27話
「本当に他の個体がいるなんて……」
コギト達がそれから他の変異種を見つけるまでそれほど時間はかからなかった。
先程のように顔から触手を生やした個体もいれば頭の数が多いもの。
割れた柘榴の実の部分が目に置き換わったように沢山付いた者たちがそこらを徘徊していた。
コギトもそれを見て少し顔を青くする。
「一匹だけでもなかなか強かったですよね……」
「この数は不味いね……」
『とりあえずこれでモナカちゃんも討伐隊を組むだろうしとりあえず帰りましょう』
『そうですね』
そうしてハラとコギトは道を警戒しながら戻っていく。
途中で先程倒した変異種を拾って二人で引きずりながら街に到着した。
街に入ると子どもたちと遊んでいたラスルがコギト達に気がついた。
「あれ……早かったですねハラ、コギト」
「ただいまラスル、モナカさんを呼んでくれるかい?」
そこで子ども達がコギト達が引きずってきていた野犬に気づく。
「ハラ兄ちゃん!コギト兄ちゃん!また犬狩ってきたの?」
「いや、違うよこれ!すごい気持ち悪い!」
「うねうねだ〜!」
変異種の触手を見て笑っている子ども達を見てコギト達は苦笑する。
『楽しそうね』
『そうだな』
少しピリピリした雰囲気があったvoid達もそれを見て少し険が取れる。
ラスルが子ども達の声に反応して野犬に近づいて行く。
「これ……変異種ですか?どこで?」
「すぐ近くです。これ以外にも複数個体がいました」
「……!本当ですかコギト」
ラスルにもこの状況がまずいことが伝わったようですぐさま戻っていった。
子ども達は変異種の触手を使って遊んでいる。
キャーキャーと楽しそうな声をあげる子ども達を見てハラも緊張が取れたのだろう。
柔らかな表情を浮かべている。
「全く……こっちの気も知らないで」
「はは、そうですね」
そうして子ども達を眺めながら暫く待っているとラスルがモナカを連れてきた。
モナカは変異種をみた瞬間に子ども達を下がらせて調べ始める。
「ふんふん……確かにここらでは見かけないぐらい変異してるな。話では他にもいるみたいなことを聞いたけどほんまなん?」
モナカが触手を切り取りながらコギト達に問う。
「はい、これと同一の変異を起こしている個体や別の変異を起こしている個体を少なくとも10匹以上は見ました」
「動きはゆっくりでしたけど……このまま行くとこの街に到達しそうでしたね」
「そりゃあ大変やなぁ……とりあえず今出てる子たちにも戻ってくるようやらんといけんわ、ラスル、マグネシウム弾を上空に撃ち」
「良いんですか?多分寄ってくるのは野獣も同じですが……」
「多少は目を瞑る他ないな」
「ではやってきます」
そうしてラスルは街の方にまた戻っていった。
「それで二人とも、戦ってみてなにか思うことはあるかな?」
そこでモナカはコギト達に変異種達に遭遇したとき何かなかったかを問う。
「そうですね、その個体だけかもしれませんが銃弾に対しての反応が高かったと思います。その一匹を倒すのに数マガジン使いました」
「それは厄介やなぁ」
「あ、あとモナカさん。コレを。埋め込まれてました」
そこでコギトが変異種の中から見つけたジャミング装置を渡す。
モナカはそれを見た瞬間顔色を変えた。
「……本当に中から見つけたんか?コギト君」
「はい、右前足の切り口がありますよね。そこから見つかりました」
「ちょっと貸してな」
そうしてモナカもハラのようにコギトから装置を受け取って暫く眺める。
「なんの装置かはちょいとわからんけどコレ……人為的な何かってことか?」
「僕も少しそれについて考えました」
「これで本来近くにいないような奴らがここまで流れてきたのかね……?」
そこでモナカがふぅと息を吐いた。
「……とりあえずこれは預かるわ」
「はい……あっ」
そこで辺りが明るくなる。
どうやらラスルがマグネシウム弾を上空に撃ち出したらしくマグネシウムの燃焼反応が空を照らしている。
「これで一応みんな帰ってくるはずやな。さてハラ、コギト」
モナカが厳しい顔のまま言う。
「都市防衛戦やで」
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「さてハラ、コギト」
「「はい」」
「おそらく数匹は今のでこちらに向かってるはずや。アンタ達はそれを止めんといかん」
そこでモナカも銃を構えた。
「子どもたちはもう既に地下に避難させたからな、多少はマシ……やと思いたいけどそれが奴らを通す理由にはならへん」
「そうですね」
そこでモナカにラスルが反応する。
コギトはモナカはともかくラスルまでこれから起こるだろう戦闘に参加することを驚いていた。
「ラスルさん、戦闘に参加して大丈夫なんですか?」
いつも見ているのは医務室の中だけだったのでコギトは心配からラスルに声をかけた。
しかしラスルは仮面の下で笑いながら答える。
「銃を持つのは久しぶりですけど……多分大丈夫ですよ。コギト、心配してくれてありがとう」
「ラスルさんが大丈夫だと思うならいいと思いますが……」
『そろそろ来るわよコギト君』
そこでvoid2が野犬達の接近を察知する。
コギトも顔を荒野に向けた。
『数は3匹だな』
「みんな、来たで」
モナカもほぼ同時に気がついたようで双眼鏡を外した。
「さて、総員配置につき」
コギト達はそこでこちらに向かってくる変異種。
先程倒したような触手型。
割れた柘榴の身のかわりに目玉が詰め込まれたような柘榴型。
純粋に足の本数が多い多脚型の3体を認識する。
コギトがハラの隣で銃を構えているとハラが口を開く。
「ラスルを心配してる?コギト君」
「まぁ……外で戦ってるイメージがないので……」
「まぁそうだよね、でもこの前僕たち街に行ったでしょ?その時はモナカさんも僕らも街にいなかった。誰が守ってたと思う?」
「その言い方だとつまり……」
そこでコギトの視界の端でハラが笑うのが見えた。
「ウチで一番強い兵士はラスルだよ。間違いなくね」
「そこ、そろそろ撃ち始めるからな、おしゃべりはやめや」
そうして二人は黙って意識を野犬達に完全に向ける。
『有効距離まであと100mよ』
「半端な弾幕じゃ防がれるっぽいからな、一気に撃って出来るだけ妨害するで」
そうして3人はモナカの合図に合わせる。
「3.2.1……撃てっ!」
モナカ達はその合図で野犬たちに銃弾を撃った。




