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18話

「ウッソでしょ……」


「あっ……アハハ……」


『おお、すごいな』


『い、一発でしたね……』


『彼才能あるわね』


 コギトとハラが言葉を失う。

 void達も驚きを隠せていなかった。


「なっ!なぁ!見てくれよ二人とも!俺って実は銃向いてたりするのかな?」


「向いてるとしか言いようがないよ……」


 それが起きたのは警備も最終地点を迎え終わるというとき。

 商隊がいつも使っているらしい銃を貸してもらったマーズと共に渓谷を歩いているとコギト達は野犬を発見する。

 500mほど離れていたためある程度は安全だと判断したコギト達はマーズに撃たせることにしたのだった。


 コギトが初めて野犬を狙ったときはは200m先の野犬を大きく避ける結果となっていた。

 ハラもコギトもマーズが野犬に当てるとは微塵も思っていなかったのだ。


 そこで事件は起こった。

 マーズは野犬の頭を一撃で撃ち抜いたのだった。

 しかしこれが問題だった。

 まず彼の持つ自動小銃(アサルトライフル)という銃は射程が特別長い訳では無い。

 コギト達の銃である67やAC7も同じく自動小銃である訳だが自動小銃とはそもそも中距離戦闘のための銃であり有効射程ギリギリの500mまで離れるとスコープの向きや気温、風に湿度が大きく作用する。

 当然有効射程が長い銃ほど銃弾のブレは小さくなっていくわけだが初心者が有効射程500mの銃で500mを当てられるのは運ではない。

 二人はそれを分かっているため言葉を失う。


「ははっ……一週間とはいえ俺の努力は何だったんだ……」


「コッ……コギト君戻ってきて、あれはマーズが異常なだけだから」


 マーズの銃の腕を見てコギトは自分の才能の無さに落ち込む。

 それを励ますハラも少し自信をなくしていた。


「い、いや、二人が撃ち方とか構えを教えてくれなかったら当たってねぇよ……」


 そして自分の腕が二人と比べても異常と言うことが分かったマーズは少し申し訳無さそうな顔をする。


「……でもこれで俺ももしものときは商隊のみんなを守れるのかな?」


 少し心配そうに言うマーズ。

 それを聞いたコギトとハラは顔を見合わせてマーズに伝える。


「僕らの腕は既に超えてるよマーズ」


「俺も少なくともマーズほどの腕があれば戦闘が常に選択肢に入るほどには強いと思います」


 二人はマーズに何を言っているんだと言うように話す。

 少なくともマーズの腕で悩むことはない。

 二人はそう思っていた。

 マーズは二人の言う事を聞いて自分に自信を持ったようだった。


「良かった!これで俺もみんなと一緒に戦えるんだ」


「まぁ僕は戦いはない方が良いとは思うけどねー」


「そうですね」


 そうして暫くの間血抜きをしたあと3人はロープで野犬を引きずりながら帰った。

 街に入るとハヴェルが車の点検をしていたようでコギト達に視線を向け、マーズの元気そうな姿を見て安心したように息を吐いた。


「良かったマーズ。怪我はないか?」


「大丈夫ですよハヴェルさん!それよりもほら、みてくださいよコレ!俺が撃ったんです」


「撃ったってお前……危なくなかったのか?」


 そう言ってコギトとハラに顔を向けた。


「マーズって銃の才能があるみたいで、500mの距離を初めてで撃ち抜きましたよ」


「俺たちが手を出すまでもなかったですね」


 そうして二人は何も問題はなかったとハヴェルに告げる。

 ハヴェルはまた少し疲れたように息を吐いてマーズに言う。


「はぁ……銃の才能があったからって調子に乗るんじゃないぞマーズ。心臓に悪いからな」


「はい。分かってます!」


 その時車の近くにいた商隊のメンバーがハヴェルをからかうようにマーズに話す。


「そうだぜマーズ!ハヴェルさんはお前が怪我してたらどうしょうってずっと荒野の方を見ながらウロウロしてたんだからな!あんまり心配させるとすぐに社長交代になっちまうぞ!」


「うっせぇぞお前ら!」


 なんですか良いじゃないですかと言いながらハヴェルをからかって笑う部下たち。

 ハヴェルはそれに顔を赤くしながらも反論する。

 マーズはそれを楽しそうに見つめていた。


「俺、こんな日々が毎日続いてくれたらなぁって思うんだ」


 マーズが誰に言うでもなくそう洩らす。

 それが聞こえていたコギトもそれに小さく返した。


「なんだか心が暖まって、ずっと見てたくなりますよね」


 そういったコギトにマーズが分かってんじゃんといったふうに笑顔でピーズサインを向ける。

 コギトもそれに笑顔で返した。



_____________


「また話そうな!ハラ!コギト!」


「あぁ、そうだねマーズ」


「また会いましょう」


 あの後3人は街を見て回ったり、他の子供達と一緒に遊んだりして過ごしていた。

 だが楽しい時間とは早く過ぎるものでハヴェルたちはもう出発するということだった。

 そろそろ街を出ないと一番近くの都市に日が暮れる前にたどりつけないらしい。


「それじゃあそろそろ行くぞ、マーズ」


「はい!ハヴェルさん!」


 そうしてハヴェルとマーズの二人が車に乗り込むと一団は出発した。

 マーズが窓から顔を出しコギトとハラに向かって手を振る。

 二人もマーズが見えなくなるまで手を振り続けた。


 二人が手を振るのをやめて振り返るとモナカがそれを待っていたかのようにして手を叩いた。


「さて、二人とも色々とありがとうなぁ、ラスルも頑張ってくれてた」


「いえ、あれぐらいは何ともないですよ」


「俺も大丈夫です」


「ナットにも手伝ってもらったので後であの子も褒めてあげてください」


「おぉ!そりゃ偉いなぁ、後で褒めとくわ。さて、今回の取引の間に色々と街で起こっていることとかを聞いといたんやけど少しおもろいことを聞いたんや」


 コギトはモナカが自分を見ながら話しているのに気付く。


「それは……何でしょうか?」


「聞いて驚くなよコギト君」


 そう言ってモナカはコギトにウインクをする。


「君たち反企業派の英雄ハンス・アレクサンドラが生きてたっちゅう話や」


 コギトが息を呑む。

 少ししてからコギトが意を決したように口を開く。


「その話、詳しく教えていただけませんか?」



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