待ちに待ったタイムマシン
あれから1ヶ月が経過して、ようやくあのオジサンの言うタイムマシンが自宅に届けられる日を迎えた。
ピンポーン
「はーーーい…」
玄関を開けると、池袋で出会った怪しげなオジサンが立っていた。
あの時と同じ、白衣姿で…
「斉藤様、お待たせしました。タイムマシンをお届けに上がりました。」
「あ………こんにちは。お久しぶりです。」
オジサンの口調が妙にかしこまった感じだった。私も人生を変えるかもしれないタイムマシンとのご対面に、感情が抑えられない。
「あの頃の自分にもう一度逢いたいな… さわちゃん、ゆっこ、まりりん、みゅうみゅう………みんなにまた逢えるんだ!」
もう、早くタイムマシンであの頃に行きたい感情は抑えられずにいた。
「こちらが、斉藤様にお試しいただくタイムマシン、『time001型』でございます!」
オジサンの目の前に現れたタイムマシンの姿、形に思わず目を疑った。
「…………これが、タイムマシン??」
一見すると、何の変哲もないただの車。
正直、実家の妹が乗っている車と同じような形。
でもこれでバンドやってた頃のみんなに逢えると思うと、もう姿、形なんてどうでもよかった。
「これって、未来にも行けるんですか?」
………あー、オジサンに何を聞いてるんだ?私……
未来に行こうなんて、夢のまた夢。いくらタイムマシンでも、そんな近未来マンガのようなことなんて有り得ない。
「そーですねー。これは試作品ですので残念ながら過去にしか行くことはできませんが、改良をくわえて未来へ行けるようにすることは不可能ではありません。
この試作品『time001』の開発が順調に進めば、未来へも行けるタイムマシンの開発も進むと思われます。
まずは斉藤様にこの『time001』の開発にご協力いただいて、タイムマシンの更なる実用化を目指したい!と考えております。」
なんだかこの間逢った感じより妙に肩っ苦しい。
「そういえば、名刺をお渡ししておりませんでしたな。失礼いたしました。私、こうゆう者です。」
オジサンから名刺を渡された。その名刺を見て思わず二度見しずには居られなかった。
NASA日本支部 時間開発事業部長 時本はじめ
え?NASAの人?? 時間開発事業部長???
そんなスゴイ人だとは全く思わなかった。池袋で見た時は、どこかのストーカーのような怪しいいでたちだったのに、実は本当にスゴイ人だったなんて………
それにこの人、顔は知らなかったけど、名前だけは知っていた。
毎年ノーベル賞候補に上げられているって、ニュースで聞いたことある。
そんなスゴイ人の開発に協力できるだなんて!!
もう私は早速使いたい!という気持ちでワクワクしていた。
「ご使用にあたって、取扱説明書と注意書きもお渡しいたします。」
とにかく早く使いたいので、正直取説なんて要らないけど、とりあえず受け取った。
スマホとか家電買う時にも基本、取説は私は読まない。
「では、研究がございますので、私はこれで…」
1ヶ月前に池袋で逢ったオジサンとはまるで別人だった。すごく紳士的で気さくな人。
私は今日のオジサンの紳士的な対応にうっとりしていた。
そして、間髪を入れずにいざ、乗ってみた。
カーナビみたいなのも付いていて、ホントに車と間違えそう。
本物の車は持ってないけど、これでドライブなんかもいいかも!と私は思った。
「この、カーナビみたいなのに、行きたい年を入力すればいいのかな?」
とりあえず、カーナビのような装置を起動してみる。
「何年の世界へ行きたいか、西暦で入力してください。」
音声ガイダンスが流れた。
思った通りだ!ここに行きたい過去の年を数字で入力すれば、あの頃に行ける!
私は迷わず入力した。
2、0、1、1………enter
入力すると、タイムマシンにエンジンがかかった。
「シートベルトを着用の上、サイドブレーキを下ろし、アクセルを踏んで発進してください」
また音声ガイダンスが流れた。
ホントに車と同じ。これなら操作も簡単!行きたいところに飛べる。
もう「タラ・レバ」なんて言わなくていい!そう思うと感情の高ぶりは頂点に達した。
私の感情の高ぶりが燃料となっているかのように、タイムマシンは勢いよく前進した。
そして、周りの景色が現在のものから、懐かしい2011年の景色へと切り替わったのだった。




