第17話 昼休みの輪
翌日。
一時間目が終わると、教室は一気に賑やかになった。
「やっと休み時間!」
悠真が椅子にもたれかかる。
「まだ一時間目だけどな。」
奏汰が笑う。
「今日は長く感じる。」
「月曜明けだからだろ。」
「まだ火曜日だぞ。」
「それがつらいんだよ。」
友人たちが笑い合う。
そんな何気ない時間も、このグループでは自然と笑顔が生まれる。
◇◇◇
昼休み。
「今日は中庭で食べよう!」
いつものように友人グループが移動を始める。
その様子を見ていた乃愛は、小さく深呼吸した。
(……今日なら。)
勇気を出して立ち上がる。
「あの。」
奏汰たちが振り返る。
「もしよかったら、一緒にお昼食べてもいい?」
一瞬だけ静かになる。
すぐに悠真が笑顔で答えた。
「もちろん!」
「人数多い方が楽しいじゃん。」
「ありがとう。」
乃愛はほっとしたように笑った。
「柏瀬さんも誘えば?」
友人の女子が何気なく言う。
「えっ?」
乃愛は少し驚く。
教室の反対側では、陽葵が一人で弁当を準備していた。
乃愛は少し迷ってから声を掛ける。
「陽葵ちゃん。」
「うん?」
「一緒にお昼どう?」
「私?」
「みんなで食べよう。」
陽葵は驚いた表情を浮かべた。
「でも……。」
「遠慮しなくていいよ。」
女子たちも笑顔で頷く。
「おいでよ。」
「みんなで食べた方が楽しいし。」
その一言で、陽葵は小さく笑った。
「……ありがとう。」
◇◇◇
中庭。
「いただきます!」
いつもより少しだけ大きな輪になる。
「柏瀬さん、陸上部どう?」
友人の男子が尋ねる。
「今度大会があるの。」
「すごいじゃん!」
「応援行こうかな。」
「本当に?」
陽葵が嬉しそうに笑う。
「もちろん。」
自然と会話が広がっていく。
乃愛も女子たちと楽しそうに話している。
奏汰はその様子を見て、小さく笑った。
(みんな楽しそうだな。)
それだけで十分だった。
「榛原。」
悠真が小声で言う。
「賑やかになったな。」
「そうだな。」
「こういうの嫌いじゃない。」
「俺も。」
穏やかな時間が流れる。
少し離れた場所では、一年生の女子たちがその光景を見ていた。
「見て。」
「あのグループ。」
「やっぱり楽しそう。」
「私もあんな高校生活送りたいな。」
自然とそう思わせる雰囲気が、そこにはあった。
◇◇◇
昼休みの終わり。
教室へ戻る途中。
「今日はありがとう。」
陽葵が乃愛へ言う。
「誘ってくれて。」
「私も一緒に食べたかっただけ。」
乃愛は笑う。
「またみんなで食べよう。」
「うん。」
二人は笑顔を交わした。
その様子を見ていた奏汰は、
(仲良くなれてよかった。)
そう思うだけだった。
恋愛なんて、まだ頭にはない。
しかし――
乃愛も、陽葵も。
少しずつ、奏汰と過ごす時間が「特別」になり始めていた。




