいないさ」
「うーん、でも……」
『いくら目立たないようにしても、ルミスがリヴィアを連れて歩いてたら、みんな注目するわよ?』
……確かに、そうだよなぁ。リヴィアはまたフェリエ様とは違った種類の、隔絶した美しさを放っている。女の子にもすごくモテそう。
「まぁ、そうですね。どっちにしても旅費も稼がなければいけませんし。ところで、冬を越したらどちらに向かいますか? やはり聖ヴァルシア王国へ?」
『え? あの国にはもう戻らないよ。私を売った国だし、もう家族はみんな亡くなってしまったから』
「あ、そうでしたか……では、帝都ロマリアのエルウェ教本神殿へ向かいますか? 庇護を求めに」
『本神殿には一度行ってみたいかな〜。ルミスと一緒に観光でね!』
「か、観光って! ちょっと、真面目に答えてください。大事なことですよ! これからフェリエ様たちはどうしたいのか? どうであれ、俺はあなた達のために尽くしますから」
「ありがとう、我が君。あなたの気持ちはとても嬉しい。でも、私達は本当にただ自由になりたいんだ。言ったろう? いずれは神殿を抜け出すつもりだったと」
た、確かに言っていたな……いや、でも聖女様が神殿を……?
『私もリヴィアも一度死んだの……後悔にまみれながら……ねえ、ルミス。私たち……キレイ?』
いや、答えなんて決まってるでしょ!
「はい、それはもう。おそらくこのロマリア帝国の後宮にすら、あなた達お二人を超える美女はいませんよ。不夜城ルーベリスの『常夜の姫』と呼ばれる絶世の美女さえ、お二人にはかないません、絶対に」
『いやん!』 「はぅん……」
身悶えし始めた。
『……ありがとう、ルミス。正直言うとね、もう本当に正直言うとね……せっかくこんな美少女に生まれてきたのに、ぜ〜んぜん、素敵な恋ができない! ふざけるな〜! ってことなの』
「…………は?」
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