時間旅行2011 その1
やってきた2011年の世界。
私、大学3年生。いっちばん青春してた時。
本当に過去に飛べた喜びがもう抑えられない。
「やっぱり、行くところはあそこだね」
迷わず私は、大学のライブハウスに向かった。
「みきてぃー、おはよーーー!!」
真っ先に声をかけてきたのは、ドラムのまりりんだった。
「あ……まりりん!久しぶりー!」
何年も逢ってなかったから思わず久しぶりと言ってしまった。
「何?みきてぃー、久しぶりって… 毎日逢ってるじゃん?………もー!冗談やめてよー(笑)」
「あはは(笑)ごめん!まりりん!!」
あの頃と変わらない、楽しい会話。ホントになんで疎遠になっちゃったのか、不思議でしょうがなかった。
「おはよー!」
ギターのさわちゃん、ベースのゆっこもやってきた。
「ごめーん!遅くなっちゃった!」
10分遅れで、キーボードのみゅうみゅうもやってきた。
「じゃー、やろか?もうすぐオーディションもあるし、頑張んないとね」
ドラムでリーダーのまりりんが指揮を取っての朝練。
私はボーカルではあったけど、バンド辞めてからは全く歌っていなかった。カラオケは度々行ってたけど、あの頃より確実に歌唱力は落ちていた。
「どうしたの?みきてぃー。全然声出てないよ。それに音程もメチャクチャ。昨日はあんなに上手かったのに、何かあったの??」
ギターのさわちゃんが私を心配してくれた。
「そうだよ、みきてぃー。これじゃー来週のオーディション、マジでヤバイよ!」
ベースのゆっこが続く。
私は、2011年11月25日にタイムスリップしていた。
オーディションは来週の12月1日にある。
このオーディションに合格すれば、インディーズデビューが約束されている、大事な大事なオーディションを目前に控えていたのだ。
「なんか、今日のみきてぃー、いつもと違うよ?なんだか疲れてる感じ………大丈夫??」
キーボードのみゅうみゅうも不安の色を隠せない。
「ううん。大丈夫!………みんな、ごめんね!」
みんなに心配をかけている自分が、非常に申し訳なく感じた。
仕事の時ではただただ山田さんや水野課長に言われるがままで、申し訳ない気持ちを感じる余裕なんてなかったのに、今は本当に自責の念にかられていた。
「今日はこれでおしまいにしよか?みきてぃーも疲れてるみたいだし…」
「そだねー!みきてぃー、今日は講義休んだら?高田(教授)の講義、代返取っとくから」
ドラムのまりりんとベースのゆっこに促され、私は自宅に帰ることにした。
「ふぅ…」
大学の頃から私は一人暮らしをしていた。
家につくなり、私は倒れこむように横になった。
今日はもう寝よ!明日は明日の風が吹くさ!
そう自分に言い聞かせながら私は眠りについた。
そして、オーディション前日。
やっと私の声も大学時代の頃の声に戻ってきた。
「うん!いい感じ!!」
笑顔のまりりん。
さわちゃんもゆっこもみゅうみゅうも、いつもの笑顔を取り戻していた。
「声も元に戻ってきてるし、みきてぃーのおかげであたしのギターもイイ感じになってきたね。」
「そだねー。あたしのキーボードも!」
「あたしのベースだって……」
みんな笑顔が戻ってきた!このままインディーズデビューできたらなぁ。
もしかしたらメジャーデビューも夢ではないかも!なんだかワクワクしてきた。
仕事で怒られてばかりの毎日より、断然こっちのが楽しい。ずっと過去の世界に居れたらなぁ… 私はそう感じはじめていた。
「よーし!このまま明日のオーディション、合格するぞー!」
「オーー!!」
まりりんの音頭で気合注入。みんなもこれ以上のない笑顔で俄然やる気が出てきた。
オーディション、頑張るぞーーー!!!
そして、運命のオーディションの朝…




