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腐朽(2)

小屋の外では、ラインハルトとエレインが入り口の傍らに座り込んでいた。二人とも疲れ果てているようで、武器を身に着けたり膝に置いたりすることもなく、ただ日干し煉瓦の壁に立てかけていた。エルフが吐き出したため息に、騎士はわずかに眉をひそめた。


「行儀が悪いぞ、エレイン」


「ああ、勘弁してよ」

 彼女はまた襲ってきたあくびを、手で口を覆って防いだ。

「あんたはどうなの? 疲れてないわけ?」


「あくびが出るほどではない」

 彼は革のブーツの先を見つめた。履き古されたその質感は以前に比べて劣化していたが、彼の意識は別のところにあった。

「教えてくれ、あれは何だったと思う?」


「あれって、何が?」


「あの少女の変貌だ。どう見ても、少なくとも五歳は歳を取っていた」


「ああ、それね……」

 エレインはガムベソンのほつれた糸をいじりながら鼻で笑った。

「さあね。私は暗殺者であって、魔術師じゃないし」

 だが、その直後に彼女がラインハルトをちらりと見ると、彼もまた彼女を見返した。

「でも、あの小さな女の子の死体と、老人の復活は……あれはまるで――」


その言葉に、彼は眉を深く寄せた。

「エレイン」


「彼女のせいだと言ってるんじゃないわ。自然な結論を言ってるだけ。あの男、名前は何だっけ? チャールズ? 彼には、たとえ望んだとしても、ハエ一匹生き返らせることなんてできなかったでしょう」

 彼女の視線が土の地面へと落ちていく。胃の底で、ある種の手触りの悪い不安が膨んでいた。

「でも、あの老人は……魔法剣士のお嬢さんを守るために、肉体の限界を遥かに超えて動いていたわ」


ラインハルトは伸ばした右足に視線を戻すと、右手の指で眉間を強く押さえながら目を閉じた。

「もし彼女に、死者を蘇らせる力があるのだとしたら……」

 彼は目を開き、ロングソードの刃を鋭く睨み据えた。

「他の連中も間違いなく放っておかないだろうな」


「それって……」


「男爵だ」


---


アリヴォールの南壁に近いスラム街では、町の衛兵の一隊が、後に「虐殺の丘」として知られることになる小屋へと到着していた。青々とした丘には死体が転がり、草木をねっとりとした深紅に染めていた。武器もまた、戦場からそのまま切り取られたかのように散乱している。草地のあちこちに見える黒ずんだ跡は魔術が使われたことを示しており、数体の黒焦げた死体がその破壊の証人となっていた。


経験の浅い衛兵たちはその惨状に耐えきれず、丘の下の方にある三体の黒焦げた死体よりも先へ進むのを避けていた。生え際の後退した一人の衛兵が、生存者がいないか遺体を一つずつ調べ始めた。

 彼は死体を通り過ぎると、振り返って若い衛兵たちを怒鳴りつけた。


「何を突っ立っている! 生きている者がいないか探せ」

 彼はハルバードの握りを直した。

「もし襲いかかってくる奴がいたら、最初の一撃で二度と起き上がれないようにしてやれ」


彼らは互いに顔を見合わせ、躊躇いながらも班長に続いた。遺体から遺体へと回っていったが、誰もが死んでいるか、あるいは死の淵にいるように見えた。


「クソッ」

 年配の衛兵は、白目を剥いて倒れているゴロツキを見つけ、毒づいた。その首の肉は、まるで野獣に食い千切られたかのように大きく欠け落ちていた。

「一体全体、ここで何が起きたんだ?」


「班長!」

 若い衛兵の一人が、小屋の近くで意識を失っているカールを見つけた。

「こいつは無事なようです」


「ん?」

 彼は倒れた巨漢に近づき、ハルバードの石突きで突いた。

「こいつはカールだ、あの悪名高いゴロツキの」


「えっ?」


本能的に、年配の衛兵は巨漢の周囲を見渡し、上質なロングコートを着た死体に気づいた。近づくと、彼は嫌悪感に顔を歪めた。その男の顔面は、個人の判別が不可能なほどの暴力で叩き潰されていた。

 若い衛兵も近づき、それを見てしまった。見たくもなかった光景を。


「うげっ!」

 彼は目を逸らした。

「誰が……誰が同じ人間に対して、こんな真似ができるんだ?」


「分からん。だが、やった奴を見つけ出さなきゃならん」


彼らが他の死体を調べて回っていると、一人の若い衛兵が小屋の入り口に近づいた。死の悪臭が鼻を突き、彼は本能的に入り口から後ずさった。


「ううっ!」

 彼は眉をひそめ、嫌悪感に歯を食いしばった。

「何だ、この臭いは!?」


鼻と口を布で覆った別の衛兵が、小屋の中を覗き込むことにした。内部の闇は不自然に感じられた。停滞したカビ臭い空気の中に、何か邪悪なものが漂っているかのようだった。


「ん?」

 目を細めると、影の中で何かが動いているのが見えた。腐った板張りの近くで、人が丸まっているような形をしていた。

「おい、そこにいるのか! 大丈夫か?」


返答はなかった。人影は影の中で蠢いていたが、衛兵の言葉に反応しているようには見えなかった。


「どうした、喋れないのか?」

 彼が小屋に足を踏み入れ、ブーツの下で床が軋んだ瞬間、暗い影が動き、真っ赤な眼光を彼に向けた。その血のような瞳は、まるで何かに憑りつかれたかのように不気味に光っていた。

「何だと!?」


人間離れした跳躍で、ミイラ化したような男の死体が小屋から飛び出し、衛兵を押し倒した。それは唸り声を上げ、牙を剥き出しにして彼の顔を食い千切ろうとした。若者はハルバードの柄を横にして死体の攻撃を必死に防ぎ、ギザギザの腐った歯を顔から遠ざけるのが精一杯だった。


「どけろ! こいつをどけてくれ!」


もう一人の衛兵が我に返り、ハルバードの穂先を「父上」の脇腹に突き立てた。傷口から濁った暗赤色の血が飛び散ったが、死体は致命傷のはずのその一撃を完全に無視したかのように、仲間を噛み砕こうとし続けた。


「なっ――!」

「あああああ!」


アンデッドの反対側から鋭い叫び声が上がり、斧の刃が「父上」の背骨に深く食い込んだ。すると、残りの四肢の動きが突如として停止した。年配の衛兵は新兵の上から死体を蹴り飛ばした。新兵は、制御不能な狂気に駆られたかのように空を噛み続けている死体から、必死の思いで這い去った。


ギザギザの歯を鳴らすその音は、二人目の若い衛兵がハルバードでその頭蓋骨を真っ二つに割るまで止まらなかった。その頃には、小屋の前までもが深紅に染まっていた。

 新兵はブーツで割れた頭部の一部を素早く押さえつけ、武器の刃を引き抜いた。


「女神様、今のは一体何だったんですか!?」


年配の衛兵は、まだ地面に座り込んで震えている新兵を見た。

「おい、しっかりしろ。立て」

 彼は胸当ての背中を掴んで若者を立たせると、手放していたハルバードを握らせた。

「構えていろ。中にこの化け物が他にもいないか確認する必要がある」


彼は新兵のハルバードを借りると、食べたものを戻しそうになっている別の衛兵に合図した。

「おい、俺に続け」

 そしてもう一人に命じた。

「お前は、外で見張っていろ」


「えっ!? 班長、私に中に入れって言うんですか!?」


「当たり前だ! お前、これ以上に武器を人に向けられるか?」


「い、いえ、ですけど――」


「なら黙って行け。後ろは俺が見ていてやる」


「……了解です……」


躊躇いながらも、彼は武器を前に構え、ゆっくりと小屋の中へと足を進めた。

「だ、誰か……誰かいるのか?」


年配の衛兵もハルバードを前に突き出し、尖った鋼の壁を作るようにして後に続いた。小屋の中へ進むにつれ、彼らの目は暗闇に慣れ始めた。遭遇した凶暴な死体を除けば、他に目を引くのは、干からびた少女の遺体と、そのすぐ傍らに落ちている鐘状の護拳《ベル・ガード》を備えたレイピアだけだった。


小屋の中に誰もいないことを確認してようやく、年配の衛兵は姿勢を崩した。彼は遺体に近づき、武器の石突きで二度突いたが、動かないのを見て腰を落とし、横にあるレイピアを拾い上げた。


「レイピアか?」

 親指ほどの幅しかない細い刃、そして特徴的な鐘状の護拳《ベル・ガード》に施された精巧な彫刻は、それが一般人の持ち物ではないことを示していた。

「あの老いぼれが、こんなものを持ち歩いていたのか?」


「ば、班長、もうここを出ましょう。気味が悪すぎます」


「ああ、分かっている。他の奴らを呼んで警戒させろ」

 彼は入り口へ向かいながら、レイピアを二度振った。

「この件は、隊長に報告せねばなるまいな」


「……はい、了解しました」

※次回更新は4月15日 21:30予定です。

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