17話
コギトとハラがモナカの部屋をノックする。
それほども掛からずにモナカが部屋から顔を出した。
「んぉ?どうしたハラ君、コギト君」
「ハヴェルさん達が訪ねてきました」
「おお、もうそんな時期やったっけ?年取るといかんなぁ時間感覚なくなるわ」
「それともう一つ。グニドさんが引退するからと挨拶に来ています」
「あのおじいちゃんも大概元気やねぇ……とりあえずラスルを呼んで客間やお茶の準備させ、その後二人は迎えに行ってな」
そうしてモナカは部屋を抜けていった。
おそらく交換する何かを取りに行ったのだろう。
そうして二人はモナカに言われた通りラスルを呼びに医務室へ向かった。
ノックをして声をかける。
「はい。どうしました?」
「ハラだよ。ちょっと用事ができたからコギト君と来たんだけど入っていいかな?」
「あ、なら少し待ってください……はい、入って良いですよ」
「入るね」
「失礼します」
そうして二人が中に入るとモナカが小さい子供の治療をしているところだった。
どうやら足を大きく擦りむいたようでラスルがピンセットで傷口に入り込んだ石を取り除いていた。
「ナット、怪我をしたのかい?」
「うんハラ兄ちゃん。細菌が入り込んでたら不味いらしいからいま洗ってもらってるんだー」
そう言ってナットという少年はピースサインをコギトとハラに向ける。
ハラはその少年の頭を撫でてからラスルに顔を向けた。
「すいません、ハラ、コギト。今少し手が離せなくて。要件だけ伝えてもらえますか?」
「ああ……仕事を増やすようで申し訳ないけどハヴェルさんやグニドさんが訪ねてきたんだ。モナカさんが客間の準備をしてほしいって……大丈夫かい?」
少し不安そうな顔をしたラスルの顔を見てナットが何かを思いついたように口を開いた。
「これが終わったら俺も手伝うよラスル姉ちゃん」
「大丈夫?足に麻酔かけてるけどちゃんと歩けるかしら」
「2週間前まで肩に穴が空いてたコギト兄ちゃんよりは大丈夫じゃない?」
「ははは……」
「まぁコギト君と比べたら大丈夫だろうけどね……」
乾いた笑いをコギトがこぼす。
3人とvoid達の心の中で(確かに……)と考える内容が一致した。
「ならハラ、コギト。これが終わったら私はナットと一緒に客間の準備を始めます。皆さんが街に入ってくる頃にはぎりぎり終わっていると思うので」
「ならゆっくり来たほうがいいかな?」
「ふふ、流石にそこまでじゃないですよ。普通に来ていただいて大丈夫です」
「分かったよラスル。じゃあコギト君、行こうか」
「分かりました」
そうして二人は医務室を出る。
「頑張ってねーハラ兄ちゃん!コギト兄ちゃん!」
「頑張ってくるねー」
「分かりましたー」
そうして二人は街を抜け数百m先で休憩していたグニド一団と合流する。
コーヒーを飲んでいたグニド達にハラが話しかけた。
「お待たせしました。準備ができたようです」
「いやいやハラ君、何も問題はないよ。むしろ迅速なぐらいさ。な?ハヴェル」
「あぁ……別にこれぐらい待ってる内に入らんさ」
「ありがとうございます。それでは街にいきましょう」
「あぁ……よっこいしょ」
そうしてコギト達とグニド一団は車に乗り込んだ。
その時void達が話を始めた。
『はい、void1。この車の積荷データまとめ終わったわよ』
『すまないvoid2……なるほどな、モナカはこういった物を仕入れているわけか』
『さっきから姿が見えませんでしたがそういう調査をしていたんですか?』
『あぁ、ちょっと興味単位でな。食料は主にコギト達がいつも食ってるものだが機械類は本当に色々だな。銃の部品だったり、医療器具だったり、PDAのパーツだったりだ』
『はぁ……そうなんですね』
そうしてvoid達と会話している内に一団は街の内部に入った。
そこでモナカとラスルが出迎えているようだ。
コギト達が車から降り終えると最初にモナカとグニドが挨拶を行う。
「お久しぶりですわグニドさん」
「お久しぶりですモナカさん……最近は歳のせいでここまで来れずに申し訳ありません」
「いやいや、社長は後ろで踏ん反り返っとるのが普通やて。引退する聞いたらウチから挨拶に行っとったわ」
「ははは、僕はどうも後ろで威張っているのは性に合わないようでね。さて、もう聞いてるようですが今日ここに来たのは僕の引退の挨拶と引き継ぎを行いに来ました。今日からこの街との取引は……まぁ今までと変わりはないですがハヴェルが完全に引き継ぎます」
「そうか。いや、長い間お疲れ様でしたわグニドさん。そしてハヴェル。改めてよろしくな」
「はい。モナカさん」
「さて、ここで立ち話もなんやし、部屋に案内しますわ。お茶の用意も出来てるのでそこで続きを話しましょう。ハラ、コギト。時間取らせてすまんかったな。もう一度警備の仕事を頼んでもええか?」
「はい、大丈夫です」
「問題ないです」
そうして二人がまた荒野に戻ろうとしたときマーズが口を開いた。
「あっ、あのっ!モナカさん!」
「ん?なんや?」
振り向いたモナカにマーズが続ける。
「僕も一緒に行ってみてもいいですか?」
「おい馬鹿マーズやめろって」
ハヴェルが怪訝な顔でマーズを止める。
コギトとハラもマーズが何を言っているのか。
しかしモナカは面白そうな物を見る目で続けさせた。
「ハヴェル、止めんでもええよ別に。さて君、名前は?」
「マーズです!」
「そか、マーズ君。君はなんで荒野に行きたいんや?」
「あのっ俺、野獣どもと戦いたくて!」
「ん?君も商隊の一員やろ?荒野で戦ったことぐらいはあるんやないの?」
「モナカさん。アイツは危なっかしいんで野獣が出たときは車の中で待機させてるんですよ」
「ほーん……」
ハヴェルの言ってることを聞いたモナカは少し真剣な顔になる。
「君はなんで野獣と戦ってみたいんや?」
「俺ももしもの時に商隊を守れるようになりたいからです!」
「……本当みたいやな。な?グニドさん、ハヴェル君。ちょうどええしハラ達についていかせてみるのもいい経験になると思うんやけどな?どうや?」
「なっ!俺は反対すよモナカさん」
反対するハヴェルに対してグニドは少し思案顔だ。
そうしてグニドは暫く考えた後に口を開く。
「ふむ、そうだね。僕も賛成かな」
「社長!」
「落ち着けハヴェル。いつかはやらないと行けないことだろう?それの経験を比較的安全に詰めると考えたらこちらからお願いしたいぐらいだとは思わないかい?」
「そ、それとこれとは話が別で……」
「あっ!あのハヴェルさん!俺ちゃんとハラ達の言う事聞くので!お願いします!」
「ほらハヴェル。マーズも真剣みたいだし試してみたらどうだい?」
そうして暫く考えた後に渋々と言った感じではあったがハヴェルが頷いた。
「いいかマーズ。ハラたちの言う事はちゃんと聞くんだぞ?」
「はい!」
「すいませんモナカさん。この子をお願いします」
「気にせんでええで……っとハラたちからも聞いとかんとな、ハラ、コギト。この子連れてってもらっても大丈夫そ?」
二人は少し悩んだ後にマーズを連れて行くことに決めた。
「大丈夫です」
「俺も大丈夫だと思います」
「そか、ほなお願いするなー」
「「はい」」
そうしてハラとコギトの警備にマーズが同伴することになった。




