26話
「合わせてコギト君……3.2.1……撃て!」
そうしてコギトとハラは変異種の顔部分。
触手が密集して生えている場所に向かって銃弾を撃った。
「っ!」
しかし着弾したかと思われた銃弾は触手を何本か千切り飛ばしたところで触手たちによって阻まれた。
それを見たコギトとハラは驚きを隠せないと言ったような顔をする。
『来るぞ!』
「ハラ!避けて!」
「……!」
そうして二人はvoid1に言われるがまま避けた。
そこでは触手が先程と同じようにコギト達が立っていた場所を貫くようにして空中を漂っている。
「……目は見えてないってことでいいんですかね?」
「……多分?」
そこで二人は野犬が目で物を見ていない可能性に思い当たる。
そもそもあの触手群に目はついているのか。
先程も気配があった場所を適当に貫こうとしていただけのように感じていた。
「どうする……?コギト君」
『とりあえず下がって安全圏から撃退するのを勧めるぞ』
『それが良さそうですね』
「下がりましょう」
そうしてコギトとハラは変異種から視線をそらさずにゆっくりと距離を取っていく。
それを変異種は知ってか知らずか辺りをウロウロと彷徨いながら時たま触手を伸ばすという行動をしていた。
20分ほどかけゆっくりと距離を取ったところでコギトとハラは一息ついた。
「ふぅ……ここまでくれば安全でしょうか?」
「多分ね……」
そうして二人は未だにウロウロとあたりを動き回っている変異種を眺めながら話す。
「一応俺も都市で教育を受けてるんですけどあそこまで別種とは思っていませんでした」
「確かにあそこまで別の組織が生えた変異は珍しいね。ここらで見かける変異種って言うのはせいぜい腕の本数が違うとか頭の数が多いだったりだけど……」
「明らかに変異が大きいですね、どこから流れてきたんでしょうか?」
「さぁ……このあたりは汚染もそこまでないし、本当にどこから……まぁ調査はいつか行こう。とりあえず今はアレを処理することに集中して。流石にこの距離から銃撃すれば安全に倒せると思うけど」
「そうですね」
そうして二人は再度銃を構える。
コギトはセミオートからフルオートへ切り替えて狙いを付けた。
「もう一度合わせるよコギト君」
「分かりました」
「……3.2.1……撃て!」
そうして二人は再度銃撃をする。
先程と同じように最初は触手に止められていた銃弾達が段々と触手を千切り飛ばしていき最終的に変異種は体を何発もの弾丸に撃ち抜かれて沈黙した。
そうしてピクリとも動かなくなった変異種を見てようやく二人は落ち着いたように体の力を抜いた。
「とりあえず倒せましたけど……アレ一体にこんなに弾薬を使うとは……」
「こういったところが変異種の恐ろしいところだよ。あとでモナカさんのところまで持って行っておかないとな……」
そうして二人は倒れた変異種に近づいて行く。
そこにvoid1が反応した。
『まだ生きてるぞコギト。気をつけろ』
『まだ生きてるんですか……』
少しぎょっとした風にコギトは答える。
コギトはハラを止めて変異種に狙いを定めて完全にトドメを刺そうとする。
コギトが銃弾を撃つとやはり生きていたようで数発の弾丸は触手に阻まれたがやはりそれだけでは止めきれずに頭に大きな穴を空けた。
『次こそ本当に絶命したようだな』
void1にそう言われたことでコギトとハラはもう一度変異種に向かって歩き出した。
そこでハラが口を開く。
「よくまだ生きてるって分かったねコギト君」
「……なんとなく動いている気がして」
「助かったよ、あのまま近づいていたら怪我……ひょっとしたら死んでたかもね」
「そうですね……本当に変異種の生命力にはビックリです」
「本当にその通りだね」
そうして二人は変異種を調べ始めた。
ハラが変異種の触手を調べている間にvoid1がコギトに右前足の太腿を調べるように言う。
『コギト、右の前足……そう、そこだ。そこをナイフで切ってくれ』
『ここですね?分かりました』
コギトはナイフを取り出して肉を切り裂く。
『小石ぐらいのサイズの何かがないか?』
『ちょっと待ってください……あ』
そこでコギトは指でつまめるほどに小さなマイクロチップを発見する。
それを見たvoid1が嫌な予感が当たったといったように顔を顰める。
『まさかとは思ったが……あの距離まで索敵に引っかからなかったのはこれか』
『何でしょうかコレ』
『ジャミング発生装置だ、コレと砂嵐の併用で俺の索敵から抜けてきやがった』
『これ中から出てきましたよね……』
そこで触手を調べていたハラがコギトがマイクロチップを持っていることに気が付きコギトに質問をする。
「何を持ってるの?コギト君」
「あ、いえこの中から出てきて……」
「ちょっと見せてみて」
そう言ってハラは装置を受け取る。
しばらく眺めて見てからコギトに返した。
「何か人工的な装置みたいだね、本当にこれの中から出てきたの?」
「はい」
「一体どうやって……いや、一体誰がの方が近いのか?」
ハラが少し考え込んでいる中でハラよりも先に考え込む素振りをしていたvoid1が顔を上げた。
『嫌な予感がする……void2、起動しろ』
その瞬間void2がコギトの視界に現れる。
『どうかしたのかしら?void1』
『説明してる暇はない、索敵を頼む』
そこでvoid2が一瞬目を瞑ったあとに驚きの表情に変わる。
『何よこれ……巧妙に偽装されてるけどそこらに……これは野犬の変異種かしら……それがいるわ』
『今コギトたちに危険が及びそうか?』
『そこまで近くじゃないわ、でもここに留まっていたらそのまま当たるかも』
『とりあえず安全圏まで下がった方が良いですかね?』
『そうね、ハラ君にもそう進言して、でもその前に1つ……もっと不味いことがあるわ』
そうして青い顔のままvoid2がコギトに言う。
『おそらく大量の野獣たち……それも変異種を含んだ一団がこちらに向かって進行中よ』
『!?』
コギトはその返答に驚きハラに少し不審がられる。
しかしコギトはそれどころではなかった。
『このままだと街に直撃するわね。問題はこれをどうやってモナカちゃん達に伝えるかだけど』
『いつ頃だ?』
『移動速度は遅いから……そうね、5時間ぐらいで街に到達するわ』
『逆に言うと俺たちはそこに近づくまで気が付かなかったわけか……クソッ!』
『ジャミングされてるみたいだし仕方ないわ、それよりも先にこの危険を伝えないと』
『……そうだな、コギト、他の個体がいるかもって言ってハラと一緒に少し探索しろ、それで適当な奴見つけてモナカに説明してから討伐隊組んでもらえ』
『そうね、それが怪しまれずにこの危険を伝える方法だわ』
『……確実に当たるんですか?』
『ああ』『ええ』
それを聞いたコギトは少し考え込んでそれに従うことにした。
「ハラ」
「ん?どうしたの?」
まだ考え込んでいたハラも思考を中断してコギトの方を向いた。
「すいません、一応他の個体がいるかもしれないので先に索敵を済ませてしまいましょう」
「まぁ……確かに一匹来ていたら他の個体もいるかもしれないからね、うん、分かったよ」
そうして二人は道を進むことにした。




