第18話 久しぶりの放課後
六時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。
荷物をまとめ始める生徒たちで、教室は一気に賑やかになる。
すると、校内放送が流れた。
『本日は職員会議のため、全部活動を休止とします。生徒の皆さんは速やかに下校してください』
一瞬静まり返った教室は、次の瞬間、大きなどよめきに包まれた。
「マジか!」
「ラッキー!」
「今日は遊べるじゃん!」
あちこちから嬉しそうな声が聞こえてくる。
奏汰も思わず笑みを浮かべた。
「今日は珍しく静かな放課後になりそうだな。」
「いや、逆だろ。」
隣の悠馬が笑う。
「今日はみんな暇になる。」
「……確かに。」
その言葉に頷いた時だった。
「やったー!」
教室の前の方で湊がガッツポーズをする。
「せっかく今日は部活ないんだから、どっか行こうぜ!」
「お前はそれしかないのか。」
奏汰が苦笑すると、
「いいじゃん。久しぶりだし。」
美琴も笑顔で会話に加わる。
「みんな予定ないよね?」
「もちろん!」
ひなのが元気よく手を挙げる。
「テニスも休みだし!」
「私も。」
結菜も鞄を肩に掛けながら頷いた。
「バレーも休みだから今日はゆっくりできる。」
「これだけそろうのも珍しいね。」
美琴が教室を見回す。
A組の六人だけでも、こうして放課後にゆっくり話す機会は最近ほとんどなかった。
部活が違えば、帰る時間も違う。
誰かが大会前なら、誰かは委員会。
全員の予定が合う日は意外と少ない。
「そういえば。」
悠馬が口を開く。
「蓮司と千夏にも連絡するか?」
その瞬間だった。
ガラッ。
教室の扉が開く。
「奏汰ー。」
聞き慣れた声に全員が振り向く。
「やっぱりいた。」
蓮司が笑いながら教室へ入ってくる。
その隣には千夏の姿もあった。
「今日は部活休みだから、真っ先に来ちゃった。」
千夏が笑う。
「やっぱり来たか。」
奏汰が笑い返す。
「来ると思ってた。」
湊が手を振る。
「今日は全員いるじゃん!」
ひなのが嬉しそうに声を弾ませる。
奏汰。
湊。
悠馬。
美琴。
結菜。
ひなの。
蓮司。
千夏。
久しぶりに八人全員がそろった。
「これ、いつ以来?」
千夏が笑う。
「かなり久しぶりじゃない?」
美琴も懐かしそうに言う。
「最近は部活ばっかだったもんな。」
蓮司が肩をすくめた。
「今日は奇跡の日ってことで。」
悠馬が冗談交じりに言う。
「大げさ。」
奏汰は笑いながらツッコミを入れる。
すると湊がパンッと手を叩いた。
「よし! 今日はファミレス行こう!」
「賛成!」
ひなのが真っ先に反応する。
「ドリンクバーでのんびりしようよ。」
「それいいね。」
結菜も笑う。
「久しぶりなんだから、いっぱい話したい。」
「決まりだな。」
蓮司が立ち上がる。
誰かが仕切るわけでもなく、自然と全員が動き始める。
それが、この八人のいつもの空気だった。
「じゃあ、行こうか。」
奏汰が鞄を肩に掛ける。
「おー!」
七人の声が重なり、教室いっぱいに響いた。
笑いながら教室を出ていく八人。
何気ない放課後。
何気ない会話。
それでも、この時間はきっと、何より大切な青春の一ページだった。




