第6話 初めての委員会
「それじゃあ、次は前決まってなかった学級委員を決めるぞ」
六時間目。
担任の一言で教室がざわついた。
「えぇ……」
「面倒くさいって……」
誰も手を挙げようとしない。
「立候補は?」
沈黙。
誰も目を合わせようとしない。
「じゃあ推薦で──」
その瞬間。
「先生!」
元気よく手を挙げたのは朝比奈悠真だった。
「榛原がいいと思います!」
「は?」
奏汰は思わず声を漏らす。
「お前、何言ってんだ」
「真面目だし、ちゃんと仕事するし!」
「だからって推薦するな!」
教室に笑いが起きた。
「榛原か……」
担任は少し考える。
「本人はどうだ?」
「できれば遠慮したいです」
「即答か」
また笑いが起きる。
すると、
「先生」
今度は女子が手を挙げた。
「榛原くんなら安心だと思います」
「私も」
「真面目だし」
少しずつ賛成の声が増えていく。
「……人気あるな」
担任が苦笑した。
奏汰は頭をかいた。
「そんな大したことないですよ」
「じゃあ学級委員じゃなくても、何か委員はやってもらうからな」
「はい……」
結局、奏汰は図書委員になった。
「これくらいなら大丈夫か」
小さく呟く。
その時だった。
「先生」
一人の女子が静かに手を挙げた。
「私も図書委員でお願いします」
教室中の視線が集まる。
「柏瀬?」
担任が驚く。
「陸上部と両立できるか?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ榛原と柏瀬の二人で決定」
「よろしくお願いします」
陽葵は小さく頭を下げた。
「よろしく」
奏汰も自然に返す。
それだけのこと。
それだけなのに──
「また榛原か……」
男子たちの間に小さなざわめきが広がる。
「さっきも授業で一緒だったよな」
「偶然だろ……」
「でも柏瀬さん、自分から立候補したぞ?」
教室の空気が少しだけ変わる。
陽葵は表情を変えない。
けれど机の下では、そっと拳を握っていた。
(やっと……少し近づけた)
その様子を見た乃愛は、少しだけ頬を膨らませる。
(陽葵ちゃん、動いたなぁ)
澪も静かに二人を見つめていた。
(……焦らなくていい)
そう自分に言い聞かせる。
ホームルーム終了のチャイムが鳴る。
「じゃあ解散!」
「お疲れー!」
教室が一気に賑やかになる。
「奏汰!」
悠真たちがすぐに集まってきた。
「帰ろうぜ!」
「ああ」
奏汰は鞄を肩に掛け、いつもの友人グループと教室を出ていく。
その後ろ姿を、
陽葵は少しだけ嬉しそうに見送った。
(図書委員なら……また話せる)
そんな小さな期待を胸に抱きながら。




