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『学校一と呼ばれる三人の美少女は、今日も俺を諦めない。』  作者: 夜凪ロア


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第5話 初めての名前

昼休みが終わり、五時間目は現代文。


担当教師が教室へ入ると、生徒たちは慌てて席へ戻る。


「今日は教科書じゃなく、このプリントを使う。」


そう言って配られたプリントを見た瞬間。


「あっ……。」


何人かが小さく声を漏らした。


「二人一組で意見をまとめてもらう。」


教室がざわつく。


「先生、組み合わせは?」


「近くの席同士でいい。」


その一言で、生徒たちは周りを見渡し始めた。


奏汰も何気なく隣を見る。


「よろしく。」


そこにいたのは――


柏瀬陽葵だった。


「……よろしく。」


奏汰は少し驚きながらも普通に返事をする。


周囲の男子たちは思わず息を呑んだ。


「柏瀬さんと榛原!?」


「マジかよ……。」


「運よすぎるだろ。」


そんな声が聞こえてくる。


しかし当の二人は気にしていない。


「この問題、どう思う?」


陽葵がプリントを指差す。


「俺はこっちかな。」


「私も同じ。」


「じゃあ理由をまとめよう。」


会話はそれだけ。


必要最低限。


それでも陽葵は少し嬉しかった。


(ちゃんと話せた。)


心の中だけで小さく笑う。


一方の奏汰は、


(話しやすい人なんだな。)


という印象しかなかった。


有名人だから話しかけづらいと思っていたが、そんなことはなかった。


授業が終わる。


「ありがとう。」


陽葵が小さく頭を下げる。


「こちらこそ。」


奏汰も自然に笑った。


その笑顔を見た陽葵は、一瞬だけ言葉を失う。


(……ずるい。)


その笑顔だから、


好きになってしまったのに。


「柏瀬。」


「はい!」


陸上部の友達に呼ばれ、陽葵は慌てて席へ戻っていく。


その様子を見ていた悠真が、ニヤニヤしながら近づいてきた。


「おい。」


「何?」


「学校一と普通に話してたな。」


「授業だから。」


「普通はもっと緊張する。」


「そうか?」


「そうだよ。」


奏汰は首をかしげる。


「みんな同じ高校生じゃん。」


その一言に、悠真は苦笑した。


「そこがお前なんだよな。」


教室の後ろでは。


「また榛原か。」


「今度は柏瀬さん……。」


「偶然だろ。」


そう言いながらも、男子たちの表情は少し曇る。


学校一の美少女三人。


そのうち二人が、同じ日に榛原奏汰と会話した。


まだ短いやり取り。


それでも気になるには十分だった。


そして教室の窓際では。


澪が静かにその様子を見つめていた。


(次は……私。)


誰にも聞こえないほど小さく呟き、


そっと視線を逸らした。


放課後まで、あと少し。


四人の距離は、ほんのわずかに近づき始めていた。

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