未知の生物、麒麟のロスカ
道すがら、邪神ヴァイスによって創られた謎の生物を助けたが、もしかしてこの手の問題が今のジェムボーデンには溢れているのではないのか?っと、今後の厄介事を想像したら気が滅入る。それを今考えてもしょうがないよな、うん。気を取り直して魔境調査の続きをしよう。
「時間もちょうどいいし、お昼でも食べようか。ロスカも食べて行きなよ」
「あっ、ありがとうございます。御相伴に与ります……」
ロスカはキョロキョロと挙動不審になりながら、恐る恐る俺の誘いに返答した。まだ状況を上手く呑み込めていないみたいだ。
「じゃぁ、マルメロとフィグお願いね」
「「はっ。かしこまりました。少々お待ちくださいませ」」
そう言ってメイド隊は軽くお辞儀をし、テキパキと昼食の準備を始める。
その間に、サブがちゃちゃっと一体型テーブルベンチを作ってくれた。六角形で非常にお洒落。
俺、サブ、ファム蔵はそのベンチに座り、テトはテーブルの上に座った。ロスカは、メイド達が食事の準備をしているのに、自分だけ座るのは申し訳ないと言わんばかりに恐縮しそわそわしている。
「まぁ、ロスカも座りなよ。食事の準備はマルメロ達に任せて大丈夫だからさ」
「はぁ……それでは失礼して……」
ようやく座ったロスカに、テトがあれこれ質問している。恐らくヴァイス関連の情報を聞いているんだと思う。その辺りの面倒事は全部テトに任せる。
俺はサブとファム蔵と、今日採集した資材について会話をしていた。その中で、上位トレントの材木としての性能が異常に高いことがわかった。まず湿気に強く、水に強く、火に強く、衝撃に強い。魔物としての耐久性も残るらしく腐敗などにもめっぽう強い。
「アイの旦那、こりゃ醸造所の建築に使えますぜ! あとは漆喰の変わりでもありゃ完璧でさぁ」
「サブもそう思う? これはいいもん見つけたね。あと、下位トレントも炭にすると備長炭みたくなるらしいから、バーベキューの時に使えるな」
「そりゃいいでやすね!聖域もますます豊かになるってもんでさぁ」
「炭があれば畑の土壌もよくなるべぇ。こりゃ魔境調査やって良かっだなぁ」
田舎育ちの俺としては、魔境での新たな発見は楽しすぎる。いやぁ~、面倒くさいから嫌だったけど、テトに感謝しなければ。
わちゃわちゃしていると、昼食が完成した。
「お待たせいたしました。本日の昼食はハンバーガーセットでございます」
天才かッ! ちょうど食べたかったやつ。異世界にきて一か月ちょっとが過ぎ、ちょっとジャンクなものが食べたいな~って思い始めた頃だよ。やはり、うちの子達は天才としか言いようがない。
デカいハンバーガーとフライドポテトにドリンクという、王道のセットだ。
ロスカと話していたテトも会話を中断し、「わぁ~い」という感じでふよふよとテーブルの上に置かれた料理の前に飛んできて、ちょこんと座った。
「じゃぁ食べよう。いただきまーす」
「いただくのである!」
「「いただきまーす!」」
男衆はそそくさとハンバーガーを食べ始める。
食べ始める俺たちを困惑した表情で見ていたロスカに、マルメロが声を掛けた。
「どうしたのですか?これは貴方の分ですよ。遠慮せずに食べなさい」
「は、はい。初めて『料理』というものを食べますので、少々戸惑ってしまいまして……」
そうマルメロに言われ、ロスカが何やらどんよりしそうな返答をした。
聞くところによると、不完全勘合生物の時は、まともに食事をすることができなかったようで、水や落ちている果実、弱った魔物やその死骸を食べていたようだ。幸か不幸か、半神獣であったために数年は食べずとも大丈夫であり、さらに絶痛絶苦の影響による錯乱で、記憶もほとんど朧げだったのがせめてもの救いだったと思われる。
「料理が冷めるので早く食べなさい」
さすが冷徹なるメイド長マルメロである。この暗めな空気を気にせずいつも通りの対応だ。
「では、頂戴いたします……」
ロスカは俺たちの見よう見まねでハンバーガーにかぶりついた。
「ッッ!!!!」
初めて口にした「料理」というそれは、これまで分からなかった「味」というものを教えてくれた。
一口かぶりつくと、口内が爆発したかと思うほどの衝撃、さらに咀嚼すると、今まで感じた事のない高揚感を感じる。痛くなく、苦しくなく、辛くもないのに泣く事があるんだな。ロスカは初めて己が生きている事を実感したのだ。
「泣きながら食事をする者がいるのであるな……」
泣きながらハンバーガーを食べるロスカを見てテトが呆れたように呟く。俺からすれば、オバケみたいな容姿の元神が、飯の度に「わぁ~い」って飛んでくる方が変だけどね。
「おかわりもありますよ」
「あり…がとう…ズビッ…ござい…ヒック…ばす……」
フィグからそう言われ、ロスカは泣きながらコクコクと頷き、お礼を言った。うち子達の美食を存分に味わっておくれよ。
「フィグ、私もおかわりが欲しいのである! フライドポテトなるものも山盛りでもらえないだろうか?」
感動するところに、空気を読まない下級霊がフィグにおかわりを要求した。何度も言うが、ロスカがこうなったのはお前にも責任あるからな、テト。
「ほんと、この下級霊はよく食べますね。ただ飯喰らいなんですから、少しはアイノ様のお役に立ちなさい」
辛辣な事を言いつつ、おかわりを給仕してあげる優しいフィグ。まぁ、ぶっちゃけ今のところテトはそんなに役に立ってないんだけど、可哀想なのであまり言わないであげて欲しい。キツイ事を言ってはいるが、テトを抱えているメイドゴレム達をたまに見かける。う~ん……明らかにペット扱いだな。
「まったく、辛辣であるなお主等は。だが、今はハンバーガーである!」
下級霊と言われる事より食事を優先するなんて、良くも悪くも打たれ強くなったな、テト。
◇ ◇ ◇
昼食も食べ終わり、一息ついたところで魔境の調査を再開する。
だいたい三キロほど進んできたのだが、もう取れ高オッケーって感じなんだよね。高級魔物も山ほど狩ったし、上位トレントという新発見の建材も収獲できた。正直もう帰りたいと思ったんだけど、もしかしたらまだ何かあるのではないか?っという山っ気が出てきたので、あとちょっと進んでみる。テトもそれなら満足してくれるだろうしね。
「食事のお礼もございますので、私が先頭を進みます」
ロスカが勇ましく先陣を買って出た。こういう善意は無下にしないのが俺だ。張り切っているロスカの後ろで、俺たちは自動伐採を行い道を作りつつ、魔境調査をしていった。
それにしても、ロスカって結構強いんだね。高級魔物を圧倒できる位には強い。これなら、この魔境でもやっていけそうだ。
ロスカの頑張りを前方に眺めながら、我々はせっせと伐採し道を作っていった。
それからしばらく進むと、魔境の空気が突然変わる場所に出た。元々ヤバそうな雰囲気の魔境なのだが、それでもさらにヤバい雰囲気がする。まぁ、俺達には些末な問題なんだけどさ。
「アイノ様、高級魔物が多く発生しております。狩りに行ってもよろしいでしょうか?」
マルメロが一応、俺に断りを入れてきた。ロスカの善意に気を配っていた俺を想っての事だろう。
「うん。もういつも通りやっていいんじゃない。ロスカも満足したと思うし」
申し訳ないが、ロスカが先頭で進むと俺達基準ではかなり遅く感じてしまう。ってなわけで、この重い空気の正体を解き明かす為、さっさと高級魔物を討伐してもらおう。
「ロスカ、下がっていなさい。先を急ぎますので、ここからは私達がこの高級食材……高位魔物を狩ります」
やや半信半疑で下がるロスカを横目に、メイドゴレム達がいつも通り高級魔物を討伐し始めた。本当にいつも通り、さっと魔物に向かっていき、ただただぶっ叩いて討伐し、亜空間収納にどんどん収納していくだけ。本当にただそれだけ。魔法とか武器とか一切使用しない。ただぶっ叩くだけ。
「…………」
メイドゴレム達の討伐する姿を呆然と見つめるロスカ。「理とは?」みたいな顔してるけど、気持ちはわかるよ。俺、元地球人ですから、この異常さに呆然とする気持ちはマジでわかる。まぁ、俺もそれできるんだけどね。心の中でドヤっておいた。
「「アイノ様、終わりました」」
「お疲れ。じゃぁもう少し進んでみようか」
さすがメイドゴレム。あっという間に片付いてしまった。結構な数の魔物がいたと思うんだけど。
呆然と立ちすくむロスカに、テトが「わかるぜ」と言わんばかりに肩を軽く叩いた。この二人は通ずるものがありそうだ。ちなみに、俺たちが作った道を見て、さらに衝撃を受けていたのは言うまでもない。
これより先には何かがありそうな気がする。なんかこう……面白そうな何かがあるに違いない。神としての直感がそう告げている。
久しぶりに立体マップで場所を確認してみると、どうやらここから約二キロくらいのところに何かがあるようだ。ただ、詳細が表示されない。水場の時は出たんだけど、今回は重要な場所を現してるっぽいピンが縮小拡大しながら点滅をしているだけだ。俺のマップに詳細が出ないのは初めてなので、面白い事が起こるぞこれは!
第一回・魔境調査もいよいよ大詰めだ! 頑張ろうぜ皆!
少しでも「面白い」「続きが読みたい」と思っていただけたら、
ページ下の「☆」を押して評価してくれたら嬉しいです!
とても励みになります!




