29話
「お疲れー三人とも、ラスル、怪我とかないか?」
モナカが笑いながらラスルとコギトの二人に近づいて行く。
それにラスルが少し落ち込んだような声で返す。
「すみませんモナカさん、少し怪我をしてしまいました」
そうして見せた手には血が少し滲んでいた。
「女の子のお手々に傷はちょっとアカンなぁ、あとで消毒と治療しておき」
「分かりました」
『銃弾を弾くぐらい硬い奴殴ってあの傷で済むものなんですかね……』
『それが女子力って奴だよ』
『すいません今ボケ求めてないです』
コギト達の雰囲気も敵を倒したことで少しづつ弛緩して行っていた。
「さて、他の奴らも来ていないようやしみんなは少し休んどき。ウチはもうちょい調べることあるからな」
そうしてモナカが野犬の死体を調べている間コギト達は荒野に座り込んで休むことになった。
そこでコギトは軽い頭痛を覚える。
「いっ!」
「大丈夫かい?」
「先程の戦闘で怪我をしましたか?肩の傷が開いたりは」
「怪我は……多分ないですね、ちょっと頭痛が」
「気圧やストレスあたりでしょうか……?」
コギトはおそらく先程の周りが遅く見える現象が原因だと予想をつける。
それとなくvoid達に視線を向けるといつの間にかvoid3まで揃っているようだった。
『先程周りがゆっくりに見えたのって……』
『御明察、void3の能力の一端だ』
『彼女は情報の送信、変換能力が私達の中でもずば抜けて高いのよ、最適化が上手いってやつね』
『ま、まぁその技術が全て戦闘に特化しているのもどうかと私は思うんですけど……』
『ま、これでコギトも俺とvoid3の能力が扱いづらいのは分かったろ?』
『確かに毎回激しい頭痛に襲われるのはちょっと……』
そうしてコギト達がゆっくりと話しているとモナカが戻ってくる。
その顔はやはり笑ってはいるもののどこか陰があるものだった。
「……やっぱり全ての個体にこのマイクロチップが入っとったわ。さっきの個体と言いなにか人為的な物感じるな」
「……」
コギトとしてはそれがジャミング装置だと言うことを知っていたがそれを伝えることは出来なかった。
それもコギトではなくvoid達が言っていたことでなぜそれが分かったのかを説明する手段はない。
「……まぁ今ここで考えてしゃーないな、とりあえず戻るか」
「そうですね、そうしましょう」
そうしてコギト達は街へと戻ることになった。
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「っと……まぁこんなところやな」
街に戻ったモナカはコギト達以外の街の外に出ていた子ども達に現状を説明する。
それを聞いた反応は三者三様であったがどれも喜ばしいといった感情ではないことは確かだった。
「それ……マズくないッスか」
「どう考えてもマズイな〜、それに加えてこれや」
そこでモナカが変異種たちから見つかったチップを少年たちに見せる。
「すいませんモナカさん、それは一体何でしょうか」
「さてね、ウチも調べんとちょっと分からんわ。でも今までに倒した個体全てにこれが埋め込まれとった。コイツが変異種達がこの街の近くまで来た原因かも知らんわ」
「俺たちの街を狙う誰かがいるってことッスか……?」
それを聞いた少年達はそれぞれ自分が思ったことを言っているようだった。
やれ企業の実験だ、やれどこかの研究所から抜け出てきた変異種が彷徨っているだのと。
しかし殆どは自分達を狙う誰かがいるのではという考えに至ったようだった。
「……それも、分からん。でもとにかく今はうちらに襲い来る脅威に対抗せなアカン。後ろにいる子ども達のためにもな」
モナカの人の良さそうな笑みは鳴りを潜めなかなか見れない真剣な表情になる。
少年達もそれにつられてざわざわとした声はすぐに静かになった。
誰もがモナカに注目していた。
「ウチらはこの舐め腐った奴らをぶちのめす!後ろに何がいようが関係あらへん!」
モナカの声に熱が籠もる。
「勝ってうちらの守るべきもんを守るで!」
その目は真っ直ぐ。
全員を見つめていた。
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「それでは二人とも、気をつけて」
ラスルがハラとコギトに声をかける。
どうやら手は治療したらしく包帯が巻かれていた。
「ラスルさんも、出来るだけ撃ち漏らしはないようにしますがもしものときは頼みます」
「絶対に死守してくれよ」
「分かってます」
いつもあたりの治安維持をしている子供たちの一部は撃ち漏らしがでて街に入ってきそうになったときの最終防衛ラインとして待機することになりラスルの他にも幾らかの少年達が弾丸の整理をしていた。
「みんな、銃の弾丸は持ったな?応急処置キットや非常用食料は?」
コギト達は前線へとでて直接戦うのが今回の役目だった。
ズシリとした鞄をコギトが確認する。
「……みんな持ったようやな、今回の変異種達の厄介さは尋常やない、ロケットランチャーや対物ライフルも準備もしたけどそれに頼りすぎると痛い目見るで」
『コギト、サポートは全力でするつもりだが今回はジャミング装置が大量にある、抜けがあるかもしれないからそこだけは気をつけておけよ』
『了解です』
そうして話しているうちに少年たちの準備は殆ど終わる。
コギトの鞄の中には銃弾が大量に入っておりそれの重さを感じていた。
「もしものときがあればウチが必ず助けちゃる!だから死ぬな!」
「おお!」
モナカの声に呼応した少年達の声があたりに響く。
そうしてコギト達の都市防衛戦は始まった。




