28話
「3.2.1……撃てっ!」
モナカの合図とともにコギト達は銃弾を撃つ。
それらの殆どは野犬達の周りに当たり砂埃を起こした。
だが、
(サポートのおかげでよく見える)
コギトの視界には砂埃の中を駆ける野犬たちが見えていた。
そこに向かってコギトは迷わず銃弾を発射する。
それが多脚型の体を貫きいくつか穴を空ける。
『サポートありがとうございます、おかげで一匹ダウンです』
『お安い御用よ。今回は出し惜しみしてられないからね』
今回の戦闘でコギトはvoid達にほぼ完璧に近い状態でサポートしてもらえるようにしていた。
コギトの鞄の中には二匹の虫型飛行ユニットを仕込んでいた。
コギトには見えていないが他にも辺りをバグドローン達が飛んでいるはずだった。
コギト達が銃のマガジンを替えている間に砂埃が少し晴れる。
モナカ達も多脚型が倒れていることを認識したようだった。
「一匹ダウン!」
「良くやったみんな!2射目行くで……3.2.1……撃てっ!」
続いて2射目を開始するコギト達。
しかし、
『やっぱりあの二匹は変異が強いからか普通に対応してきているな』
『このままだとドンドン距離を詰められてしまいますよ!』
『落ち着けコギト。焦れば当たる玉も当たらん』
触手型は先程と同じように触手で弾丸を防ぎつつコギト達に近づき柘榴型は目が大量にあり丸出しのためそこらが弱点かと思いきや銃弾を弾いている様子が見える。
「カッチカチやな!」
「そうですね。このままだと接敵します」
「もしものときはすまんけど頼むわラスルちゃん」
「はい」
そうして2射目が終わりコギト達はマガジンを交換する。
しかしコギトには2射目の時点でこれ以上野獣達に有効打を与えるにはどうすれば良いか思いつかなかった。
3射目も同じように防がれ耐えられる未来しか見えなかったのだ。
『弾丸は確かに当たるようになりましたけど……有効打が与えられてるようには見えませんね!』
『実際に与えられてないからね』
『クソッ!』
そうして心の中で口汚い言葉を叫ぶコギト。
しかしvoid達はそこまで焦ったような表情ではない。
『コギト、まだ焦る時間じゃない』
『そうね、”お守り“は覚えているかしら?』
そこでコギトはお守りについて思い出す。
その時ちょうどモナカの3射目の合図が聞こえコギトは銃弾を撃った。
『でもアレはマガジンに詰め込む手間がかかりますよ!』
『大丈夫、他の奴らを信じて一発だけで良いから詰め込め』
『……信じますからね!』
そうして3射目で触手型は胴体と左足に銃弾をくらい砂埃をあげながら倒れ込む。
「二匹目ダウン!」
「ようやった!最後の一体や!」
3射目のマガジンが空になったときコギトは鞄を背中から降ろした。
そこで今空となったマガジンを取り出し鞄の中から一箱の弾薬ケースを取り出す。
(前にアクィラさんからもらった徹甲弾……こんな早く使うときが来るなんて)
それはコギトがライペルージアでアクィラから受け取った徹甲弾だった。
モナカ達からもしものときのお守りとして数発持ち歩くように指示されていたのだ。
(緊張で手が震えるッ……!)
コギトは銃弾を取り出しマガジンに装填しようと震える手を抑える。
そうしてコギトが銃弾の入れ替えに四苦八苦している間に4射目が終わったようだった。
横目で野犬を見るともうすぐ近くにまで来ている。
モナカ達は5射目の準備をすでに終えたようで隣で銃弾を撃つ合図が聞こえる。
(良し!入った!)
コギトがやっとのことでマガジンに一発銃弾を入れたところで銃を持ち上げる。
だが顔を上げたときには。
(!近い、というか飛び掛かれば充分やられる距離!)
既に柘榴型はコギト達のすぐ近くまで距離を詰めてきていた。
おそらく飛び掛かれば誰かを襲うことが出来る距離にいる。
いくつか良いところに当たったのか血を流してはいるものの止まる様子はなかった。
そして、
「ラスルさんっ!」
柘榴型はいつの間にか一番前にいたラスルに狙いを定めたようだった。
やはりコギトと同じことを思っていたのかラスルに飛びかかる。
柘榴のようだと言っていた頭が大きく開きヤツメウナギのような歯が見えた。
そこでコギトはラスルが頭を貪り食われるところを幻視する。
(間に合えッ!)
コギトがマガジンを銃にセットして狙いを定めるには少し時間が足りなかった。
だがコギトは行動をやめない。
間に合う可能性にかけて。
しかしラスルはコギトと対象的に慌てた様子がなかった。
弾切れした銃を投げ捨て腰から1丁のハンドガンを取り出す。
(ネメシス……!?)
素早い動きでコギトが驚いている間に大きく開いた口の中に向けて3発弾丸を放った。
「グギャッ!」
それがどこか柔らかいところに当たったのか苦しそうにして柘榴のような口を閉じる。
さらにそのまま落ちて来た柘榴型の顔に向かってネメシスを持っていない方の手で打ち上げた。
(……!)
ラスルの細い腕のどこからそんな力が出るのか明らかにラスルよりも重い野犬が顔を天に向けて飛び上がる。
そこでコギトは飛び上がる野犬の頭に向けて銃を向けた。
『void3、やれ』
辺りがゆっくりと動くような錯覚に襲われる。
舞い上がる砂の一粒一粒。
苦しそうに天を仰ぐ柘榴型。
全てがコギトの目にははっきりと見えた。
そしてコギトはラスルと仮面越しに目が合う。
(撃っ……て?)
微かにそう聞こえた気がした。
モナカもハラもコギトに注目している。
柘榴のような目も心なしか驚いたようにこちらを見ていた。
コギトはその瞬間引き金を引く。
そして、
硬い何かを潰す音がして柘榴型の頭が爆ぜた。




