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35話

「それ……本当なんですか」


 コギトが少し青い顔でモナカにそう聞く。

 それに対してモナカはそうだと首を縦に振った。


『やっぱり不味いですよね……』


『それが本当ならな不味いだろうな』


『voidさんたちも気が付かなかったんですか?』


『砂嵐の時に探査力が落ちる理由と一緒なんだが、土に探査を妨害する物質が含まれてるんだよ。それのせいで地中はかなり探査しづらくなっているからな』


 そういってvoid1はお手上げだといったふうに身振りをする。


『でも……やっぱり変異種とゾンビが流れてきているということは地中を進む何かも存在している可能性はありますよね』


『とりあえず行動はしておいた方がいいだろうな』


「と、とりあえず俺以外の動ける人間も連れて行ってもいいですかね?」


「当たり前やてコギト君、流石に君一人に行かせる訳ないやろ。とりあえずハラとサジュは確定やな……他にまだ動けそうな奴は……」


 そうしてモナカがあたりを見渡していると一人の少年が手を上げる。


「行けそうかハリベル」


「はい、ついでに俺はあまり銃弾も使わなかったので準備の手間もいりません」


 ハリベルと呼ばれた少年は手短にすべての荷物を背負ってから答える。

 狼のような鋭い金色の瞳とフードの端からチラチラと見える長い黒髪は野性的とでも言うべきだろうか。

 コギトはあまり話したことがなかったがハラから街で強い人のうちの一人と聞いていた。

 実際に銃を構えた姿はなるほど慣れている雰囲気を醸し出している。


「とりあえず今行けそうなのはこの三人やな」


 それに対してコギトはもう少し人数をもらってもいいのではないかと思ったがすぐに考えを改める。

 可能性としてはまだ野獣達が残っている可能性も大いにあるのだ。

 それを無視してすぐさま全員で街に向かえばここに残った死体も相まってより多くの野獣と戦うことになるかもしれない。

 コギトとしてもvoid達を欺けるような装置がある以上安心したとは言い切れない。


 更に一緒に戦ったことのない人間を多く編成しても土壇場では足を引っ張り合うことがある。

 何度か一緒に戦うとなんとなくではあるが相手の呼吸と言うべきものが見えてくるのだ。

 確かに数は力だが少数ならば仲間との連携もし易い上に失敗したときのフォローもしやすくなる。


 人数が必要になれば街に待機しているラスル達と合流すればいいので実際動くなら4人程度が合理的なのかもしれなかった。


「というわけで二人とも頼むな」


「はい」


「分かりましたッス」


 そうしてコギト達は移動することとなった。


_________


 コギト達は体力を消耗しすぎないようにしながら街へと向かっていた。

 しかしコギトとしてはvoid達と出会ってから何度か経験していた嫌な予感というものが今回も強く感じられていたため他の3人と比べて少し急ぎ足となっていた。


「ハリベルさん、対物ライフルを持ってきたようですがこのスピードで街まで持ちそうですか?」


 その中でコギトは少し落ち着こうとハラと違い対物ライフルを持ち替えなかったハリベルに声をかける。


「問題はない、むしろアンタの焦りのほうが気になる」


「……」


 焦る気持ちを言い当てられたコギトは少し躊躇ってから答える。


「すいません、なんだか偶然に思えなくて」


「少なくともこの状況を偶然だと思うやつがいたらソイツの頭はさぞ幸せなことだろう」


「まぁ……変異種の襲撃、謎の集団の襲撃、と続いてモナカさんだけが感じた地下の振動だからね。何かがある可能性は充分にあるだろうね」


「むしろ俺はコギト先輩を連れてきたことが驚きでしたよ、明らかに無茶したあとッスよね?休ませずに何かが高確率でありそうな場所に行かせるなんてあの人は何を考えているのかわかんないッスよ」


「僕にはコギト君だったら何かあってもどうにかしてくれるって信頼があるようにも見えたけどなぁ……」


 そうして幾らか話していると街が見えてくる。

 それと同時に少し異変に気がついた4人。


「ゾンビが倒れてる……」


「ゾンビ……だって?」


「おそらくあの気狂い達のことを言うんスよ先輩」


 いったいいつの間にコギトたちの包囲網を抜けていたのか何体かのゾンビが街の入口近くで息絶えてるのが見える。

 それを認識するのと同時にコギトは背中を抉られるような寒気を感じた。


「……ッ!」


 ハリベルが一瞬対物銃を構えたがすぐさま降ろす。

 いったいなんだと思い双眼鏡で街の近くを見てみると岩に隠れた女性の影が見えた。

 勿論こちらに手をふるその女性はラスルである。


「他の方々は無事ですか?」


 街の近くについてからようやく岩の陰を抜け出してきたラスルがそう答える。

 どうやらゾンビ達が街に襲いかかってきたため前線にいたコギト達がどうなったのか気になっていたようだ。


「こちらはモナカさんが足を撃たれるぐらいであとは悪くても骨折ぐらいしかないね。この周りで寝てるのはここに襲いかかってきた奴ら?」


「そうです……それで前線が少し心配で」


「でも僕らも実は後ろから襲われた方なんだ。どこかに渓谷を降りられる場所か何かでもあるのかな」


「そうですね。確かにそういうことならその可能性も高いでしょう。ところでなぜ4人だけ先に戻ってきたのですか?」


「それは……」


___________


「なるほど……モナカさんだけが感じた振動ですか」


 なぜ4人だけが先に街に戻って来たのか説明を受けたラスルが悩みこむような素振りをする。


「はい、俺たちはそれを追ってきました。ラスルさんは振動などの何かを感じましたか?」


 しかしその質問に対しての返答はなかった。

 さっぱりだと言うふうに首をふるラスル。


「しかし……モナカさんが気になったことですし何かがある可能性は充分にありますね」


 そうして街に顔を向けたラスル。

 少し考え込んでからコギト達の方へと視線を戻した。


「そうですね……子供達は地下に逃げ込んでいますし一応様子を見て最悪は別の場所に避難やらはしたほうが良いかもしれませんね」


 そうして5人は子供達が逃げ込んだ地下のある建物に向かってあるき始めた。


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