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SF短編

デウス・エクス・マキナ

「でもね、少しだけ感謝しているの」
 前に一度、姉は穏やかな表情でそう言った。人類に脅威が迫るこの現状を、姉はそうして受け入れたのだ。
「あのとき神が現れたから、私は、2人を失わずにすんだ」
 だが、カシェルは納得できなかった。その神の所為で、カシェルのささやかな幸福と夢想した未来が永遠に失われてしまったのだから。

 恨みと後悔と罪悪感に縛られながら、カシェルは今宵も剣を取る。仲間と共に戦場に立つ。
 彼女の前に現れるのは、蒸気を吹き出す巨大な鉄の絡繰と、かつてカシェルたちを裏切った一人の男。
「無茶は駄目だよ」
 今もなお縁が切れない男の声は、カシェルの心を引っ掻いた。

 かつてこの地にあった人間の抗争。互いを削り合う戦いに終止符を打ったのは、神だった。
 これは、因果なき終幕を迎えた少女の、その後の物語。

※全5話
※自サイト、「カクヨム」にも掲載。
月下に聳える
2017/05/17 06:00
煤煙のない空の下
2017/05/17 18:00
過去の残響
2019/09/28 22:55
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