【閑話】おらが村の魔物食味番付
アイノ達の拠点周辺には色々な魔物が出没しますが、
可食魔物は意外に少ないのです。
田畑の整備も一段落し、持続的な食料問題が解決した。ライフラインや醸造所建造なんかは、メンテナンスの手間が掛からない建材を発見するまで、とりあえず一旦保留となっている。
俺がテトとこの世界に転生してから早一か月が経ち、日本にいたときとほとんど変わらない生活ができていると思う。それも、ゴレムクルス達のおかげだよ。創ってよかった我が子達。である。
さて、異世界生活も早一か月が経ち、次のタスクが決まった。これはどうしてもやっておきたい事なのだ。
それは……
「第一回、おらが村の魔物食味番付を決めよう!」
「なんなのだ急に?」
朝食後、皆がリビングでくつろいでいる時に、俺は唐突に提案してみた。ややチルってコーヒーを飲んでいる下級霊テトのスカし方にイラッときたけど、とりあえず皆が作業に入る前に言っておかないと、うちの子達は夕方まで永遠に作業を始めてしまうので、伝えるタイミングは今しかない。
「この拠点で生活始めてから一か月経つじゃん? だけど、いつも食べてる魔物の名前も特に決まってないし、味も結構違いがあったでしょ? だから今日! それらの食味番付と名前を決めましょうって話」
「言われてみれば確かにそうですね。さすがアイノ様です」
マルメロが真っ先に賛同賞賛してくれた。他のメイドゴレム達も「うんうん」と頷いている。こういうのは、家事担当のメイドゴレム達の方がピンとくるのかも知れないよね。
転生してからの一か月の間に、数種類の魔物を食べてきたのだが、魔物達は姿形も違えば味にも大きな違いがあった。基本的に美味いのだが、中には抜群に美味い魔物もいた。
この魔境に生息している魔物だが、テトが神であった時には存在していなかったようで、当然テトは魔境にいる魔物の名前を知らなかったし、グラスプで鑑定してみても固有名詞がなかった。なので、食卓に並ぶ時は、「あの赤い牛」とか「氷を飛ばしてくる鳥」とかそんな感じの説明だったので、毎回やや不安になっていたんだよ、俺は。
ちなみに、テトが説明してくれた魔物という存在についてだが、魔物には理性がなく、恐怖も思考も何もなく、目に映る生き物を「ただただ」襲うだけの存在。とのこと。そして、この魔境にいる新種らしき魔物達は、二千年前のテトの感覚だと「一体で街が壊滅するかもしれないレベルの上位魔物」なのだが、我々からすると「ただ美味いだけの存在」という感じなんだよね。まぁそんな上位魔物を単純に叩いて狩ってくるゴレム達の有能が光りますよね。
ってなわけで、魔物の固有名詞を決めるのと同時に、魔物食味番付をいきたいと思う。会議をスムーズにするため、魔物の絵はプラムが紙に描いてくれたのだが、リアル過ぎてちょっと引いた。
さて、早速ではありますが、第一回・おらが村の魔物食味番付を決めていく。
【ゴッツシリーズ】
魔境に生息する魔物の中では、さほど大きくもなく、強くもないのだが、とにかく発生率が非常に高くて容易に狩れるため、非常にコストパフォーマンスに優れた魔物達をシリーズ化した。
◆ゴッツブル
牛型の魔物で、その肉質は適度にサシが入っており、非常に美味。体高は二メートルを超える巨体で、黒光りした体躯に真っ赤なたてがみ、目が真っ赤で、大きくそびえる角、低位の火魔法を使うのため火属性魔石が採れる。
「ゴッツブルは脂っぽくないので、様々なお料理に使い易くて便利です。先日アイノ様にお出しした牛丼は、こちらのお肉を使用しまして、『美味しい』とお褒めのお言葉をいただきました」
――調理経験者アプルのご意見
◆ゴッツホッグ
やや猪に近い豚。イメージとしてはイノブタが近い。食味はブランド豚に匹敵する美味さ。体高は約一メートル半ほどで、濃い鈍色の体躯に黄色掛かった橙色のたてがみ、橙色の目、低位の雷魔法を使う。どうやら牙から放電しているようだ。雷属性魔石が採れる。
「アイノ様からのご要望でお作りしたトンカツは大変好評でした。アイノ様に喜んでいただけたのが本当に嬉しかったです。ちなみに、こちらの豚から採れるラードは品質がよく重宝しています」
――調理経験者オリンジのご意見
◆ゴッツフランゴ
鶏型の巨鳥。やや地鶏に近い身質をしており美味。百八十センチメートルほどあり、茶色に群青色のグラデーションという不気味な羽色、真っ赤なトサカに真っ赤なめ、風と氷魔法を使う。風か氷属性どちらかの魔石が採れる。
「ジャンクなフライドチキンを作るならゴッツフランゴ一択です。その他のお料理にも使えますし、使い勝手がいい食材です。ですが、頻繁に湧いて出るので最近は飽きてきました……アイノ様はお好きみたいなのですが……」
――調理経験者フィグのご意見
ここまでが簡単に狩れる魔物のゴッツシリーズ。イメージ的には、スーパーで売られている中で一番高い食肉って感じだけど、ここでは通常ランクである。専門店だと一番安いランクになるような感じだが、元山奥の田舎者からすれば、充分高級肉に分類される美味さなんだよね。
この三種の魔物の中での番付は、俺以外の票が見事に割れたのだけど、最後に俺がゴッツフランゴに投票した事で一位となった。二位と三位は同票。
ここからは、ゴッツシリーズとは一線を画す、おらが村の高級魔物になります。
【高級魔物】
ゴッツシリーズと比べると強いのだが、発生率が結構低く頻繁に狩る事ができない。その食味は非常に美味であり、我々の拠点では大人気食材となっている。美味なのだが、やはり発生率が低いというのが難点だ。ちなみに、高級魔物を狩ってきた日は、誰が調理をするかでメイドゴレム達が良く揉めている。どうやら高級食材で料理を作ってみたいらしい。
テト曰く、高級魔物は地上の子達からしてみたら災害級の危険さらしいのだが、ゴレム達はゴッツシリーズの魔物同様に、叩いて討伐し、普通に持って帰ってくる。うちの子は天才なのである。
高級魔物は個性も強い。
◆レッツモー
体高が三メートル半ほどで、アジアゾウくらいある巨大な牛型の魔物。和牛のようなサシが入っており非常に美味。猛烈に突っ込んでくるのが名前の由来。漆黒の体躯に、真っ赤なたてがみ、身体の所々に炎を纏っている。高位の炎魔法と闇魔法を使う。そのため、数百年は魔導力が持続する炎か闇属性魔石が採れる。
「先日の調理じゃんけんでは私が勝利しました。炭火焼、すき焼き、ローストビーフ……最高でした。何より、アイノ様にお喜びいただけたのが本当に幸せでした」
――調理経験者メイド長マルメロのご意見
◆ロッソポルコ
体高が二メートル強あり、全身真っ赤な体毛に覆われている豚みたいな魔物。ゴッツホッグと比べるとかなり豚感がある容姿。ブランド豚より遥かに美味であるため、この魔物だけは最初から「魔境エックス」と呼んでいた。各所に怒られそうなのでロッソポルコというギリギリの名前を付け直したが、魔境エックスと呼ぶ時もある。高位の土魔法と重力魔法を使う。基本的には土属性魔石が採れるが、稀に重力属性魔石が採れる事もある。
「オリンジとのじゃんけんに勝利したおかげで調理できました。トンカツをはじめとするお料理を作らせていただき、アイノ様からお褒めのお言葉をいただいた時は感激しました」
――調理経験者プラムのご意見
◆ファングムートン
羊型の魔物。俺的には魔境で最も美味いと思っている。体高は一メートル半弱と他の魔物より小さいのだが、レッツモーより全然強い。ベージュの体毛に覆われており、立派な角が生えている。羊型ではあるものの牙が生えていて見た目は凶悪。かなり高位の雷風無属性の魔法を扱う。基本的に無属性魔石が採れるようだが、結界魔石という変わった魔石が採れてテトが吃驚していた。ファングムートンは発生頻度がかなり低く、まだ数度しか食べた事がない。毛は羊毛として使えるので、メイドゴレム達が喜んでいた。
「そりゃぁもう、ジンギスカン一択だったよ。ついテンション上がって、万物創生でジンギスカン鍋を創っちゃったからね」
――地上神である亜神アイノのご意見
高級魔物は別格で、田舎者の俺ですら美味さがわかるくらいだ。難点としては、やはり発生率が低く、安定供給ができないというところだよね。農業ができるようになったし、次は牧場みたいなのを作ってもいいかな。いつまでも狩りに頼るのは面倒だからね。
さて、高級魔物の中での番付は、ファングムートンは俺とテトだけが投票し最下位。栄えある「おらが村の魔物食味番付」の第一位は……僅差で「レッツモー」だった。二位はロッソポルコ。次回までにテトと二人でジンギスカンの布教活動をしたいと思う。
今回はご飯のおかずとしての番付だったので、次回は「おらが村の酒の肴番付」を開催したい。その為には醸造所をなるべく早い内に建設しないとだよね。
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