21話
「先輩達は何処行きますか?」
サジュがコギトとハラにそう質問する。
ハラがPDAに表示された地図を眺めながら答えた。
「僕は裏道的なところを探索してみようかな。その後は他の都市で見つけられなかった必要品を買っておきたいって感じだね。コギト君は?」
「そうですね……俺は広場にでも行ってみましょうか、その後に銃のパーツを買っておきたいと思います。先日の件で色々と変えたい部分が出てきたので」
「改造はモナカさん得意だからパーツ買ったら渡しときなよ、あと店の人には銃の名前を言っておけばそれ用の改造パーツを出してもらえると思うから」
「はい、分かりました」
「それで?サジュはどうする?」
ハラに質問されると悩む素振りを見せるサジュ。
実際あまり考えてなかったのだろう。
少し考えた後に答える。
「俺はとりあえず街を散策するッス、何か良いものを見つけたら連絡しますよ」
「分かった、じゃあ皆それぞれ情報収集を頼んだよ」
「はい」
「分かったッス!」
そうしてコギト達は別々に別れた。
コギトは辺りの町並みを見渡しながら何処の広場に行こうかと考える。
PDAの地図にはいくつか広場があるらしく大きな空欄があった。
『私がナビをしましょうか?』
『ああ、お願いします』
後ろにいたvoid2がコギトに尋ねる。
最近は索敵特化のvoid2を基本に置くことが多いようでvoid1とvoid3はあまり姿を見せない。
呼びかければそれに答えてはくれるのだから彼らは存在しているのだろうけど自分に姿を見せないことで何か変わるのだろうかとコギトは思う。
眼の前にラインが引かれ広場までの道が示され、コギトはそれに従って歩き出す。
その間コギトはあたりの店を眺めながら歩いた。
『子供が喜びそうなお土産って何でしょう?』
『うーん……あの荒野で生活してるから割となんでも喜びそうな感じはするわね』
『まぁ無難にお菓子とかが良いでしょうか』
『荒野で甘味は貴重だから喜ばれるんじゃないかしら』
そうしてラインに沿って歩いているとどうやら広場に着いたようでコギトは中央にある噴水の縁に腰掛けた。
『当てが外れましたね』
『そうね』
コギトは少しぐらい広場で休憩している人間がいると思い広場に来たのだがあくまで都市の人間にとっては通り道に過ぎないようでコギトのように休憩している人はほぼいなかった。
『そうね……コギト君、お店で世間話として話を聞いてみたらどうかしら?』
『怪しまれたりしませんかね?』
『まぁモナカちゃんまで話が流れて来たのなら一般人にも話だけは聞きに来る人もいるだろうし、店員もいちいち聞いてきた人を覚えてないんじゃないかしら?』
『まぁ……それもそうですね。手頃なお店までナビをお願いします。できれば銃のパーツが売っているような』
『分かったわ』
コギトは早々に場所を移動することにしたようでvoid2が近くの銃火器店への道を示した。
「凄いなあの人」
コギトがそれに従って歩いていると道の横の方で何かが目に入った。
そちらに顔を向けるとそこはカフェのようで女性達が食事をしながら仕事なのか会議なのかコギトには分からないがパソコンに向かい合って何かをしている。
その中でもコギトの目についたのは浅黒い肌をした女性だ。
他の女性達と同じようにスーツを身にまとった彼女だが目を引く点は彼女のテーブルにあった。
彼女のテーブルには所狭しとホールケーキがいくつも置かれており彼女はそれを見る見るうちに平らげていたからだ。
『あんなに入るなんて彼女すごいわね』
『見てるだけで胃もたれしそうな量ですよ』
コギトはあの細い体の何処に入っているのかと不思議に思いながらも通り過ぎた。
それから暫くしてコギトは銃火器店へと入った。
「いらっしゃいませ!」
どうやら店番らしい女性がコギトを迎えてくれた。
人がいない店内には強化ガラスのショーウィンドウに飾られた銃達がコギトにその姿を見せつけている。
コギトはそれを軽く眺めたあとに店員に話しかけた。
「すいません、銃のパーツを買いたいんですけど」
「分かりました。銃の型番かお名前をお願いします」
「AS型67式突撃銃です」
「はい……少々お待ち下さい」
そう言って店員は店の奥に下がる。
すぐに女性は端末を持って戻ってきた。
「こちらがAS型67式突撃銃の改造パーツになります。性能差としては画面をタップしてもらえると表示されます」
「分かりました」
そうしてコギトが端末を受け取るとそこには沢山のパーツが表示されていた。
『すごい数ですね……』
『AS67は割とメジャーな銃だから改造パーツの数も多くなるんじゃないかしら』
『なるほど』
サイレンサから銃の強度を上げるパーツまでよりどりみどりである。
『どのパーツがいいとかありますかね?』
『私は専門じゃないから店員に聞いたほうが早いわよ』
それもそうだと思ったコギトは店員に聞くことにした。
「あの……」
「はい、どうしました?」
「どのパーツが良いのかちょっと性能を見ただけじゃ分からなくて、オススメとかってありますか」
コギトがそう言うと店員はコギトから端末を受け取った。
「どのような扱い方をするかでオススメする部品が違って来ますが」
「えーと……」
コギトは荒野で野犬の集団と戦ったときを思い出す。
あのときコギトの弾はあまり当たらずに目の前まで接近されてしまった。
void達の手助けがあったからなんとか間に合っただけでありそれに頼り続けていたらいつかは間に合わずコギトは死ぬだろう。
「先日荒野で野犬と戦ったときに銃弾が当たらなくて結構近くまで近づかれてしまったんですよ。そういったときの対策をしたいんですけど」
「そうですね、なら銃の弾ブレを抑えるパーツがよろしいと思います。私のオススメはこれですね、砂の入り込みに強く手入れもしやすいと言われてますよ」
そうして店員はパーツのうち一つを示した。
(高い!でも買えない値段ではないな)
コギトはモナカからいつも行っている仕事の報酬と留守番している子供たち用にいくらかモナカからお金を貰っていた。
このパーツだけでコギトの予算を使い切ってしまうが手が届かない値段ではない。
一応性能などを眺めてからコギトはこれにすることに決めた。
「それでお願いします」
「はい、かしこまりました」
そう言って店員はまた店の奥に戻っていった。
戻って来たときには箱に入ったパーツを持っていた。
「こちらになります」
そうして箱を開きコギトに確認を行う。
コギトも中身に違いがないことを確かめてからPDAで払った。
「はい……確かに振り込まれました。他にはありませんか?」
「はは……いえこれで大丈夫です」
他に買おうにもコギトの予算はもうない。
残りは街に残った子供達にお土産を買うお金なのだ。
そこでコギトは話をそらすついでに本来の目的も果たすことにした。




