15話
『コギト君、一応聞いておくけど支援とかはいるかしら?』
void2がコギトに向かってそう質問した。
だがコギトはそれを断る。
『いえ、一度自分の本来の腕を見ておきたいです』
『そう、分かったわ』
そう言ってvoid2はコギトの邪魔にならないよう後ろに下がっていった。
コギトは200mほど先の野犬に狙いを定める。
「もしも失敗したときは僕が補助するからコギト君は思い切って撃ってもらって大丈夫だよ」
後ろのハラの声を聞きながらコギトは引き金に指をかけて野犬に向かって銃弾を撃ち出した。
しかしその銃弾は野犬を大きく避け地面を削る。
そして周りに人間がいることに気づいたらしい野犬が顔を上げコギトを睨みつける。
そのまま立ち上がりこちらに近づこうとしたそのときコギトの後ろから銃声が1つ響いて野犬は崩れ落ちる。
『絶命してるわね』
コギトが双眼鏡を使い野犬を確認するとvoid2の言う通り野犬は頭を撃ち抜かれ絶命しているようだった。
後ろを見るとハラがコギトに向かって手を振っていた。
どうやらこれがハラの補助らしい。
「やっぱり駄目ですね」
「そんなことはないさ、最初は僕もそうだったよ」
腕の差を見せつけられ少し落ち込むコギトに向かってハラが励ましの言葉を送る。
「ちょっとずつ上手くなればいいさ。幸い練習相手には事欠かないからね」
そう言ってハラは野犬に近づいていく。
野犬が完全に死んでいることを確認したハラは野犬の6本ある足を縛りながらコギトに言う。
「今回は特に変異してる個体じゃないけど偶に何処が急所か分からない奴らがいたりするんだ。そういった奴らに気がついたらすぐに逃げてね」
「はい」
「ま、ここらは汚染も殆どないし変異がある個体のほうが珍しいんだけどね」
そう言いながらハラはナイフで野犬の首に切り込みを入れ水溜りに晒す。
「食用にするときはこうやって血を抜いておくと持ち運びやすくなるし肉も美味しくなるから覚えておいてね」
「犬も食べれるんですね……」
「種類によって美味しいのと美味しくないのはあるけど全部同じ肉だからね」
そうして野犬の処理が終わったあとコギト達はまた進み始めた。
しばらく歩いているとまたvoid2が何かを見つけたようだった。
『また目標発見よ、今回は複数いるわね』
『複数……ですか』
『まぁ複数と言っても先程の野犬よりも危険度はかなり低いから安心して頂戴。心配なら視界に拡張表示してほしいかしら?』
『そうですね……不審がられたらちょっとアレなのでやめときましょう。危険なら仕方ないですけど今回は良いでしょう』
そうしてコギトがハラと歩いているとやはりコギトが見つけるよりも先にハラが目標を見つけた。
どうやら今回はネズミのようでハラの示す先には複数のネズミ達が水溜りの水を飲んでいる姿が見える。
「ネズミか……危険度は低いけどコードを噛んだり病気持ちが多いから駆除した方がいいかな。今回も僕が補助するからコギト君。君が撃っていいよ」
「はい」
コギトは先程と同じように構える。
が、それにハラが待ったをかけた。
「流石にこれは全自動でいいかな。コギト君」
ハラはコギトに苦笑しながら言った。
『そうね、複数相手には全自動が向いてるわコギト君』
コギトは前日の指導を思い出す。
半自動とは一度の引き金で一発の弾丸を撃つ状態であり、全自動とは引き金を引いている間は弾丸が撃ち続けられる状態である。
銃弾を無駄にしないために常に半自動にすべきだが複数相手のときには全自動が向いているとも言われていた。
コギトは67のレバーを引いて半自動から全自動に切り替え構え直した。
引き金を引いたときの衝撃はコギトに街での戦闘を思い出させるものだった。
半自動のときとは比べ物にならないぐらいの反動がコギトを襲うがそれを押えつけ打ち続けた。
「ふぅ……」
「まぁ全自動にしては当たってる方だね」
やはり半自動と比べて銃痕が大きく逸れているのがコギトの目にも見えた。
だがハラからすれば上出来らしい。
「これは適当に処理しておこうか」
ハラは肉片となったネズミを埋めるようコギトに指示する。
コギトはモナカに渡されていた折りたたみ式のスコップを取り出しハラと共に穴を掘り始める。
『塹壕を作るわけでもないのにスコップを渡されていたのはそういう訳ね』
『確かにそのままだと他の野獣を呼び寄せる原因になるかもしれないしな』
「コギト君、スコップを受け取った理由が分かったようだね」
「はい、疑問に思っていたことが解消されました。他の物も荒野では必要なんですかね?」
「ここらで安全に生活する上で必要って感じだね。荒野に出るときはまた違った装備になるよ」
そうして肉片となったネズミの処理を終えたコギト達はそのまま索敵を続けたがその後は特に野獣とは出会わずに引き返すことになった。
帰り道で血がそれなりに抜けた野犬をロープを使って二人で引きずりながら帰路に着いた。
「今日はどうだったコギト君?」
「何時間も周りに気を使ってて疲れましたね……あとやっぱり生き物を殺す感覚にはまだ慣れません」
「まぁそれに慣れたら慣れたで問題が出るかもしれないけどね」
ハラはそう言って控えめに笑った。
そのまま街に帰り着いた二人は食堂に野犬を渡した後に服を着替えて食事をすることになった。
そこで食べた野犬の味は独特だったと記しておこう。




