第19話 思っているより有名らしい
駅前のファミレスに着くと、店内は放課後の高校生で賑わっていた。
「八名様ですね。こちらへどうぞ」
店員に案内され、八人は窓際のテーブル席へ腰を下ろす。
「久しぶりだな、この人数。」
蓮司が椅子にもたれながら笑う。
「みんなで来ると賑やかだね。」
千夏が微笑む。
それぞれメニューを開き、何を食べるか考え始める。
「俺、今日も唐揚げ。」
湊が即決すると、
「迷いがないね。」
美琴が笑う。
「奏汰は?」
ひなのが尋ねる。
「ハンバーグかな。」
「やっぱり。」
悠馬が吹き出す。
「長い付き合いだから分かる。」
注文を済ませ、ドリンクバーから戻る。
料理を待つ間、自然と雑談が始まった。
授業のこと、次の小テストのこと。
いつものように話が弾んでいると、蓮司がふと思い出したように口を開く。
「そういえばさ、奏汰。」
「ん?」
「最近、お前結構目立ってるよな。」
「俺が?」
奏汰は首を傾げる。
「その反応だと思った。」
悠馬が苦笑する。
「本人だけ気づいてない。」
「何のことだ?」
奏汰が聞き返す。
「まずは冬瀬さん。」
湊が口火を切った。
「最近、普通にお前の席まで来るじゃん。」
「ああ。」
蓮司も頷く。
「昼も一緒に食べてる日あるし。」
「教室にいたら嫌でも目に入るよね。」
結菜が笑う。
「最初はクラスのみんなもびっくりしてたもん。」
美琴も苦笑する。
「でも、俺たちから見たら普通に話してるだけだろ?」
奏汰が言うと、
「その『普通』が普通じゃないんだって。」
悠馬が笑った。
「冬瀬さんって、あんな感じで男子と話す印象なかったし。」
千夏も頷く。
「だから目立つんだよ。」
「……そういうものか。」
奏汰はまだ実感が湧かない様子だった。
「次。」
悠馬が指を一本折る。
「奏坂さん。」
「この前も普通に話してただろ。」
蓮司が言う。
「しかも自然だった。」
湊も続ける。
「相手が奏坂さんだから余計に目立つ。」
「俺は話しかけられたから話しただけなんだけど。」
奏汰が苦笑すると、
「本人は毎回それ言うよな。」
悠馬が笑う。
「でも周りからしたら十分驚くよ。」
ひなのも小さく笑った。
「最後。」
結菜が指を三本目まで立てる。
「柏瀬さん。」
「あの二人も最近よく一緒にいるよね。」
美琴が奏汰を見る。
「昼休みもそうだし、話してるところもよく見る。」
千夏が続けた。
「柏瀬さん、楽しそうに笑ってること多いよね。」
「私もそう思う。」
ひなのが頷く。
「……そうだった?」
奏汰が首を傾げる。
「ほら。」
悠馬が笑う。
「また自覚ない。」
「冬瀬さん。」
蓮司が一本目の指を立てる。
「奏坂さん。」
湊が二本目を立てる。
「柏瀬さん。」
結菜が三本目を立てた。
「学校一って呼ばれてる三人全員と普通に話してるの、お前くらいだぞ。」
「しかも二人とは昼まで一緒。」
悠馬が肩をすくめる。
「そりゃ目立つよ。」
「だから最近、お前も結構有名。」
蓮司が笑った。
奏汰は七人の顔を見回し、困ったように笑う。
「そんなつもり、本当にないんだけどな。」
「そこが奏汰らしい。」
美琴が微笑む。
「変に意識しなくていいよ。」
千夏も続ける。
「今までどおりで。」
「そうそう。」
結菜が笑顔で頷く。
「そのままで十分。」
ちょうどその時、店員が料理を運んできた。
「お待たせしました。」
テーブルいっぱいに料理が並ぶ。
「よし、食べよう!」
湊が勢いよく手を合わせる。
「いただきます!」
八人の声が重なり、賑やかな放課後は笑顔とともに続いていった。




