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【観測者の時空】創作エッセイ―その違和感は、未来のバグです― 「あなたの思考は、すでに先回りされている」  作者: Taku
A面:違和感の観測

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8/22

第4話前半 「思い出編:記憶は書き換えられる」

午後の光が、静かに差し込んでいた。


沙織の部屋は、相変わらず整っている。

本は背表紙を揃えて並び、ペン立ての角度も一定。

余計なものは何もない。掃除が行き届き、埃ひとつ落ちていない。

誰かが「きれいだね」と言うたび、沙織は「そう?」と首をかしげる。

でも、少しだけ嬉しそうだった。


机の上には、いくつかの写真が並んでいた。

そのうちの何枚かには、ペンで赤い丸がついている。

「ここ、もう少し明るくしたい」「この影、消せないかな」

そんな言葉が、写真の端に走り書きされていた。


「これ、この前の旅行」


沙織が一枚を差し出す。

そこには、拓と瞳と光莉が写っていた。

笑っている。完璧なタイミングで。


「いい写真だね」


瞳が言う。


「でしょ」


沙織は、少しだけ満足そうに笑った。


「でもさ」


光莉が、ふと口を開いた。


「こんなに綺麗だったっけ?」


その一言で、空気がわずかに揺れた。


「え?」


拓が聞き返す。


「いや……もっと風、強くなかった?

 あと、ちょっと寒くて、みんなテンション微妙だった気がする」


記憶をたぐる。

たしかに——あの日は風が強くて、光莉の髪がずっと乱れていた。

誰かが「寒くない?」と何度も聞いていた。


「それ、編集してるから」


沙織が、あっさり言った。


「え?」


「表情、ちょっと補正してる。あと色も」


さらりとした口調だった。

特別なことのように言っていない。

日常の延長線上のように。


「だって、そのほうが“いい思い出”になるでしょ」


拓は、もう一度写真を見た。

完璧だった。

誰も欠けていない。誰も悲しんでいない。

雲ひとつない青空。満点の笑顔。


でも——

(これ、本当にこのときの自分か?)

その疑問が、わずかに浮かぶ。


「ねえ」


瞳が静かに言った。


「それって……思い出なのかな」


沙織は、一瞬だけ考えた。

そして、こう答えた。


「“思い出にするための素材”かな」


そのとき——


✧ ✧ ✧

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