4話
『質問があれば今ならある程度答えられるわ』
地下を歩いているときvoid2がそういった。
「契約相手のことを色々聞くのは良いこととは思えませんけど……」
『その姿勢に私はとやかく言うつもりはないけどこれは私達を少しでも信用してもらうためのサービスの一環みたいなものよ』
なら多少は許されるということだろうか?
「では貴方達は結局AIなんですか?亡霊なんですか?」
その質問を受けても彼女の顔色は笑顔のままだ。
つまりはセーフと言うことだろう。
『void3は亡霊なんて言ってたけど私から言わせればただのAIの1種よ。ちょっと高性能なね』
「ちょっと……」
俺の知るAIはあくまで補助レベルにしかならないし自分の意志を持たないように機能制限されているのだが……
まぁ高性能な分にはいいか。
それが味方ならなお良い。
味方なら。
「次に貴方達……void1さんが言っていた俺たちを見ることができる人間は限られているってどういうことですか?」
『まぁそれはそのままの意味ね、私達の姿は空中に投影されている訳じゃないの。特殊な電波を飛ばしていてそれを受容できる人間だけに視えるのね。他の人間で私達が視える人はかなり少ないから外では気をつけてね』
「分かりました」
『ほかは何かあるかしら?』
「そうですね……」
企業連を倒した後は何をするのかを聞くのはマズイ気がするし……
「ならなぜvoidなんですか?」
この質問をしたとき彼女は何かを憐れむような顔をする。
『voidって名付けたのはvoid1よ。私達は気にしてないけど彼の特大の皮肉ね』
「皮肉……?」
『えぇ、彼は自分自身に対して最大の皮肉を戒めとして刻んだの。あなたを助けたのもそれ関係よ』
「俺を助けたのも……?」
一体何があったんだろうか?
そしてそれが俺を助けることと何が関係する?
『……あーそうね。良かったら彼だけにでも良いから何か名前を考えておいてくれない?』
「名前ですか?」
『そう、名前よコギト君。voidって呼びづらいし可愛くないでしょう?そろそろ外に出るから今は無理だけど頭の片隅にでも置いておいて』
「外に」
いつの間にか外へ近づいていたようだ。
階段を登った先に扉が見える。
『ここから先はいつでも接敵する可能性があるわ。気をつけてね』
「はい」
『まぁフルスペックの私の力にかけて君が先に襲われることはないと約束してあげるけどね』
そう言って眼の前の女性は笑った。
扉を押し開けるとそこはどこかのビルの地下に向かう扉だったようで近くに崩れ落ちた瓦礫が散乱している。
「酷い……」
頭を撃ち抜かれた死体やバラバラになった人の手足がそこらに転がっている現状はまさに地獄と言うべき状況だった。
日はすでに暮れかけていて、どこからか企業軍の兵士たちだろう人の笑い合う声が聞こえる。
「下衆どもが……」
一瞬眼の前が真っ赤になりかけるが頭を振って冷静になる。
今武器もなしに感情の赴くままに復讐しようとしても企業軍に殺されるだけだろう。
今は耐えるしかない。
「void2さん……」
『何かしら?』
「近くに助けられそうな人はいませんか?」
『居ないわ』
彼女の返答は早かった。
「本当にですか?」
『えぇ……残念だけど殆どの人は最初の爆撃で死んでいるわ。生き残った人も出血死したか頭を撃ち抜かれたか……お楽しみしてる奴らもいるけど使われてる女性も既に死んでいるわね』
「……」
必ず奴らを殺す。
そう心に決めて這い出る。
『さて……流石に丸腰じゃあ不味いわよね。近くにハンドガンがあるからそれを拾いましょう』
「分かりました」
そう言うと視界に白枠で示された銃が現れる。
白枠で示されなければ気づきさえもしなかっただろうそれに近づく。
「うっ……」
近づくとその銃を握っている手だけが見えた。
持ち主の体は見当たらない。
『申し訳ないけど近くにはそれ以外の武器はなかったの』
「分かってます」
その握っている指を銃から離す。
「ごめん……仇は必ず取るから」
その指は既に硬くなっていた。
『さぁ……武器を持ったなら先を急ぐわよ』
俺は歩き出した。




