プロローグ
A toi qui es née le nine mars
僕は最近、よく同じ夢を見る。
カンカン照りの太陽、赤茶けた大地、そして突風が吹き荒れている風景…そんな中に僕は一人で立っている。
そこから見える景色は、寂しげな平原がつづいていた。空を見上げると、大きな雲が一つまた一つと流れ、そのつど僕の影を隠していた。
ただ地平線の彼方を、大地を、流れる雲や透き通った空を、ただ眺めている。この世に時間など存在しないとさえ思えるほど長い時間だ。そして何故だか、生きている証を感じとることができる。誰一人としていない。そう、僕一人の世界だ。
もうどのくらいの時間が過ぎたか僕にはわからない。ただ羊形の雲が十八匹、僕の真上を超えていったことだけは知っている。自信がある。
カタン!
突然、竹で出来ているような柔らかそうな杖が僕の目の前に倒れてきた。僕はなんの躊躇もなくその杖を拾った。するとモノクロの紳士が現れたのだ。僕は彼に杖を返した。チョビヒゲの男は無言のまま、ただかぶっていた帽子をちょこんと上げ、何処かに消えていった。
そんな夢だった。
不思議だけど、その夢を見た日の朝はすがすがしく幸せな気分になれるのだ。
夢についてもう一つ。
僕は、正夢をよく見る人間らしい。例を挙げたらきりがない。だからじゃないけど、僕は信じている。楽しみにしている。必ずこの夢が現実となり僕の記憶の中に刻まれることを。
いつ夢が現実になるか分からない。もしかしたらただの夢に終わるかもしれない。
だけど僕は眠る前に、あの夢をもう一度見ることができたら…そんなことを思いながら、いつも目を瞑っていた。
いつか出逢うだろうあの風景の、心地よさを味わいたいために。




