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『学校一と呼ばれる三人の美少女は、今日も俺を諦めない。』  作者: 夜凪ロア


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12/21

第12話 少しだけ近づいた距離

翌朝。


雨はすっかり上がり、青空が広がっていた。


「おはよう!」


「おはよー!」


教室にはいつものように明るい声が響く。


奏汰も席に着くと、悠真たちが集まってきた。


「昨日、ちゃんと帰れた?」


「帰れたよ。」


「柏瀬さんも?」


「駅まで送っただけ。」


「ふーん。」


悠真は意味ありげに笑う。


「何だよ。」


「いや別に。」


その様子を見ていた友人たちも苦笑する。


「悠真、絶対からかってる。」


「だって面白いじゃん。」


「俺は何も面白くない。」


奏汰は肩をすくめた。


その時だった。


「おはよう。」


陽葵が教室へ入ってくる。


いつも通り落ち着いた表情。


しかし、奏汰と目が合うと、小さく微笑んだ。


「昨日はありがとう。」


「気にしなくていいよ。」


「でも、おかげで濡れずに帰れた。」


「それならよかった。」


短いやり取り。


それだけだった。


しかし教室のあちこちで、その様子を見ていた生徒がいた。


「また話してる。」


「昨日一緒に帰ったって本当?」


「図書委員だからじゃない?」


「それにしても……。」


まだ小声の会話だ。


噂と呼ぶほどではない。


だが、確実に奏汰と陽葵を結びつける声は増え始めていた。


◇◇◇


昼休み。


いつものように奏汰たちは中庭へ向かう。


「今日は天気いいな。」


「昨日の雨が嘘みたい。」


「風も気持ちいい。」


八人で輪になって昼食を広げる。


そんな姿を見て、一年生の女子が話していた。


「あのグループって仲いいよね。」


「先輩たち楽しそう。」


「入りたいって思っちゃう。」


自然と笑顔が広がる空間。


それが奏汰たちのグループだった。


一方、校舎の窓からその様子を見ていた乃愛。


「……。」


少しだけ羨ましかった。


クラスでは話せる。


でも、あの輪の中にはまだ入れていない。


(もう少し……。)


(もっと自然に話せるようになりたい。)


そう思いながら、そっと教室を後にした。


◇◇◇


午後の授業が終わり、放課後。


「榛原くん。」


教室を出ようとした奏汰を、担任が呼び止めた。


「悪いけど、この出席簿を職員室まで持っていってくれるか。」


「分かりました。」


奏汰は出席簿を受け取り、廊下へ出る。


職員室へ向かう途中、階段の踊り場で足を止めた。


「あれ?」


そこには乃愛がいた。


大きな紙袋を両手で抱えている。


「あ、榛原くん。」


「どうしたの?」


「撮影で使った資料を先生に頼まれて運んでるんだけど……。」


少し重そうだ。


「半分持とうか?」


奏汰は自然に手を伸ばした。


「えっ、いいの?」


「そのままだと大変そうだし。」


「……ありがとう。」


乃愛は嬉しそうに笑った。


二人は並んで職員室へ向かう。


廊下には夕日が差し込み、二人の影が長く伸びていた。


「撮影って大変?」


「うん。でも好きだから頑張れる。」


「そうなんだ。」


「榛原くんは?」


「普通の高校生活が一番かな。」


その答えに、乃愛はくすっと笑った。


「榛原くんらしい。」


「そう?」


「うん。」


その笑顔は、昨日より少しだけ自然だった。

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