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一般人は強者を目指す -チートなんていらねぇ-  作者: Lizard
第一章 強者の村人
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第七話 初戦闘

今回はエルさん無双(予知)

※2018/6/16 戦闘シーン含め一部内容改変しました!

エル考案の方法で鍛錬を行う。


まずはとにかく、走る。


走って走って、さらにひた走る。


足が地面につくたび激痛がはしるようになっても、肺が張り裂けそうになっても、とにかく走る。




苦しいという思いがどんどんと貯まる。そこで、エルは思考を放棄する。辛い、苦しい、走りたくない。そんなことを考えるだけ時間の無駄、とばかりにひたすら走り続ける。疲労が限界に達し、前のめりに倒れる。その瞬間、それまで放棄していた思考が戻ってくる。身体中が痛い。とにかく痛い。


(これは・・・本当に回復魔法で治るのかコレ)


そんな風に不安になるほどの足の痛みと息苦しさ。遠ざかる意識を必死にたぐりよせ、なんとか回復魔法を発動する。


(やっぱり疲労はどうやってもとれないが・・・痛みはかなり引いたな。これならまだ走り続けられる。けど、これって直して苦しんで、を繰り返すんだよな・・・強くなるためとはいえ・・・俺の精神は持つのだろうか)


そんなことを考えながらも、少し休んだら再び走り出す。

エルが村の外に出たのは朝。開始から一時間ほどたった時、身体が限界を超え、回復魔法を施そうとしたができない。魔力切れだ。そうなれば勿論体中の痛みは消えないわけで、エルの意識は消えた。次に起きたのは昼前だった。

ちなみに、メルリーナから昼飯時までには帰ってくるように言われている。


(今の魔力量じゃ長時間は無理か。やっぱり回復魔法は魔力を多く消費するみたいだな・・・って考えてる場合じゃねぇ!帰らないと!!まずいな、母さんがそろそろ昼飯のために呼ぶ頃だろう)


村へ向かって、全力で走る。まだ疲労は残ってはいるが、気絶していた時間が長かったためかなり回復したらしい。村には門があり、本来ならばそこから出入りするのだが、当然そんなところ通るわけにもいかない。となれば通るのは柵の部分なのだが、外側に向けて棘をつけているため、そのまま登ろうとすれば串刺しになるだろう。

しかし、何も方法を考えていないわけではない。この日のためにある魔法を考えていたのだ。


「《風跳び(ウィンドリープ)》・・・!」


地面に向けて手をかざし、手のひらにためる魔力の属性は風。そのまま走りだし、跳躍と同時に口にしたその魔法の名前は《風跳び(ウィンドリープ)》。地面に向けて風を放つ、だけではない。自分自身を風で押し上げるイメージ。自身の跳躍を補助するように使ったその魔法により、エルの体は大人の背丈よりも高い柵の反対側を軽々と跳び越える。


(よし、誰にも見られてないな。あとは・・・)


急いで家に帰るだけ、そう思考して帰った家の前にいた笑っているはずなのに目が笑っていないメルリーナを見て、思わず頬が引き攣り、冷や汗が流れる。


「エルくーん・・・?お昼の時間には帰ってきてって言ってたよね・・・?」


「あ、ああ。うん。そうだね。お腹すいたし、早くご飯食べよう」


急いで話題を変えようとするが、当然それをメルリーナが見逃すはずもなく・・・


「エルくん!お母さん心配したよ!?時間を過ぎても帰ってこないんだから!しかもなんか服が泥だらけじゃない!!とにかく家の中に入って、さっさと着替えてきなさい!」


急いで家の中に入り、着替える。前世ではあまり母親に怒鳴られるということがなかったため、思わず苦笑を零(こぼ)す。


(時計でもあればいいんだけどな・・・今度からもうちょっと時間に余裕を持っておこう・・・)


そこまで大幅に飯時に遅れたわけではなく、母親である彼女から見て、メル今よりも幼いころから外に出たいと考えていたことは勘づいていたため、特に外に出ることを禁じたりはしない。


「エルくん!とにかく時間にあわせて帰ってくること!それと危ないことはしないこと!分かった!?」


「分かったよ・・・。ありがとう母さん」


昼食を食べ終え、注意を促してきたメルリーナに、エルが素直に感謝を述べる。これ以上怒る気分にはなれなかったのか、それ以上何か言うことはなかった。エルが心配ではあったものの、彼女の中で最優先にしていることは、エルの幸せなのだ。


「やっぱりメルはエルに甘いんじゃないか?」


「あらあなた、何か言ったかしら?」


「なんでもありません」


笑顔を顔に張り付けていながらも、内心が全く喜びや楽しみという感情からかけ離れたものであることを感じさせるメルの表情を見て、ファンドルトは直ぐに自分が言ったことが失言だったことを悟る。そして即座に話などなかったように自分の作業に戻るまでの動作は彼が何度も同じ動作をしてきたかのように、いや実際にしているのだが、流れるように滑らかでぎこちなさがない。その動作を見守っているエルの内心は「本当に冒険者だったんだろうかこの父親・・・」といものであった。


午後になり、再び村から出て森へ行く。森に入ってしばらくしたところで、ある生物に遭遇し、目を見開く。その生物は、とがった鼻に、緑色の肌。膨らんだ腹に加えて、六歳の子供であるエルとそう大差ない身長。加えて、人型である。つまり・・・


「ゴブリン、か・・・初めて見たな」


前世で読んでいた小説では常連とも言えたゴブリン。その数は全部で三匹。エルが魔物を初めて見た瞬間だった。


下卑(げび)た笑みを浮かべ、ゴブリンの内の一匹が飛び掛かり、それを見たエルがすぐさま背後へ跳ぶ。

そのゴブリンは武器を持っておらず、素手で殴りかかってきたため、エルの身体能力であっても避けることは容易かった。


ゴブリンの強さは村人でも大の大人であればなんとか勝てる、という程度の強さ。日頃から魔物と戦う冒険者から見れば、ただの村人でも勝てるようなゴブリンは大した敵ではない。だが、エルは例え中身が18歳であっても、体はまだ子供なのだ。出会えば生き残るためには逃げるしかない。

ただし、普(・)通(・)の(・)子供であれば。


「《アイスポール》」


深呼吸をして言葉とともに魔法を発動する。

少々驚いたが、特に焦ることはない。魔物を見るのは初めてではあるが、この程度の敵に勝てないようでは強くはなれない。どのみち実戦をしたかったのも確かだ。

手のひらにためる魔力の属性は水。

だが、エルの手の中に現れたのは細長い氷の棒。

そもそも、この世界に氷属性というものは存在していない。氷とは水が固体になったものなのだから。

そして、エルが家の中で練習できた攻撃用の魔法など、ほ(・)ぼ(・)ない。だが、今生み出したものは攻撃に使うことができる。本来この魔法は、剣の鍛錬のために作ったものであった。エル自身が剣を手に入れることが出来ないからだ。勿論本当であれば剣の形がよかったのだが、ただの氷の棒と、縁(ふち)が敵を切れるほどに薄くし、形を整える必要がある剣。どちらのほうが作るのが難しいかと言われれば、当然のように後者だ。つまりは、技術不足で剣の形が作れなかったのだ。

しかし、それでも武器にはなる。



そして、全力で踏み込み、前方のゴブリンへ肉薄する。

自身が作った氷の棒をゴブリンに向けて叩きつけると、ゴブリンは驚いた表情のまま、頭部を殴られ地面へ倒れる。そのゴブリンが起き上がることはなかった。


(よし・・・戦える!!)


ゴブリンは雑魚だと言える。しかし、自分は子供なのだ。故に、心には不安があった。自分の力がたとえゴブリンであっても、魔物に通じるのか。

結果はゴブリンに反応させることなく絶命させるとうもの。上出来だと言えるだろう。

意気込み、再び足に力を込め、跳び出して二匹目へとせまる。ゴブリン達は武器をもっているのが二匹、もっていないのが一匹だった。素手だった一匹が先ほど倒したゴブリンだ。二匹目が持っていたのは、刃こぼれが多く切れ味は悪そうな打撃武器とすら言える短(・)剣(・)を持っていた。そしてエルがゴブリンへ氷の棒を振り下ろすと、先ほどのゴブリンを見て学習したのか、油断せずに短剣で受ける。しかし、エルの全力での振り下ろしにより、ゴブリンの短剣がわずかに弾かれる。その隙をついて、首元へと叩きつける。

ゴキィッと鈍い音がして、二匹目のゴブリンの首の骨が砕ける。何とか二匹目も倒せた。残るは一匹。最後のゴブリンがもっていたのは、木を折ってそのまま武器にしたような棍棒。いや、実際そうなのかもしれない。今度はゴブリンが先手を打つ。振り下ろされた棍棒を両手で持った氷の棒で受けるが、子供の力では無理があった。しかし、エル自身が前世で剣術を学ぶようなことはなかったが、家の中でもある程度の鍛錬はしていたし、自分より力が上の魔物に対する対策は、ファンドルトの冒険自慢から学んでいた。氷の棒に棍棒がぶつかり、その勢いが一瞬止まる。すぐに押し込まれそうになるが、力で止める必要はない。エルは右足を引いてゴブリンに対して半身で構え、氷の棒を傾ける。その動作によりゴブリンの棍棒はエルに当たらず、受け流され、地面にぶつかるその隙をついて全力で武器を振る。横なぎの一撃により先に倒された二匹のゴブリンと同じように最後のゴブリンも息絶える。


エルが初めて魔物と戦闘し、勝利した瞬間であった。


初めて戦闘シーンの描写をしましたが・・・なんとも難しい。ご感想等あれば送ってくだされば幸いです!!

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