22話
コギトはこの街で処刑されると言われたハンスについて店員に聞く。
「ああ、お客さんも荒野を移動しているのならやっぱり耳にはさみますよね」
どうやらvoid2のいった通り一定数世間話のように話を聞いている人間も少なくないのだろう。
客がコギト以外にいないため店員も暇なのか話に付き合ってくれた。
「なんでも今から一月ほどあとに本当に処刑されるみたいですよ。軍の詰め所の前の広場に処刑台が建設されてるのを見ました」
「あの噂って本当だったんですね……」
(やっぱり聞いてた話通りなのか……)
コギトは複雑な内心を隠しながら店員の話に相槌をうった。
「お兄さんも見るにはまだ一月程早かったですね」
「色々とあるのでそもそも一月後にここに来れるかどうかは分かりませんけどね」
「まぁ残念、でも噂では反企業派の最後の生き残りを叩くための作戦でもあるって聞いたので来ないほうが安全なのかもしれませんね」
そうして暫く話をしてからコギトは店をでた。
『結局当たり障りのないような話しか聞けませんでしたけど……本当にやるみたいですね』
『そうね、今から一ヶ月後に向けて準備をしていきましょう』
『はい……あ、あと街にいる子供達にお土産を買っていこうと思ってるんですけど近くに良さげなお店はありませんかね?できればある程度保つお菓子とか』
『はいはい、ちょっと待ってね……とりあえず色々と売っている総合商業施設あたりがいいかしら?』
『そうですね、お願いします』
『わかったわ』
またvoid2のナビが始まりラインが引かれた。
コギトがぼんやりとそれに従って歩いていると眼の前を歩いていた男がコギトに話しかけてきた。
「君、この都市に住んでる人かい?」
「あっ、いえ違います」
見るからに優男といった風貌の男はそれを聞いて少し困ったような顔をしていた。
コギトも少し気になり男に何があったのかを聞くことにした。
「あの……どうかしたんですか?」
「あぁ……いや人を探していたんだよ。君はここらで目立つ女性を見なかったかな?肌が浅黒くて身長が大きい女の人なんだけど」
そう言われたコギトは先程カフェで見かけた女性を思い出す。
机の上に山盛りにされたホールケーキたちに気が取られていて印象は薄いが確かにあの女性は肌が浅黒く身長も女性にしては高身長な方だったはずだ。
「その女性かどうかは分かりませんが……同じ条件に当てはまる人はいましたよ」
「本当かい?」
それを聞いた男は少し嬉しそうな顔を見せる。
「はい、場所をお教えしましょうか?」
「いや!ぜひお願いするよ!」
『じゃあvoid2さん、すみませんがよろしくお願いします』
『まぁ時間にまだ余裕はありそうだしね、分かったわコギト君』
そうして先程通った道を戻っていく中で男が口を開く。
「君はこの都市の住人じゃないって言ってたけど要するに君は商隊の一人だったりするのかい?」
「そうですね……似たようなものだと思います」
コギトはモナカ達の姿を思い浮かべてから似たようなものだと結論づけ答える。
「私も同じようなものさ、ちょっとした商売でこの街に訪れてね。それで今から大事な商談があるんだけど連れの子が何処かに行ってしまって困っていたんだ」
「それは大変ですね」
「そうなんだよ、全く困ったものだ」
そうしてまだ見ぬ女性に文句を言う男とともに歩いているとその女性がいたカフェにたどり着く。
「あの女性ですか?」
「ん……うん、あの子だよ」
『まだ食べ続けてるわね……』
未だにケーキを食べ続けていた女性に軽く引きながらコギトがその女性を示す。
どうやら彼が探していた女性で合っていたようでそのまま近づいて行く。
「探したよフリスト」
「あら社長、どうしましたか?」
そう言ってフリストと呼ばれた女性は笑う。
それに対して男は困ったような顔をするのみであった。
「君はもうとっくに集合時間を過ぎてることを知っているかな?」
「あら〜……本当ですね、遅れてしまいましたわ」
特に悪びれる様子もなく言う女性に男はため息をついた。
「あ、それでは俺はここで……」
案内を終えたコギトはここを離れようと二人に声をかけた。
「社長、彼に案内してもらったんですか?」
「そうだよ、彼がいなかったら君を探すのにもっと時間がかかっていただろうね」
「それは大活躍ですわね」
そうしてフフフと控えめに笑うフリスト。
それに対して諦めたような顔をしてから男はコギトに笑顔を見せた。
「いや、本当にありがとうコギト君。君がいなかったら彼女を探すのにもっと時間がかかってたよ。時間も取ってしまったし何かお礼をしないとね」
「そんな、気にしなくても大丈夫ですよ」
「私は受けた恩は返す主義でね、まぁほんの気持ちさ」
そう言って彼はフリストの隣にある鞄から何かを取り出した。
(箱……?)
「君も荒野を移動するのなら身を守るものは多いほうがいいだろう?今手持ちがあまり無いからこれぐらいしか渡せないが」
そうしてそれに自分の名刺を付け加えた上でコギトにその箱を渡した。
(意外と重いな……なんだろう?)
「困ったときはその番号に連絡を入れてくれ、ある程度は私が力になろう」
コギトは箱から名刺に意識を移した。
(アクィラ・ユースティティア……)
「それでは私達はここで、行くよフリスト」
「はい社長」
いつの間にかテーブルの上のケーキを食べ終えていたフリストがアクィラの言葉を聞いて立ち上がった。
「それでは、また会おう」
「ご機嫌よう」
そうして二人は街の中に消えていった。
『さて……そろそろ行くわよ、お土産買うんでしょう?』
『そうですね、行きましょう』
そうしてコギト達も自分の目的を果たそうと歩き始める。
「……ん?」
コギトの足が止まる。
『どうしたのかしらコギト君』
『あ、いえ気の所為です』
何か違和感があったがコギトは気の所為だと思い直してまた街を歩き出した。




