第20話 もし一人だけ選ぶなら
「じゃあさ。」
悠馬がニヤリと笑う。
「まだ終わってないぞ。」
「……まだあるのか。」
奏汰が苦笑すると、蓮司も口元を緩めた。
「今の答えじゃ、六十点くらいだな。」
「採点されるようなこと言った覚えないんだけど。」
「じゃあ最後の質問。」
湊がコップを置く。
「冬瀬さん、奏坂さん、柏瀬さん。」
「もし友達になるなら、一番気が合いそうなのは誰?」
「おい。」
奏汰は思わず笑った。
「それ答えないとダメ?」
「ダメ。」
悠馬が即答する。
「満場一致。」
蓮司も頷いた。
「多数決って何だよ。」
奏汰は困ったように頭をかく。
「別に順位をつけるつもりはないんだけどな。」
「いいから、いいから。」
結菜が笑う。
「気軽に答えてみなよ。」
七人の視線が自然と奏汰へ集まる。
奏汰は少しだけ考え込んだ。
「……難しいな。」
「そんなに悩む?」
ひなのが首を傾げる。
「三人とも全然違うから。」
奏汰は正直に答えた。
「冬瀬さんは落ち着いて話せるし。」
「奏坂さんは周りをよく見てる。」
「柏瀬さんは明るくて、一緒にいると自然と笑える。」
「また全員褒めた。」
悠馬が笑う。
「そういう質問じゃないだろ。」
「分かってるよ。」
奏汰は苦笑する。
「でも、本当にそう思ってるから。」
少しの沈黙。
奏汰は改めて口を開いた。
「友達としてなら、三人とも普通に接しやすい相手だと思う。」
「それが奏汰らしいな。」
蓮司が笑う。
「結局、一人に決めないんだ。」
美琴が穏やかに微笑む。
「決められないよ。」
奏汰は肩をすくめた。
「三人ともいい人だと思うし。」
「その答えなら納得かな。」
千夏が微笑む。
「じゃあ次。」
結菜が悪戯っぽく笑う。
「彼女にするなら──」
「却下。」
奏汰が食い気味に答える。
一瞬静まり返り、
「早っ!」
湊が吹き出した。
「そこだけ反応が速い。」
蓮司も笑う。
「絶対ろくでもない質問だと思ったから。」
奏汰が言うと、
「図星。」
悠馬が肩をすくめる。
テーブルは笑い声に包まれた。
「でも安心した。」
ひなのがくすっと笑う。
「奏汰はいつもどおりだね。」
「変わらないところが奏汰らしいよ。」
美琴も微笑む。
「変わる理由もないし。」
奏汰が照れくさそうに答える。
食事も終わり、それぞれが飲み物を飲みながら一息つく。
窓の外を見ると、夕焼けが街を茜色に染めていた。
「そろそろ帰るか。」
悠馬が立ち上がる。
「またみんなで来たいね。」
結菜が笑顔を見せる。
「今度はテスト終わってからかな。」
湊が言うと、
「その前にテスト勉強だけどね。」
美琴の一言に、
「……現実見せるなよ。」
悠馬が肩を落とす。
「まだ考えたくなかった。」
湊も苦笑する。
「逃げてもテストは来るぞ。」
蓮司が笑う。
「奏汰もちゃんと勉強しろよ。」
「分かってるって。」
奏汰が苦笑すると、
「その返事、全然信用できない。」
結菜が笑いながら言う。
「私もそう思う。」
ひなのが小さく笑い、
「結局、みんなで勉強することになりそうだね。」
千夏が微笑む。
和やかな空気のまま会計を済ませ、八人は店をあとにした。
学校では何気ない毎日が続いている。
けれど、その”何気ない日常”は、少しずつ確実に変わり始めていた。




