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あゝ異世界転生、亜神なり ~能力全開の快適スローライフ~  作者: 渡名喜橋もうれ


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10/20

農業の息吹

 魔導力を活用したライフライン整備については目処が立った。


 そうなると、次に着手すべきタスクは田畑である!


 家にある食料のストックの中には、野菜もあるにはあるがこの人数でしかも皆大食いなので、あっという間に無くなるのは目に見えている。なので、亜空間収納の野菜在庫に関しては、ひと月も掛からずに消費されてしまうだろう。


 だけどねっ。家の周りの原生林を開墾すれば、田畑は作り放題なのさ!


 しかも、俺にはファームゴレムという第一次産業のプロフェッショナルが三名もいる。俺自身も転生前は農業レベルで畑仕事をしていたし、氏子さんの爺さん連中に鍛えられたもんよ。


 実際に田んぼを新たに作るとなると、それはもうかなりの労力が必要になってくる。開墾したり、水路を引いたり、畔を整備したり、役所で手続きをしたり……瀕死状態になるのは必須なんだよね。これらの悩みをあっさり解決してくれるのがうちの子達である。役所の許可?俺がルールなのだよ!


 それはさておき。


 ライフライン整備に目処が立ち、外に出て周辺散策がてら今後の展望を考えていたら、ファム吉と鳶郎が小走りでやってきた。ファム吉達の作業ってまだ掛かるよなぁっと思っていた矢先ですよ。


「アイノ様ぁ~。向こうに田んぼと畑完成したでよぉ~」


「アイの旦那! 水路もいい感じに出来ましたぜ! ちっと確認してみてくだせぇ!」


 かなりガタイの良い大男が二人で駆け寄ってくるのは迫力がある……。

 

 まぁそれはそれとして、俺らが魔導力について色々調べていた二時間ちょっとの間に田畑が完成しただと?! 半信半疑でファム吉と鳶郎に付いて行ったら、とんでもない風景が広がっていた。


「え、広ッ!! 田んぼだけじゃなくて、すぐに作付けできるレベルの畑まであるけど……」


 俺は驚きながらも、ファム吉に説明を求めた。


「ファム吉、ちょっと詳細教えてくれるかな」


「んだ、田んぼはだいたい三町歩あるべ。畑の大きさも全部で三町歩くらいあるでよ。ほんで、伏流水の近くさワサビ田も鳶郎達に作ってもらったでよ」


 創造神か貴様等は。目の前に広がる景色は、まごうことなく田園風景のそれであった。


 周辺の樹々も間伐されており見通しが非常に良くなっている。っというか向こうにめちゃくちゃ高い山があるんだけど……信州感がありすぎる……。


「あとは、アイノが様が仰ってた稲っちゅう穀物を植え付けるだけだべ。ってなわけでぇ、その種さ、いただければすぐやっちまうべよ」


 いやもう凄すぎ。うちの子達は天才過ぎて神と成りましたね。こりゃ俺が変に手を出すより、ファム吉達にお願いした方がいいわ。


「そしたら米だけじゃなくて、野菜もやっちゃうか」


 そう言って俺は、家の納屋から種籾と野菜の種を持ってきてファム吉に渡した。


 異世界魔境農業第一弾の作物リストがこれ。


 ・稲

 ・大豆

 ・小麦

 ・蕎麦

 ・じゃがいも

 ・玉ねぎ

 ・大根

 ・トマト

 ・ニンニク

 ・ワサビ


 大農家かってくらいの量だと自分でも思う。第一弾にあるまじき、てんこ盛り。それぞれ収穫時期が違うけど、ファム吉曰く「それは問題ないべよぉ」とのこと。これだけあれば、大抵の料理は作れるかな。


 リストにはないけど、生姜に関しては田畑を開墾する際に、似た植物が大量に自生しているのを発見し、自分達で採取して栽培できるようにしたらしい。異世界での呼び名は「ヘッジヴル」というみたい。翼を授かりそうで不安だよ……。


 ちなみに、なぜ種があるのかって?そりゃ田舎出身者ですから家にあったんですよ、種が。あと、ウラノスが言っていた「周辺施設の使えそうなモノ」の中にも、野菜の種なんかが入ってたんだよね。


 その中でも一番テンションが上がったのがワサビの種。実は、氏子さんにワサビを育ている爺さんがいて、その施設に種があったのかも知れない。(ウラノスが融通してくれたのかも知れないが)


「はい、これが今回お願いしたい野菜の種ね。詳細はグラスプとか異世界叡智でいけるでしょ?」


「んだ、問題ないべ。これが稲だべかぁ。確かにちょっと我儘な感じがするべ」


「んだな、その分こりゃ育てがいがありそうだな」


「んだんだ」


 俺がファム吉に稲の種を渡すと、ファム蔵とファム太も加わって、わちゃわちゃと楽しそうにやっている。


「そいだば、発芽から作付けまでやっちまうべ」


「「んだなぁ~」」


 なんか色々と緩い。


「鳶郎もありがとうね」


「なぁんも! これくらい朝飯前でさぁ!」


「トビジもサブも、ありがとうな」


「親方の言う通りでやすよ、アイの旦那! これくらい余裕でさぁ! なぁサブ!」


「おうよ! あっしらはアイの旦那のお役に立つために頑張るだけでさぁ!」


 いい子。うちの子達は天才だし、いい子達なのである。


 俺から種を受け取ったファム吉達は、三人で向かい合い、その中心に種を置き、なにやら儀式みたいな事をやっている。しばらくすると、種が光ったかと思った次の瞬間、動画の早送りのような速度で発芽したのだ。そして、その発芽した種達は「シュッ」と一斉に田畑の方へと移動し、勝手に地面に埋まっていった。


 いや、創造神かって。


「ふぅ、終わったべぇ」


「んだな。初めての作付けだから気合が入っちまったべぇ」


「だども、楽しかっだなぁ」


 ファム吉、ファム蔵、ファム太が一息ついて談笑していると、あのヒステリック下級霊が凄い勢いで飛んできた。


「ッツォーーーイッ!!! なんだこれはッ! いったいどうなっておるのだ?! もはや天変地異であるぞこれはッ!」


 わかる。至極真っ当なリアクションだよテト君。そのパニック浮遊も当然だと思う。


 でもね……


 うちの子達は天才なのである。




◇ ◇ ◇




 作付けが終わり、後は収穫を待つだけなのだが、ファム吉が言うにはだいたい二週間くらいで収穫が可能との事だ。……早くない? それと、稲は我儘だったがワサビは頑固かつ非常に繊細で、収穫までに半年ほど掛かるらしい。不思議だ。


「だども、こんなに早く育てられるのはアイノ様の神域だからだで。他所じゃもっと時間が掛かるはずだぁ」


 神域で湧出する伏流水を使って、神域内で作物を育てればそりゃそうなるのか。ファム吉が言ってるからそうなんだろう。


 作物を収穫できるまで二週間、これといってやる事がなくなったので、ゴレム達と魔境を散策したり、開拓をしたりしていた。その際に、水場とは反対側に川が流れている事がわかった。ある程度の川幅があるので、釣りをしたり、下って海に出たり色々と使えそうだ。


 家から見て右側を田畑エリアとして開墾しているので、左側は各種醸造所の建設や、保管庫の様な施設なども建設していきたい。田畑が完成すると生活水準が爆上がりするし、食料以外の事に着手する余裕もできるから嬉しい限りだよ。ゴレムクルス様々です。




 なんだかんだで、あっという間に二週間が過ぎ、ついに待ちに待った収穫時期がきた!


 日に日に成長し、頭を垂れるほどに実った黄金色の稲の美しさったらないよ。


 収穫は、予想通りだけどファームゴレム三人衆が神力によってサクッと収穫していた。両手を身体の前に出し、手の平を上に向け「収穫」と言っただけで、田んぼの上に稲がみるみる集まっていき、亜空間収納に「シュンッ」と収納されていった。我が神社の氏子さんだった米農家の岡田さん夫婦が見たら腰抜かすぞ。


 野菜の収穫は、マルメロ率いるメイドゴレム達が数日分の野菜を収穫しており、残りはファム吉達が次々と亜空間収納に収納していった。ゲームとかだと「面白い」で済んだかもしれないが、現実で見ると結構怖い現象なんだよね。


「全く……お主等どうかしておるぞ」


 はぁ、っと、ため息をつきながら呆れるテトだが、そんな事を言いつつマルメロに、収穫した野菜でどんな料理を作るのかをソワソワした様子で質問している。この魔境で最も食事を楽しみにしているのはテトなのは間違いない。


 今回収穫した米には「魔境ロマン零号」と名付けた。


 ちなみに、害虫や害獣などの被害は全くなく、収穫率は脅威の百パーセントだった。栽培すれば全て収穫できるという、とんでもない収穫量になったけど、これでひとまず米の心配がなくなった。日本人は米がないと生きていけないからね。


 米の他に、小麦と蕎麦も栽培していたので、こちらもまた楽しみだ。調味料も醸造していく必要があるので、大豆の栽培は絶対。今回栽培した野菜たち以外にも種はまだまだあるし、それらは次回栽培してもらおう。


「ところでファム吉、今回収穫したら次の栽培はいつになるの?」


「だいたい一か月くらい田畑さ休ませてあげれば、またすぐに育てられるべ」


 田畑の土壌マッチョ過ぎるだろ。半年もすればメガスーパー以上の在庫になるよ。


「まぁ穀物も野菜も亜空間収納に入れておけばいいし、田畑に関してはファム吉たちに任せるよ。拡大してもいいし、後はよしなに頼むよ」


「かしこまりましただべ。どんどん作っていくべぇ」


「これから忙しくなるだなぁ」


「鳶ゴレム衆に言って、田畑さ造成しねぇとだな」


ファム吉、ファム蔵、ファム太はそう言って休耕の準備を始めた。大農場になる未来しか見えないよ俺は。




 もうこれで生活基盤はほぼ完璧と言っていい。後は調味料類や酒の醸造所を作るだけなのだが、これはライフライン施設と同様に建材が見つかり次第になりそう。


 余談だが、調味料の中でも、塩だけはほぼ無限に持っている。なぜかというと、収穫を待っている間、マルメロ達が魔境散策中に発見した、めちゃくちゃデカイ巨大岩塩を持って帰ってきたんだよね。しかも、一個二トンはありそうな巨大岩塩をボールを持つかのような感じで持って帰ってきたから、テトがパニック浮遊をキメてたのは言うまでもない。その岩塩を製塩したので、塩の在庫はほぼ無限だ。


 夕方前になり、そろそろ家に戻ってゆっくりしようかなと思い周囲を見渡すと、さっきまで無かったはずの東屋があちこちに建っている。何やら鳶ゴレム達がせっせと作業をしており、田畑エリアは完璧に江戸時代風になっている。

 うん、もう好きにやらせてあげよう。


「皆、そろそろ暗くなるから家に戻ろうか」


 俺の呼びかけに男ゴレム衆達が応えて、皆で一緒に家へと戻った。


 さて、今後はゆっくりダラダラと魔境を開拓していって、拠点を充実させればいいかな。段々と異世界救済という使命がある事を忘れかけている。亜神である事を忘れてしまいそうだよ。


 夜は皆で豊作を祝って宴会をやった。テトっぽく言うなら、酒の醸造は急務であるな。


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