8話
「ん……んん?」
コギトは目を覚ますと簡易的なベットに寝かされていることに気付いた。
硝煙の匂いが染み付いたそこはどうやら車の中のようでコギトは自らが気絶している間にどこかに運ばれているらしいことを察した。
運転席には人が一人座っているのが見える。
(女性……?)
コギトが血の足りない頭でボーッとそれを見ていると相手も気づいたようで車を停めて運転席からこちらに歩いてきた。
「兄ちゃん災難やったなー」
(小さい……)
そう言いながらケタケタ笑う女性は女性ということを加味しても成人していないコギトと比べてかなり小柄だった。
「肩ぁ大丈夫そ?」
そう言われてコギトは肩に巻かれている包帯に気付く。
「あっこれ……」
「いーよいーよ気にせんで。ウチからすれば商品使えんから中途半端な治療しか出来んほうが気がかりやし」
どうやら眼の前の女性がコギトを治療してくれたらしい。
「ありがとうございます」
「いーって気にせんで、照れるからなぁ」
そう言って眼の前の女性はクネクネと動くが唐突にその動きをやめ真剣な顔になる。
「そう言えば私の自己紹介してなかったな、ウチは移動店舗ハイドアンドシークの店長やってるモナカって言うもんや」
「コギトです」
「そかコギト君、いくつか質問いいかな?」
「はい」
「君ぃ反企業派の人やろ?」
コギトは一瞬答えて良いか悩んだが腕に巻いた反企業派ということを示すバンダナは着けたままだ。
つまりは彼女は確認をしているだけだろうと判断して答える。
「そうです」
「そかそか、いや別に警戒せんでいいよ。どちらかといえばオネーさんも反企業連派やからな」
そう言ってモナカという女性はまた元気よく笑う。
薄々気付いてはいたがどうやらモナカは企業連の人間ではないらしい。
もし彼女が企業連の人間だったら今頃コギトは目を覚ますことなく死んでいただろう。
「それで、コギトくんは街から逃げ切ったってことでええんよな?」
モナカはコギトの肩を見ながらそう言う。
「はい」
「一人で逃げ切ったんか?他の人ぉおったんならウチが拾うけど」
void2がいたので一人で脱出したかと言われると難しいところだがモナカが聞いていることはそういうことではないだろう。
つまりは他に生き残りがいないかどうかを彼女は聞いているのだ。
「いえ……一人です」
「そか……」
モナカは一瞬暗い顔をしたがすぐにコギトに向き直した。
「それじゃあウチばっかりが質問してもしゃーないからコギト君、なんか質問あるかい?」
「あ、それでは僕を見つけた経緯について教えてもらって良いですか。気絶したことは分かっているんですが、貧血で記憶が曖昧で……」
「おぉええで。と言ってもウチも経緯って言う経緯はないんやけどな。反企業連側の都市で商売やってさて帰ろうと都市を抜け出したところで爆撃されたんや、んで命からがら逃げ出してどこに逃げようかなーって荒野を進んでたら君を拾ったねん」
「こ、荒野で……」
都市の外には荒野が広がっている。
そこは100年前の戦争で未だ草が生えなくなっている地域でありその戦争の余波で荒野の生物たちは独自の進化を遂げている。
(よく生きてたな)
血を流しそこで気絶したコギトが荒野の生物達に襲われることなく、失血死をする前にモナカに助けられたのは幸運と言えるだろう。
(俺、助けられてばっかりだ……)
この短期間でvoidたちやモナカに助けられている自分を少し情けなく思うコギトだった。
「あ」
「ん?なんや?」
そこで起きてからvoid達の姿が見えないことにコギトは気付く。
だがここでvoid達を呼ぶわけにはいけない。
ひとまず後で対応することにした。
「あ、いえ……僕ってどれぐらいの間寝ていたのかなって」
とりあえずコギトはさっきのことを誤魔化すついでにもう一つ気になっていること。
「んーざっと12時間以上は寝てるねー」
「12時間以上……」
なるほど通りで車の窓から見える景色が夕焼けから朝方に変わっているはずだと納得する。
「あともう一つ、モナカさん。今はどこに向かっているんですか?」
「あーー今?」
それなりの時間を移動しているはずだがどこに向かっているのか気になったコギトは最後に気になっていることを聞いた。
そしてそれを聞かれたモナカは言いづらそうな顔をする。
数秒迷ったような素振りを見せてから意を決し話し始めた。
「企業連の都市だよ」
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「いやーすまんねー怪我人に荷物なんて運ばせて」
「い、いえ……治療もしてくださったので」
ここは企業連の都市の一つ。
アナガリスと言うことをモナカは説明してくれた。
コギトは今反企業連のバンダナを外し都市に入ってモナカに持たされた荷物を運んでいた。
(本当に簡単に入れた……)
void2が企業連の警備は甘いと言っていたがそれが思わぬところで証明されてしまったようだ。
都市の入り口でも危険物を持っていないか車の中などを軽くチェックされたぐらいで特に何も言われなかった。
銃などもあの車には積んであったのだがそんなものは危険物の内に入らないのだろう。
「そういえばコレって何が入っているんですかね?」
車に荷物を運びそれをいくつか積み上げながらコギトは質問する。
今彼女はスーパーマーケットの眼の前に車を停めている。
一体何を積み込んでいるのだろうと興味本位でコギトは聞いた。
「あーそれは食料や」
「食料?売るんですか?」
「あーちゃうちゃう、個人的なやつや」
個人的なやつとはなんだろう。
これ全部一人で食べたりするんだろうかとコギトはモナカの小さい体を見つめた。
「……いや、ちゃうよ?」
モナカはコギトが失礼なことを考えていることに気づいたらしく不機嫌そうな顔をした。




