5話
『駄目そうね……下がってコギト君』
そう言われたので瓦礫に身を隠しながら後ろに下がる。
『近くに古代遺物の索敵機器を持った兵士がいるわ』
「!」
索敵機器とは最近最前線で企業連が投入している兵器の一つだ。
主に視界を拡張するなどで戦闘の手助けをしてくれる。
しかし古代遺物と言われる超文明の遺跡で見つかる索敵機器はレベルが違う。
古代遺物の索敵機器を持つスナイパーは数キロ先の壁の裏にいる見えない敵も簡単に撃ち抜くなどと言われる。
対策なんて取りようのない兵器が持ち込まれてるなんて。
体が緊張して固くなるのが分かった。
『大丈夫よコギト君。君が聞いている物ほど精度は良くないし、私が隠してるから。あまり近寄らずに視界に入らなければバレることはないわ』
その時ブブブと耳元で小さい音が聞こえるのが分かった。
何かと思い横を見るとそこには虫のような何かがいた。
「蜂……?」
いや違う。
機械か?
もしかして敵にバレた?
『落ち着いて。それは私達の虫型飛行ユニットよ。それで今貴方の周りに索敵機器に対する妨害電波を発生させているわ』
「そうなんですね……」
不思議そうにバグドローンを見つめている俺を見てvoid2は笑う。
『それらを使って貴方を地下まで運んだのよ。色々な機能を持つの。Bちゃんって読んであげて』
「び……Bちゃん……」
それはどうなんだと思いながらも気を持ち直す。
索敵機器があると言われた緊張感は霧散していた。
『さて、緊張は解けたかしら?』
「あ……」
void2は俺をみて楽しそうに笑ったあと真剣な顔に戻る。
『良さそうね……今から別の道に進むわ。本当ならこの道を使いたかったんだけど、索敵機器を騙せても実際に目で見られたら意味ないからね。ここさえ抜ければすぐに街の外に出られたんだけど……仕方ないわね』
「はい」
『でも他の道は戦う必要がでてくるわ。貴方の持っているハンドガンは幸いにもサイレンサがついているけど戦うのは常にデメリットが付きまとうの』
void2は真剣な顔に俺を心配するような色を混ぜる。
『いい?私が下がるように言ったらすぐに下がること。撃てと言ったらすぐに撃つこと。これさえ守れば貴方は安全にここから逃げれるわ』
「分かってます」
『お願いね。それじゃあ新しい道を表示するわ』
彼女がそう言うと眼の前に新たなラインが追加される。
その道は別の建物の瓦礫に繋がっているようだった。
『あそこに敵が2人いるわ。ちょうど良く離れているからそこを狙ってどちらも殺すわ』
「分かりました」
『言わなくても分かるとは思うけど足音は立てちゃ駄目よ』
そうしてその瓦礫の山に近づいていく。
途中で犯された女性の死体を見たときに必ず殺してやると決意を新たにする。
ある程度の距離まで近づくとその姿が見えた。
頭を守るヘルメットも外しておりその上欠伸までしている姿に殺意を覚えたがまだvoid2の予定している狙撃地点には届いていない。
『あと少し……そう。そこで止まって。私と同じように構えるのよ』
「……」
おそらく5mといったところだろうか。
まず外すことはない距離だ。
隣のvoid2と同じ構え方をし頭を狙う。
『カウントをするわ……3.2.1……撃て』
そして引き金を引いた。
あっさりと眼の前の男が倒れる。
こんなものか。
『彼の持っていた銃を奪って……そう。そしてあの瓦礫の裏に隠れて』
先程とは違い赤でラインが引かれその道に沿って瓦礫の裏に隠れる。
それとほぼ同時にもう一人の兵がやって来る。
やはりサイレンサがついているとはいえこの距離にいるならバレるか……
「クソっ!どこから撃たれた!?」
キョロキョロと当たりを見渡しながら走ってくるこの男も先程撃ち殺した男と同様にヘルメットをつけてない。
簡単に殺せる。
『まだよ……彼が報告の為に銃から手を離す瞬間を狙うの。さっきと同じようにやってね』
そうするとまた隣にvoid2が現れ銃を構える。
同じように構えると予測線のような物が視えそれと同時に数秒後の着弾時の彼の頭がある位置が表示される。
今回はそこを狙うということだろう。
『カウントするわ……3.2.1……撃て』
「グアッ!?」
「クッ!」
だが運悪く男は頭をそらし今度は一撃で殺せなかった。
それと同時にvoid2が叫ぶ。
『もう一度彼を撃って!』
「っ!」
もう一度男に狙いを定めるがそれよりも先に男が瓦礫に隠れるほうが早かった。
『腐っても訓練を受けた兵士と言うわけね……すぐに逃げるわよ』
もう一度ラインが引かれる。
それは先程男が隠れた瓦礫を迂回していた。
「……!?」
『言いたいことは分かるけど仕方ないわ。出来るだけ追跡を遅延するためにやることだから……カウントするから走って頂戴!』
男の姿が白いラインで表示される。
俺は射撃予定地点と表示されているところまで一直線に走った。
『3.2.1……撃て!』
「反企業側の生き残りがいましッ…」
今度こそ頭を撃ち抜くがそれを確認する暇もなく走り抜けた。
『まだ大丈夫よ。焦らないで。私が必ず貴方を生き残らせるから』
そういうvoid2の顔は微笑んだままだ。
だがそれが今不味い状況なのかそれとも本当に問題がない状況なのか分からなくさせている。
だが焦ってはいけないというのは本当だろう。
少しでも落ち着かせようと深い呼吸を意識するが心臓は強く脈打ったままだ。
だがその時void2の顔が明確に曇る。
『早すぎる……!』
何がと思う暇もなくvoid2は指示を出してきた。
『狙われているわ!横に飛んで!』
そう言われた瞬間白線で囲われた瓦礫に向かって飛ぶと先程までいた場所に弾丸が命中した。
『これは大きな誤算ね……』
俺の視界にはスナイパーライフルを持った人間が白い枠線で表示されていた。




