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第10話 隷属契約

「……フェリエ様の魂にはグロムザール大公との隷属契約が交わされているけど、リヴィアさんの魂は自由なので、リヴィアさんが《《おもて》》に出ている間は、隷属契約の縛りは受けない、ということですか?」


『ええ、そうです、我が君(マイン・リーベ)。ただ、それも完全というわけではありません。私が()()()に出ているときであっても、下された命令に抗おうとすれば、それなりに精神を削られてしまう。それでは、生死を分かつ局面で致命的な隙となりかねない……』


「ゆえに、私たちは一つの賭けに出たのです。リヴィアの魂に隷属契約を刻み、その契約によって私の隷属契約による命令に対抗する……」


『大公から、フェリエ様への隷属命令権を一時的に託されていたグルシオを討て――そう、我が君(マイン・リーベ)から命じられたことにより、私は奴と相対しても、向こうの隷属命令による精神的な干渉をまったく受けずに済んだ。……私たちは賭けに勝ったのです!』


 いや、その賭けには勝ったのかもしれないが……リスクが高すぎないか?


「でも、その、別の“賭け要素”が出てきちゃいますよ……リヴィアさんがその隷属契約の主人に逆らえなくなる……その主人に、今は僕……俺のことになるけど、利用される危険がある」


「その時は、私が()()()に出れば、最悪の事態は免れます」


「でも、もし()がグロムザール大公の下についたら? 二人とも逆らえなくなりますよ?」


 少しだけ昔の雰囲気を出して、軽く脅してみる。だが、フェリエ様は全く動じた様子はない。それどころか、目を少し輝かせて僕を見ている。


「そ、その雰囲気も素敵ですわ……色々楽しめそう……(じゅるり)」


 う、美しい口元から、何か垂れた気がしたが、いや、気のせいだろう。


「うふふ、私は聖女でしてよ、ルミス。エルウェ教神殿で準備さえすれば、隷属契約の解除くらいはできます。リヴィアの隷属契約もね」


 なるほど。だが、であれば……


「ご自身にかけられている隷属契約を、解除しないのですか?」


 はぁ~、とフェリエは深いため息をついた。そして頬杖をつき口をとがらせて、聖女様らしからぬ悪態をつき始めた……


「あのクソブタ……厄介な隷属魔法を使いやがったの。私も今までお目にかかったことのない種類だから、すぐには解除できそうにない。魔法の詠唱の中で『魂を束縛し……』どうこう言ってたけど。時間をかけて解析すれば、何とかなるかもしれない。どちらにしても、時間が必要なの」


 なるほど。だが、本当に綱渡りだな。であれば、リヴィアさんとの隷属契約は早々に解除されるのだろう。うん、ちょっと残念な気もするけど、さすがに、元聖騎士を奴隷とか、荷が重い。


「ですが、よく逃げ出せましたね。『グロムザール大公国』は北方諸国連合の中では、それなりに大きな国だと聞いてますが。しかも都合よく帝国内でなんて」


『ああ、今回はスヴァルドニア王国に内密での行動でしたからね。少数で秘密裏に帝国経由で移動していた途中だったんです。やるならここしかないと』


 そっか……まぁ、頭では理解したよ、頭ではね。あと一つ、どうしても聞きたいことがあるけど……疲れた……実はもう夜中だ。これ以上は聞いても頭に入りそうにない。


「状況は何となくですが、理解しました。でも、もう限界です……寝ましょう」


「えっ!?」 『きゃっ!?』


 なんか、驚いた表情をしている。え、だってもう……


「す、すみません。ただ、もうホントに限界で、我慢できないんです……ねむ……」


「——げ、限界って! そ、そうよね! 若いもんね! 我慢できないよね!? ご、ごめん、限界…だよねぇ……ぐへへ……」


 な、なんだ……急に、い、いやらしい表情を浮かべ始めた!


『と、とうとう私たちも……ど、ど、どうしましょう、フェリエ様』


「も、もう、臆病ねぇ、リヴィアは。最初は私に任せなさい。ずっとこの日のためにシミュレーションしてきたんだから。ま、まずは組んだ脚のつま先から舐めさせて……はぁはぁ……『それで私を気持ちよくさせてるつもり!』って顔を踏みつけて……それから、それから……はぁはぁ……」


『で、でも、それをエルザちゃんがウィルにやってたのは、物語の中盤以降で……』


「い、いいのよ! エルザちゃんは……『男って、ホントこーゆーの好きよねぇ』って言ってたから! 男はみんな好きなのよ!」


 ……何か二人だけでゴニョゴニョやってる。目の前で、超絶美少女が一人で、身悶えしたり恥じらったりを繰り返して……んで、ちょこちょこ聞こえてくる『エルザちゃんとウィル』って誰? ……まぁいいや、寝たい。


「それじゃあ、僕は隣の部屋にいるので。おやすみなさい」


「……へ?」『……ん?』


 ◇


——ガチャン


 扉が閉められた。本当にルミスは部屋から出て行った……え? なんで?


「ど、どういうこと? ルミス、ホントに出てっちゃった……」


『——はっ! もしや!』


「なに!? リヴィア?」


『第4章の後半であったあの場面では!』


「あ! エルザちゃんがウィルをベッドに縛り付けて、出て行っちゃったあの場面!? 数時間後に戻ってきて『はぁ、一人でいたくせに、なんでこんなに硬くなってんのぉ?』って、ペシペシした……」


『はい……“放置プレイ”……』


「くっ……ルミスったら、いきなりそんな高等テクニックを!? あんなかわいい顔して! はぁ~ん」


『ふひ~ん』


 じ、じゃあ、下着で寝てようかな。あ、ルミス、脱がせるのが好きかな?? いや~ん、もうルミスったらぁ~


 はぁはぁ……まだかな……

 はぁはぁ……まだかな……

 はぁはぁ……まだかな……


 ——チュンチュン……ん? 朝?


お読みいただきありがとうございます。

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