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ひとりぼっち ~ I STAND ALONE ~  作者: 104


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2/21

GOING TO AUSTRALIA ①

 シンガポールに降り立ったのは僕の時計で午後八時、現地時刻で午後七時だった。

 飛行機を降りてからというもの何も分からないまま、周りの人たちの後をさりげなくついていき、異国の空港を彷徨っていた。真っ赤な絨毯で敷き詰められた空港内はとても綺麗で、暖かみを感じられる場所だった。

 

 僕はいろんな不安を抱えているのにもかかわらず、とても落ち着いていた。ここまで一緒の飛行機に乗っていたどこかの団体客の添乗員さんが親切で、どうしたらいいかを教えてくれたのだ。だから僕は、最終目的地であるオーストラリア・メルボルンへ行くのに何の迷いも無く、余裕綽々でいることが出来るのだ。と、ちょっと見栄を張ってしまった。実際は、シンガポールの空港がどんな所でとか観察する余裕もなく、ただひたすら乗客用ゲートの前の長椅子に腰かけている予定でいた。それが実態だ。


 だがその矢先、不幸なことにトイレに行きたい衝動に駆られたのだ。


 出発時間までまだ時間はあるし、飛行機に乗るまで我慢することは到底できない。僕は覚悟を決めこの場を離れ、いざトイレを探すことにした。実際は、心配をしていたのが馬鹿みたいに簡単に目的の場所を見つけ出し、僕は鼻高々でトイレに向かった。


 でもハプニングは用を足した後に起きたのだ。


 すがすがしい気分でズボンのチャックを閉め、鏡の前へ行き、服装の乱れをチェックした。別に誰も見ていないだろうが、見知らぬ土地でだらしない恰好はいけないと少しばかり僕は思っていたのだ。それだから身嗜みを調えていたのに、悪いことをして罰があたったかのように不運が僕を襲った。

 手を洗うため蛇口をひねろうとした時、自分の目を疑った。どうひねれば水が出るのかさっぱり分からない。いろいろ試してみたものの、成果はあがらない。しかも悪戦苦闘している時に限って人が入ってくるもので、何故か鏡の前でもう一度髪の乱れなんかをなおしてる素振りを見せ、ごまかしたりしていた。なかなかその場を離れない僕を不思議に思っているのか、じろじろ見られたが、気にせずにいた。するとその人は躊躇なく水を出し、手を洗って姿を消した。けっこう見栄っ張りな僕は、水の出し方を知らないことを気づかれまいと思うことしか頭になく、まぬけにもどうやってその人が手を洗ったのかを見逃してしまった。気づいた時にはもう遅い。結局、手を洗わずに出てきてしまった。おっちょこちょいにもほどがある。でも楽天家のレッテルをはられてる僕としては、僕が手を洗わなかったことを誰も知らないからまぁいいかと、あれだけ苦労して水を出そうとしてことも他人にそのことをばれないようにしていた苦労も、すでにどうでもいいような、そんな気分になっていた。

 

 トイレ事件があったことが遠い昔に思えるほど、一人で時間をつぶすのは大変疲れた。一分が一時間に思えるのも大げさじゃない。何度も時計とにらめっこした。空港内を見学するほど行動力もないし、その気力も起きないほど体がだるかった。生まれて初めての空の旅が約七時間の長旅(僕はもっと乗っていたのかと思ったら、親切にしてくれた他の団体客の添乗員さんの話だとそうらしい)で生きた心地がしない。そしてまた、これからどのくらいの時間かは知らないが(後から分かったが約七時間)どう考えてもあの鉄の塊が空を飛ぶことに疑問を抱いている僕にとって、そこで安らかな眠りにつくなんてことは問答無用で、棺桶に首を突っ込んだ状態といっても言い過ぎではない。だがそんな僕の不安をよそに、飛行機の離陸時間は刻一刻と近づいていた。

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