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ひとりぼっち ~ I STAND ALONE ~  作者: 104


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20/21

FARM STAY ⑤

 僕たちが家に帰ると、リビングルームにはちなみさんがいた。

 寝ずに待っていてくれたのかも知れない。ロバートはワイルドとまだ飲んでいることを話すと、

「そう。たまにはいいわね」

 とあっさりしている。ちなみさんのことを全て知っているわけではないが、僕の中でのちなみさんのイメージで言うと、彼女らしい言葉だと思う。

僕はソファにぐったりして座った。

「あの二人に付き合ってたら、なんこ体があっても持ちやしないよ」

 雅樹は僕の意見と一致しているらしく、横で激しく頷いている。

「水でも飲む?」

 と言って僕らの返事を待つまでもなく、ちなみさんはコップに水を汲んできてくれた。


 一息つくと、雅樹が神妙な顔になった。

「俺、オーストラリアで骨を埋めようと思ってる。…どう思う?」

 いつもながら突然の驚くべき発言。僕は免疫があるはずなのに手に持っているコップを落としそうになるくらいびっくりしていた。ちなみさんは冷静だ。少し考えてから、

「どういうふうに?」

「今、ワンホリなんだけど、うちの会社がビジネスビザの申請してくれてるところなんだ。とりあえずそれで滞在が延びるから、永住権の申請も折を見てしようかと…。ちなみさんは国籍ってこっちに移したの?」

「いいえ。私はまだ日本国籍よ。こっちに国籍を移すつもりはないの。だってもし離婚ってことにでもなれば、日本に帰るんだから」

 僕と雅樹が返す言葉に悩んでいると、ニコニコしながら、

「まぁそれはないけど…今のところはね」

 どうやら雅樹の奴は、オーストラリア移住を真剣に考えているらしい。お兄ちゃんとお姉ちゃんはいずれ帰ると言っているので、やはりこの手の相談はちなみさんなのだろう。もうそろそろ滞在一年の雅樹なりの結論なわけで……けれど複雑な気持ちだった。別にいつも一緒にいたわけでもないから寂しいことはないだろうけど、どこかでいつでもすぐにでも奴に会えると思っているからそうだったのかもしれない。本当にオーストラリアに骨を埋める気なら、いつでも簡単に二人で馬鹿をやることはできなくなる。独りになってしまう。そう思えば思うほど、心がブルーになっていく。

「じゃあ、戻ってこないのか?」

「どこに?」

「日本だよ」

「あんなところ戻れっこないだろ。それに俺、子供の頃にしか読んでないから…」

「それは絵本。そうじゃなくて手の模様のこと」

「それを言うなら指紋」

「それって今流行ってるの?」

とちなみさん。僕と雅樹は一緒に首を振った。そして僕が、

「これ小さなころからやってるんだ。だから僕たちのコミュニケーションってやつかな」

「へんなの」

 と、ただただちなみさんは呆れている。

「ここにいると自分が自分でいれるような気がして、存在感ってやつを感じて、俺……エアーズロック登って何かがかわったような…うまく説明できないけど。公平。おまえも行けばわかるよ」

「そう願いたいね」

 ちなみさんは僕たちの会話を黙って聞いていた。



 次の日、僕たちはちなみさん家を後にした。

 数日後、僕はエアーズロックの旅に出る。

 お兄ちゃんとも話をしなければいけない。

 

 いろんなことがありすぎて、僕の頭はパニックに陥っている。でもまぁ残り少ないオーストラリアを楽しもう。そのことだけは忘れないでおこうと思っている。


第4章 FARM STAY はこれで終わりです。

第5章 忘れない でいよいよエアーズロックの旅が始まります。

この章でちょっとだけふれたあることの答えがよく読んでいただくと

わかるかもです。ヒントはFARM STAY①の件です。スルーしたとしても物語には影響ありません。

お楽しみ下さい。

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