深淵の模造体 (Abyssal Effigy)(1)
三人組が部屋から部屋へ、回廊から回廊へと進むにつれ、迷宮の石煉瓦の壁に複数の足音が反響した。他の二人よりも物資の重荷がはるかに少ないプリシラが先頭に立った。ラインハルトは地図を注意深く見守り、エレインは背後からの奇襲に警戒を怠らなかった。
「それにしても」
王室騎士は前方の暗闇に目を凝らしながら話しかけた。
「あなたたちは本当に、この迷宮探索というものを隅々まで知り尽くしているのね」
「この仕事を始めて、もうすぐ五年になりますからな」
ラインハルトは古びた地図にメモを書き加えながら言った。
「嫌でも一つや二つの知恵は身につくものです。……ここを右へ」
言われた通りに進むと、石造りの通路の突き当たりから、かすかな青い光が漏れていた。
「あれは何かしら?」
プリシラは通路から目を離さずに尋ねた。
「階下への道です」
ラインハルトは地図を折り畳んでリュックサックにしまいながら答えた。
「時間通りのはずだ」
エレインが一瞬だけ懐中時計を取り出し、自分に頷いてみせた。
「九時。予定通りね」
「ここまで来るのに、たった二時間? 私が初めてここへ来たときは、一時間まるまる費やして何一つ進展がなかったというのに」
ラインハルトは剣と盾を構えながら彼女の隣に歩み寄った。
「迷宮は私たちに反応しているのではないか、と考えています。配置が毎回変わるのもそのせいで、ここから先が本来の姿だと思っておいた方がいい。二層から先は、いつも一筋縄ではいきません」
「どういう意味で?」
「あらゆる意味でよ」
エレインが疲れた声で答えた。
「奇襲もそうだし、魔物自体も一段と厄介になるわ」
プリシラは肩越しに振り返り、尋ねた。
「ちゃんと武装したゴブリンよりも?」
「しっかりと鎧を纏ったコボルトです」
ラインハルトが言った。
「あの害獣どもは、戦術というものも多少なりとも心得ている」
「今度は鎧を着た敵を相手にしなければならないと言うの?」
「騎士の従者と戦うと思えばいい。フルプレートではないが、それに近いものを着込んでいる」
プリシラは自分のレイピアの切っ先を見つめ、舌打ちをした。
「最高ね」
数分後、彼らは階下へと続く階段がある回廊の終端に達した。入り口の両脇を、二本の青い松明が照らしていた。
無言で頷き合った後、プリシラが先頭を切って新しい階段を下りていった。
やはり、奇妙な感覚だった。前の層の湿気は消え失せ、代わりに重く淀んだ空気が立ち込め、階段を下りるごとにそれが色濃くなっていく。階段の終わりが見えたとき、彼女はレイピアを固く握りしめた。
予想に反して、プリシラが足を踏み入れたのは、まるで城の内部のような入り組んだ回廊だった。大理石の柱が高々とそびえ立ち、白金のシャンデリアに灯された不滅の蝋燭が、窓のない広間を淡く、恐ろしい光で照らしていた。その光は、温もりも影ももたらさなかった。
その超現実的な感覚に、王室騎士は不安を覚えた。アルカディアの王城の広間に不気味なほど酷似していることに、彼女が気づかないはずはなかった。実際、それらの壁や豪華な装飾が、王宮の模造体であることは火を見るより明らかだった。
足元の黒い御影石と白い大理石の床タイルさえも、鏡のように磨き上げられていた。しかし、ふと自分自身の姿をそこに映した瞬間、彼女は本能的に息を呑んだ。
自分の顔があるべき場所には、ただ肌色の、ぼやけた塊があるだけだったのだ。
「あまり深く考えない方がいい」
エレインを連れて階段を下り終えたラインハルトが声をかけた。
「私も、最初にここへ来たときは動揺しました」
「下を見ないことね」
エレインはラインハルトと背中合わせのまま肩をすくめた。
「最悪なのは鏡じゃないわ、この理不尽な光よ。この光のせいで、角の向こうに何かがいるかどうかさえ予測できないんだから」
「ああ」
ラインハルトが付け加えた。
「エレインは以前、奇襲に気づくのが遅れて負傷したことがある。気をつけてくれ、プリシラ殿」
「分かったわ」
ラインハルトがリュックサックから二層の地図を取り出して進行方向を指し示し、プリシラが引き続き先頭を進んだ。彼女は常にレイピアを体の前に構えていたが、どこを見ても同じような広間と、御影石を叩く靴の鈍い足音の反響が、彼女の神経をすり減らせた。
「ここを左に曲がって、そのまま直進だ」
ラインハルトが地図を見ていたその時、プリシラが突如として足を止めた。彼は顔を上げた。
「どうしました?」
「ラインハルトさん、ここに生息している魔物はコボルトだと言っていなかったかしら?」
「そうですが?」
「……なら、どうしてあそこに全身鎧の騎士が立っているの?」
その鎧は彼女を遥かに見下ろすほど巨大だった。鈍く光る鋼鉄のロングソードと大きなカイトシールドがその傍らに携えられており、どちらにも血と、金属にこびりついた肉片が不気味に付着していた。これは装飾品などではない。
普通の騎士ではない。プリシラには、その騎士が誰を模しているのかが正確に分かった。
(レオナルド団長……)
ラインハルトにはそれが誰だか分からなかったが、その構えを一瞥しただけで、リュックサックを床に投げ捨て、鞘から剣を抜き放った。
「エレイン、前方だ!」
その声に反応し、エルフは素早く反転して弓を限界まで引き絞り、矢を放った。矢は首元の鎖帷子を狙ったものだったが、敵の盾によって容易に弾き返された。
「ちっ」
エレインは胸元の矢筒から何本もの矢を引き抜き、邪魔な予備の矢ホルダー二つを地面に投げ捨てた。
模造体は突如、盾を掲げて猛然と突進してきた。プリシラは我に返り、左手を前に突き出して叫んだ。
「――ファイア・ボルト!」
放たれた炎の粒が盾に激突し、その突進の勢いを削いだ――だが、止めるまでには至らない。敵のブーツが床を激しく擦りながら、なおも前進してくる。エレインは弓を下げ、鞘からショートソードを抜き放った。
「だから騎士って奴らは大嫌いなのよ」
模造体は、恐るべき洗練された動きで距離を詰めてきた。盾を固く構え、剣を用意し、付け入る隙を一切与えない。
だが、プリシラは怯まなかった。彼女は再び精神を集中させ、詠唱した。
「ウィンド・ショット――ファイア・ボール!」
今度は小さな炎の粒ではなく、オレンジ大の光球が彼女の手のひらの前で渦を巻き、その周囲を暴風の渦が包み込んだ。それは放たれた矢のごとき速度で射出された。
模造体は身を低くし、盾を傾けた――それによって魔法は盾の表面で跳ね返され、背後の空間で爆発を引き起こし、塵と瓦礫の煙幕を巻き上げた。
(魔法を……受け流したの!?)
次の瞬間、敵はプリシラの左手を突き刺そうと再び突進してきた。その前にラインハルトが立ちはだかる。模造体の剣が彼の盾に叩きつけられ、広間に金属音が響き渡り、大理石の上に火花が飛び散った。
「んぐっ!」
ラインハルトは相手の剣を強引に側方へ弾き飛ばし、その腕を相手の鎧に絡め取って拘束した。
「今だ、エレイン!」
彼女が側面から鋭く踏み込むと、動く鎧は彼女を斬りつけようとしたが、ラインハルトはその剣の刃を籠手で直接掴み、力任せにその場に固定し続けた。
エルフはショートソードの切っ先を相手の左脚の鎧の隙間にねじ込み、全身の体重を乗せて突き刺した。何かに手応えを感じたが、それは人間の感触ではなかった。
怪物の脚が崩れ落ち、ラインハルトはそのまま床に叩きつけようとしたが、敵は逆に騎士の体重を利用し、ラインハルトを自身の頭上へと投げ飛ばして拘束を振り切った。
「ぐはっ!」
ラインハルトはエレインの後方の床に凄まじい音を立てて叩きつけられた。エレインは今や、その怪物と正面から対峙していた。怪物が彼女を斬り伏せんと剣を振り上げたその瞬間、プリシラが素早くその兜を掴み、叫んだ。
「――ファイア・ボール!」
至近距離で放たれた魔法が彼女の手の中で炸裂し、その猛烈な炎が模造体の鎧の内部へと押し込まれた。爆発の反動で、プリシラは後方の地面へと激しく吹き飛ばされた。
鎧の隙間から水蒸気と熱気、そして肉の焦げる臭いが立ち上り、それは完全に沈黙した。
「うぅ……っ!」
プリシラは苦痛に呻き、視線を自分の左手へと向けた。手のひらの中央から、指先にかけてひどい火傷が急速に広がっていた。
最初は痺れていた感覚が、やがて凄まじい激痛へと変わり、手を握ることさえできなかった。彼女は右手で左の前腕を固く掴み、痛みに耐えた。
エレインはショートソードを使ってその鎧を引き倒すと、トドメを刺すために、兜のバイザーの隙間から容赦なく刃を突き刺した。
※次回更新は5月19日 21:30予定です。




