?:サンドイッチ
ルチルティアは消えた。
あの時の彼の顔が忘れられない。
散っていった物語と、ぼくを見つめていたあの顔が。
大好きだったのに。
彼の物語を、ぼくはこぼしてしまった。
緑の中を探し回ったけれど、あの時散ってしまった物語はもうどこかへ飛ばされてしまっていた。
みんな彼のことなんか気にも止めていなかった。
誰も彼のことなんか覚えちゃいなかった。
居ても居なくても変わらないと言った。
彼の絵を愛していたはずの天使たちも、神々も、最初からいなかったかのように。
今も「彼の絵」は愛され続けているのに。
「彼」だけが愛されていなかった。
天使たちは高貴で美しいものが大好きだ。
だけど、高貴で美しいと認められない者には冷たかった。
絵が描けなくなった彼は、やはり無価値だと位置付けられてしまった。
彼の世界を読もうともせずに決めつけたのだ。
この國は残酷だった。
天使たちは、皆が認識する「優れている」に当てはまっているのが当たり前だった。
それに当てはまらない彼は、美しいのに美しくないと認識されてしまった。
相変わらずぼくは人が決めた毎日を歩きつづけている。
誰もぼくの話は聞こうとはしない。
頭を撫でて欲しかった。
彼の手は滑らかで、だけどたまに絵の具かペンのインクがついていた。
懐かしい…。
そんな風に感じるたびに、胸のあたりが苦しくなる。
「…会いたい…。」
澄み渡る青い空。
キラキラと光る側の星が、彼の色とよく似ていた。
…
爽やかに晴れた青い空。
誰もいない緑の庭園。
エリスはぼんやりと空を見上げて、ため息をついた。
いつもと同じ場所で。
エリスはピーナッツバターと林檎ジャムのサンドイッチを頬張った。
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