13話
「俺の答えは……」
コギトは一度躊躇する。
だが口を開いて自分の正直な気持ちを伝えることにした。
「俺のゴールは、戦争で狂う人……狂わされる人を救いたい……です」
「どういう経緯でその答えがでたんや?」
「あ、あの……俺は、あの都市から逃げ出すときに人を殺したんです」
「……」
「それで……俺はそのことを思い出すまでだいぶかかってしまって……自分が人を殺したことに何も思っていなかったことが怖かったんです」
コギトはこれが正しいのかどうか分からずモナカの様子を確認する。
だがモナカの顔はコギトに感情を悟らせなかった。
「そんで、理由はそれだけか?」
「あとは……俺は笑いながら人を殺す軍人たちを見てきました。でも、彼らは最初からそうだったわけじゃないと思うんです。俺と彼らには元々違いがなくて長い戦争の中で狂ってしまった人も多くいると思って、俺みたく最初は人を殺したことすら忘れて、殺しを楽しむようになって……」
「なぜ、君は虐げられている人を救う。とかにしなかったんや?」
「俺は、スラムで実際に虐げられてる人たちを見ました。でも俺自体がその光景を見たのはほんの少しだし、俺自体が経験したわけじゃない。答えに相応しくない。なら自分が感じたことをゴールにするのが一番近い気がしたんです」
「次に、君が戦いを止めればもう戦争で狂う人はいなくなるんやないか?」
「俺は……正直俺が諦めたところで戦いが終わるとは思っていません。俺たちがいなくなっても企業が人々に負担をかければ、第2第3の反企業派が出てくるでしょうし、もし出てこなくても次は企業同士が利益を求めて戦争を始めるかもしれない」
コギトはいつの間にか圧迫感など忘れていた。
それどころかいつもより思考が澄み渡ってるようにすら感じる。
「それに……虐げられている人々を救うっていうのも俺のゴールに最も相応しいわけじゃないだけで間違いではないです。俺は反企業派のみんなも、スラムの人々も、ここの街の人たちも、救いたいと思っています。そのための過程が企業連の打倒……だと俺は思っています」
「企業を潰すって意味?」
「潰す……というかは、企業が人々を支配する現状を変えたいというのが近いです」
コギトがそう言うとモナカは息を吐いた。
「これから君は沢山の人に出会うやろう、その中にはいろんな考えの人がおる。その人の願いは富だったり権力だったり、はたまた君と同じような願いの人だったりするで」
「はい」
「君の願いは君のこれから経験することで変わるかもしれん。でもそのときに君の信じる道を踏み外さんようにな。コギト君」
「分かりました」
コギトがそう答えると真剣だったモナカの顔がいつものように崩れる。
「いやー変な空気にしてゴメンなーコギト君。怖かったやろ?」
「い、いえ……正直俺が個人的な考えで企業のことを見つめてみたことがないことが分かって、今日初めてそれに触れる機会があって良かったぐらいです……」
「はは、コギト君は生真面目やねぇ」
モナカがそう言って愉快そうにしていると食堂の扉を開けてハラとラスルが入ってくる。
「話は終わりましたか?」
「んーおわったでー」
「なら準備は良さそうですね」
ハラがそう言うと肩からバックを降ろす。
その中からハラは2丁の銃を取り出した。
それをモナカが受け取って言う。
「コギト君。君ぃ見たとこ銃を使っとる人やないやろ?」
「はい。やっぱりそういうのって分かるんですか……」
「まぁ非戦闘員ってわかるぐらいにはな。今までは傷が治っていないのと君がどんな人間かわからんかったのも合わせて持たせて無かったんやけど今日から訓練してもらうで。君が人を指示して戦うにしろ、前線で他の人々と一緒に戦うにしろ自衛出来んと論外やからな」
「はい」
「と言ったわけで君が使う銃を選んできたわ」
そうしてモナカがコギトに渡したのは自動拳銃が1丁と自動小銃が1丁の計2丁だった。
「このハンドガンの名前はN14f、通称ネメシスや。計14発の銃弾が入る自動拳銃で癖がないのが特徴やね。そしてこっちのアサルトライフルはAS型67式突撃銃って名前で通称67って呼ばれとる」
コギトは銃の重さを両手で感じていた。
「君の願い……それが命の重さやで、それを重いと思うか軽いと感じるか、そこが大事や」
『そうだコギト、引き金を引くのは一瞬だが撃たれた奴は一生を失うかもしれないと常に心に刻めよ』
モナカとvoid1の二人から忠告される。
「はい。わかっています」
「それじゃあ明日から君にはここらの治安維持とそのついでに食料調達もやってもらおうかな。今日のところは一日ハラ君に銃について教えてもらって明日から頑張ってな」
「はい」
そうして完全に真剣モードが抜け落ちたモナカはラスルににこやかに話しかける。
「いやーごめんなーラスルちゃん。ご飯冷えてもうたわ」
「大丈夫ですよこれぐらい。温めて来ますね」
それをみたコギトはこういった光景がいつまでも見れると良いなと思うのと同時に決意を新たにした。
「じゃあコギト君。行こうか」
「はい」
そうしてコギトは食堂から出た。
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「それで……ラスルちゃんから見てコギト君はどんな感じや?」
コギト達がいなくなった後の食堂でモナカは食事をしながらラスルに尋ねた。
「いい子だと思います。でもだからこそ私は怖いですね、色々と」
「まぁ、折れることはそうそうないんやない?自分の中に確としたものを見つけたっぽいからな」
「それもそうですが……私はそうではなく……」
「まぁラスルちゃんからしたらそうやろな。ウチは大丈夫やないかとコギト君の目を見て思うんやけどね。あの子は良くも悪くも真っ直ぐそうやし自分で考える力もないわけやない。きっとそんなことにはならんやろ」
「でも最悪を起こさないためにハラを付けているんですよね」
「まぁ……そんなことがあったらラスルちゃんや他のみんなも傷つくやろうしね、みんなが幸せにならないことはウチも避けたいわ」
「そうですね……」
そして全てを食べ終わったラスルは仮面を付けた。




