第十二話 村での戦闘訓練
今回はエル視点が多め。
あとエル君がやらかします
「いやー、今回はほんと助かったよ!」
「ありがとねーエル君!」
「成人したら酒でも飲もうぜー」
「冒険者になったらまた会いましょう」
「ああ、リベラルだったな。数年経ったら行こうと思う」
《黄昏の人狼》に別れを告げ、村へと帰る。
冒険者ギルドがリベラルという街にあるらしいので、12、3くらいの年齢になったら行くか・・・それまでにもっと鍛えないとな。まだまだ・・・本当にまだまだなんだということを今回は実感できた。もっと上手くやることもできたはずだ・・・まぁ、後悔しても仕方がないしな。明日からは"魔棲の森"で鍛えるか?外縁部ならまだなんとかなりそうだ
~~~~~
「本当に彼は凄まじかったねぇ」
「うんー!年齢の事がなくても十分強いよねー」
「しかも己惚れてる感じもなかったしなぁ・・・ありゃあまだまだ強くなるぞ」
「私たちも負けないように強くならないとね」
「おう!帰ったら修行だ!!」
「いや、まだもう少し調査しなきゃいけないからね・・・?このままだと依頼が失敗したと思われてもおかしくないよ?」
「えー、フォレストウルフが出てきましたー!ってだけじゃダメなの?」
「いいわけないでしょう・・・リーナはもう少し依頼のことを覚えた方がいいんじゃないかしら」
「まぁ、ちゃっちゃと終わらせようぜ!」
(また・・・会えるかしら・・・彼が青年になったら・・・)
そんなことを若干頬を染めながら考えていたのは、カルデラであった。
~~~~~~
村に着いた。いつも通り柵を越えて、っと
しかし、あいつらは冒険者の中でどれくらいの位置にいるんだろうなぁ・・・
まぁ、そこまで高位の冒険者ではないんだろうが
家に着くと、親父も母さんもいなかった。
おそらく畑仕事に行ってるんだろう。よし、たまには親孝行してみるか
~~~~~~
「おーい、母さん」
「あら、エルくん。もしかして手伝いに来てくれたの?」
「ああ。たまには親孝行でもしようかと思って。親父は?」
「ファンなら街に行ってるわよ?」
「ん?今日は買い物の日だったか?」
「いえ、何でも村の子供の戦闘訓練をするらしいの。それで、そのための装備を買いに行くんだって。他の人たちと一緒に出掛けたわ」
「ああ、そういえばそんなことを言ってたな・・・」
「もう、エルだって参加するんだから忘れちゃダメでしょ」
「そんなこと言われてもなぁ・・・」
村の子供達にもある程度自力で戦えるようになってもらうため、戦闘訓練をするらしい。
主に親父が教えるらしいのだが、基本的には村の大人たちと模擬戦をするのだとか。村に住む大人たちは冒険者ほどではなくとも、こんな場所にある村に住んでいるため、普通の村人と比べればかなり強い、と聞いた。・・・正直あまり乗り気にはなれないな
「もう、いざという時に自分の身を守るためには大切なことなのよ?」
「いや、それは分かってるんだがな」
正直、親父以外は相手になる気がしない。強いとは言っても武術に長けている、というわけではなく、あくまで身体を鍛えているのと、実戦経験が多少ある、というだけだ。足運びや動作、気配等で何となく強いか弱いかは分かる。親父はかなり強いと思う。少なくともブランよりも。だけどなぁ・・・
まぁいいか。とりあえず今は畑仕事を手伝いに来たのだから。
「ゴブリンぐらいは倒せるようにならないと、村に何かあった時どうするの?何度か村にゴブリンの群れがきたことがあるのよ?」
すまん母さん、ゴブリンくらいなら百匹くらいは屠れるんだ。
「まぁ、分かったよ。戦闘訓練が始まったら真面目にやるからさ」
「・・・いい?ちゃんとやるのよ?・・・じゃあ、畑仕事を手伝ってくれるんだったわよね」
「ああ。そのために来たんだからな」
うーん・・・真面目に弱いフリをしなきゃな
~~~~~~~~~~~
三日後。待ちに待っていない戦闘訓練の日だ
「いいか!お前たちにはゴブリンくらいは倒せるようになってもらうぞ!このリヴィ村には今までも何度かゴブリンの群れが攻めてきたことがあるからな!そのために、基本の型を教えたら大人達と模擬戦をしてもらう!!俺が見て回り、悪いとこがあれば指導するからな!それじゃあ、剣を取りに来い!」
親父が叫ぶ。ちなみに、この村はリヴィ村という。
「うーん・・・ゴブリンかぁ・・・実際に見たことないから分かんないけど、どれくらい強いんだろうね?」
「村の大人は皆倒せるって話だからな。そこまで強くはないんじゃないか?」
訓練用の剣をとりにくると、隣にいた少年二人が会話をしている。まぁ、実際ゴブリンはそこまで強くはない。が、基本群れで動いてることを考えると、一体倒せるだけじゃダメなんじゃないか?
ちなみに、剣は刃を潰してある。怪我をしないようにするためだ。
「へっ、お前らゴブリン何かにびびってんのか!?そんなんじゃ冒険者にはなれねぇぜ!」
こいつ何て言ったっけ・・・確かラードだったか?
「ルード君、ゴブリン倒したことあるの?」
さきほどの少年二人組の内、気の弱そうな方が尋ねる。
豚の脂じゃなかった。無礼だった。うん、そっちのほうがあってるかもしれない。
あと、いくらゴブリンでもお前よりは強いと思う。
「ねぇよ!だがゴブリンなんかに負ける俺じゃねぇ!」
いやどこから来るんだよその自信。
「ルードお前・・・さすがだな!」
少年二人組の内茶髪の元気のありそうな少年が答える。あ、二人とも茶髪だ。この二人は確か兄弟だったはずだ。
というか、さっきの「さすが」には複数の意味が籠ってた気がする
「ふふん、そうだろう!!」
いや、特に威張れることはないと思うんだがな。まぁいいだろう。村の大人たちはこいつに比べればかなり強いからな
「全員剣はとったか!?・・・それじゃ、始めるぞ!」
親父が剣の基本を教えている。俺は独学だからな。一応聞いておこうか
親父の講習が終わった。
模擬戦の開始だ。それぞれ村の大人の中でも比較的戦闘に慣れた人物が子供たちと一対一で対峙している。当然、男だけではなく女もだ。子供と大人両方。
すると、親父が近づいてきた。
「エル、お前は見学でいいぞ」
「え?いいのか?」
「ああ。つーかお前、俺が気づいてないと思ったか?どこで鍛えてんのかは知らんが、お前ゴブリン程度なら簡単に屠れるくらいの実力はあるだろう?」
・・・やっぱり気づかれてたか。俺が親父の実力をある程度はかれるのだから、親父が俺の実力がどの程度か分かっても不思議ではない。
「・・・ああ。分かったよ」
「お前はどうやら隠したいらしいからな・・・強くなろうとするのはいいが、あんま無茶すんなよ?」
「努力するよ」
俺が肩を竦めて答えると、親父は溜息をついた。
「・・・まぁ、お前が素直に聞くとは思ってないがな。とにかく、少なくとも今回は見学でいい。わざと負けるのも嫌だろう?」
「当然、嫌だな。助かるよ」
「ま、完全に不参加だと後々面倒だからな。見学だけはしとけ。ある程度俺が胡麻化しとくから」
そう言って親父は模擬戦をしている子供たちに向かっていった。
言われた通り見学でもしておこう。
と、思い、座っていると、こんな声が聞こえてくる。
「もーっ!!全然当たんないよっ!」
「さすがにそう簡単に当たってあげるつもりはないわ!筋はいいと思うけどねっ!!」
声の方に視線を向ける。
女の子と20代後半といった見た目の女性が模擬戦をしているのが見えた。
確かあれ・・・女の子の方はラナだったか。リーナと似たタイプだ。もう一人はローナ、だった筈だ。村では女性にも関わらず狩りの腕前が良いと評判だった。あと、よく独身の美人として村の男たちが話しているのを耳にしたことがあった。
女の子の方は、おそらく親が護身用に剣を教えたのだろう。ゴブリンよりも少し強そうだ。
だが、ラナの攻撃はローナには当たらない。ローナの方は冒険者でも通用しそうだ。
そして、ラナが膝をつく。体力が切れたらしい。
(まぁ、あれだけ無駄が多い動きじゃあな)
しかし、ローナはまだ余裕がありそうだ。
「ふふん、まだまだね!もうちょっと動きの無駄を減らした方がいいわよ?」
ローナが胸を張って言う。豊満な胸が浮き出る。
それをラナが様々な理由から恨めしそうに見ている。
「くぅ・・・!!やっぱり勝てないかー。あれ?エル君?」
こっちに気づいたようだ。そこまで話したことはなかったと思うが・・・忘れてるだけか。
「あら?何でそんなところで座ってるのかしら?相手がいないなら私が相手になるわよ?」
不味いな・・・親父は他の子供たちの指導に熱心になっているようだし、フォローは見込め無さそうだ。しょうがない、これぐらいは自分で何とかするか。
「分かったよ」
「ふふ、さ、来なさい!鍛えてあげるわ!」
かなり弱く踏み込み、切りかかる。不味いな、ローナが驚きの表情を浮かべている。まだ強かったらしい。
「・・・!流石はファンドルトさんの息子さんね」
うーん、親父は多分関係ないんだけどな。なんとなく前世のことが思い出される。
一旦後ろに引くと、今度はローナが切りかかってきた。
そうだ、ローナが誤って躓いて隙だらけになったことにしよう
ローナの剣を避け、他の人から分かりにくいように足を引っかける。
「きゃっ!!」
悲鳴と共に、ローナは前のめりに倒れる。そして顔に剣を突きつけると、目を見開いて何が起こったか分からない、という表情をしている。
「・・・!?!?今、どうやったの?」
「偶然足が引っ掛かってな。運がよかった」
「いやそんなわけないわよね!?」
バレたか・・・さすがに無理があったようだ。
「まぁ、ラナともう一度模擬戦でもやればどうだ?」
「え?ええ、ラナ、もう一回やりましょう」
ローナはそう言いながらもものすごく疑っている目で見てくる。ラナは完全に放心してしまっていたようで、ローナから声を掛けられて慌てて返事をしている。
二人の模擬戦を眺めながら、思った。
完全に失敗したな、と。
はい、完全に失敗しましたね。
クエスト<弱者のフリをする>の勝利条件は誰にも疑われないことです。ハイ。




