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30話

「見えてきたねコギト君」


「うん、そうだねハラ」


 二人は現在敵の数を調べるため偵察作業をしていた。

 コギト達の視線の先には野獣達の大群がいる。

 おおよそ数えるだけでも300はいるだろう。


「さっすがにあの数に勝てるとは思えないなぁ……」


 ハラが苦笑しながら言う。

 だがその目の闘志は消えていない。


「でも戦うんでしょう?」


「当たり前さ!僕は守るために銃を持ったんだからね、ここで逃げてちゃ何のための今までか分かんないよ。そういうコギト君こそ大丈夫かい?」


「そうですね……」


 コギトは前に視界を向けた。

 そこにいたvoid達がこちらを見て笑う。


『俺たちも出来るだけサポートする。大船に乗った気持ちでいろよコギト』


『それで前回は失敗したんだけどね、でも次こそはコギト君を無事に帰せるよう私達も全力を尽くすわ』


『私も同じくです!コギトさん!』


『はい、皆さん頼りにしてます』


 コギトはvoid達に答えながら少し笑う。

 ハラの質問に対するコギトの心はもう決まっている。


(どうやら俺はもうあの街に染まっているらしい)


 コギトは都市にいた頃を思い出す。

 あのときのコギトには何も力がなかった。

 今もあるとは言えないし、void達やハラなどの手を借りている状態で言えたものではないかもしれないが。

 でも少なくとも足掻く力は手に入れたのではないだろうか。

 モナカやハラ達がいる。

 それだけでなくあの街には沢山の子供たちがいる。

 だから引かない。

 無力でもそう思えるぐらいにはコギトはあの街が好きだった。


「俺も覚悟は決まってます」




__________


「さて!敵の数おおよそ300っちゅう訳やみんな」


 モナカが砂が舞う荒野の中で銃を構える少年少女達に言う。

 コギトもゴーグル越しにそれを見ていた。

 その時モナカは両手を広げて声高に言った。


「大変結構!確かに数だけは多い。でも所詮は犬畜生の集まりにしか過ぎんわ!ウチらの敵やない!」


 モナカの声を聞いていると不思議と自分は大丈夫という気持ちが湧くことにコギトが驚く。


「野獣どもに知恵あるものとの差って奴を見せつけてやらんとな!」


 そうしてモナカが少しフラつきながらロケットランチャーを構える。

 それを見た何人かの少年達も同じように野獣達に向けて構える。


「さぁ一斉に行くで!派手めの挨拶にしよか!」


 そうしてカウントを進めたモナカがロケットランチャーを撃ち出した。

 何本もの煙がそれを追従するかのように空に線を引く。


「さぁ!ぶっ潰すで!」


 そうして野獣達を幾らかの肉片に変えてから戦闘は始まった。

 コギトはサジュと共に地面に伏せるハラの隣に付く。


「それでは防衛お願いするよ二人とも」


「任せてよ」


「大丈夫ッスよ先輩」


 ハラの手にはいつもの突撃銃AC7と違い大きな銃身と三脚を持った銃が握られている。

 ハラが銃身のレバーを引いた。


「対物ライフル持ちは他の子達が苦戦しているのを優先的に!それ以外の子は奴らを絶対にライフルを持ってる子に近寄らせるな!そうした瞬間押されて負けるで!」


 銃弾を撃つ音が聞こえた。

 排莢(はいきょう)されて空となった薬莢がコギトの足元に落ちる。

 それと同時にハラがレバーをまた引いた。

 おそらくどこかの野獣が今の狙撃で弾けとんだことだろう。

 今回の戦闘は至ってシンプルである。


 対物ライフルを持つ人間を守るため突撃銃を持った者たちは足の早い野獣を優先的に狙い、そして対物ライフルを持つ者はそういった突撃銃では苦しい相手を倒す。

 それが今回の計画である。


『コギト君、とりあえず足止めはしてるわよ』


『ありがとうございます』


 コギトはこちらに向かってくる群れを眺めながらvoid2に答える。

 コギトは少しでも最悪が起こる可能性を減らすためvoidたちにも完全協力をお願いしていた。

 アリ型の自律兵器を使い不自然に見えない程度に地盤を緩めておいたらしく落とし穴のようになった穴に足を取られる野犬達が双眼鏡越しに見えた。

 しかも運が悪いと止まった拍子に後続に突撃されてそのまま動けなくなる個体もいるようで思ったよりも効果があるようだ。


 コギト達は突撃銃の有効射程に入るまで双眼鏡で敵の様子を眺めていた。


「先輩、そろそろッス」


「うん、分かった」


 最も足の速い個体が有効射程まで100mを切ったあたりでサジュから声がかかる。

 コギトもそれに合わせて銃を構えた。


『サポートするぞ』


 void1がそう言うとコギトの銃口から野獣達に向けてラインが伸びていった。

 どうやら銃弾の予測着弾地点までご丁寧に表示されているらしいそれを使って狙いをつけた。


「ふっ」


『ナイスショット』


 コギトが最も先頭にいた個体に狙いをつけて引き金をひく。

 その銃弾はキレイに野獣の頭に吸い込まれていきそのまま風穴を開けた。


『こんなところで改造した成果が見れるとは思ってませんでしたね』


『そうだな』


 そのままの勢いで他の個体へと銃口を向けるコギト。

 そうして暫く銃弾を撃っていると距離が縮まってきた。

 そこでモナカがコギト達に向かって声を出す。


「距離が縮まってきた!対物を持っている子は早めに退避!突撃銃の子は遅滞戦闘を!」


 そうしてハラが立ち上がって後ろへ下がっていく。

 コギトもそれを支援するため野獣に向けて銃弾を打ち続けていた。


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