第4話 静かな昼休み
昼休みを告げるチャイムが鳴る。
「よし、行こうぜ!」
朝比奈悠真が勢いよく立ち上がった。
「今日は中庭?」
「もちろん!」
「購買のパンも買ってきたし!」
いつもの男女グループが自然と集まる。
「奏汰、弁当忘れてないよな?」
「さすがに今日はある。」
「昨日ゲームして夜更かししたんだろ?」
「してない。」
「絶対した。」
笑い声が教室に響く。
その様子を見た女子が、隣の友達へ小声で話しかける。
「やっぱりあのグループ楽しそう。」
「うん。誰かだけが目立つ感じじゃないもん。」
「自然体って感じ。」
「私もああいう友達欲しいな。」
奏汰たちはそんな視線にも気づかず、中庭へ向かった。
春の暖かな風が吹く。
桜の花びらがゆっくり舞い落ちる。
「今年もここが特等席だな。」
悠真が芝生へ座る。
「去年もここだったよね。」
「一年経つの早すぎ。」
他愛もない話で笑い合う。
この何気ない時間が、奏汰は好きだった。
「そういえばさ。」
女子の一人が口を開く。
「奏汰って学校一の三人と同じクラスなんだよね?」
「そうだけど。」
「どう?」
「どうって?」
「近くで見るとやっぱり可愛い?」
奏汰は少し考え、
「確かに綺麗だとは思う。」
「おっ。」
「でも話す機会なんてないし、俺とは住む世界が違うよ。」
そう笑った。
誰もが納得する答えだった。
その頃――
校舎二階の窓から。
澪は中庭を見下ろしていた。
自然と視線は奏汰へ向く。
友達と笑い合う姿。
誰にでも同じように接する姿。
(あの笑顔……。)
思わず頬が緩む。
「会長?」
後ろから生徒会役員が声をかけた。
「あ……ごめんなさい。」
澪はすぐにいつもの表情へ戻る。
一方。
乃愛は女子グループと昼食中だった。
「乃愛ちゃん、今日も撮影?」
「ううん、今週末だけ。」
「忙しいねぇ。」
笑顔で話しながらも、
視線は一度だけ窓の外へ向く。
(楽しそう。)
(あの輪の中にいる奏汰くん、昔から変わらない。)
思わず微笑んでしまう。
そして陽葵。
部活仲間と昼食を終えた帰り道。
偶然、中庭が見えた。
「……。」
友達と笑っている奏汰。
その姿を見るだけで元気になれる。
「陽葵?」
「え?」
「どうしたの?」
「ううん、何でもない。」
慌てて歩き出す。
誰にも気づかれてはいけない。
まだ、この想いは。
しかし――
そんな三人の視線を、
偶然見てしまった男子がいた。
「……まただ。」
「どうした?」
「いや。」
(気のせいか?)
(でも……。)
学校一の三人が、
別々の場所から同じ男子を見ている。
そんな偶然が何度も続くはずがない。
胸の奥に小さな違和感が残る。
その違和感は、
やがて学校中を巻き込む大きな噂へと変わっていくことになる。
もちろん。
その中心にいる榛原奏汰だけは、
まだ何も知らなかった。




