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ひとりぼっち ~ I STAND ALONE ~  作者: 104


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12/21

TASMANIA LOVE STORY ③

 ガイドブックとお兄ちゃんの話を総合すると、タスマニア島は獄門島だったらしい。そもそもオーストラリアという国自体が囚人を送り込む場所でしかなかった。中でもタスマニアに送られてきたのは極悪人、それにオーストラリアで悪さをした人もタスマニア島へ。日本で言うと島流しに使われた島らしい。


 だが今ではそんな面影はない。


 古い街並みは中世ヨーロッパ(行ったことはないが)を思い出させ、歩いていてすがすがしい気持ちになる。別に疑っているわけではないけど、港町とガイドブックに書いてあるとおり、歩いてすぐに海の匂いがした。海で泳ぐことは好きではないが、見る分には大好きなので気分も爽快だ。

 


 まずタスマニア・クエストよりも腹ごしらえが必要だったので、ランチタイムとしゃれこうもうと思ったが、ファーストフードのお店が見当たらなかった。お姉ちゃんと買い物へ行くと、ここが美味しいとか言っていろんなところに連れて行ってもらっているが、一人の時はいつもファーストフードの店にしていた。全世界共通の店に行けば、僕のわかりにくい英語でも理解できるだろうし、ある程度メニューも一緒なので、知らないものを食べて失敗することもなく、食生活は安定するからだ。

 けれどその店が見当たらない。

 これから幻の動物を探すために体力を蓄えるつもりが、食べるために体力を使うことになり本末転倒だ。こうなったら冒険してみるのもいいと、簡単にオーダーがとれそうな店に入ることにした。僕に言わせれば、まさに青天の霹靂だ。

 僕の勘てものは、ほとんどと言っていいほど当たらない…らしい。店に入ると、どうしていいか分からず立ち尽くしてしまった。まずいと思ったが、もうすでに遅かった。ウエイトレスのお姉さんが話しかけてきたのだ。

「座っていればオーダーを取りにいきます」

 そう彼女は言った…と思う、違いない。僕は空いている席に落ち着き、オーダーを取りにきてくれるのを待っていた。忙しいとは思えないから、なかなかウエイトレスのお姉さんが僕の所に来ないのはおかしいとは思ったが、ただひたすら待つしかない。たまにウエイトレスと目があうと、僕の方を見てなにやら話しているようだった。二人いたうちの一人がやっと僕の所に来たので、いよいよだと緊張していると、

「あそこ、並んでるでしょ?」

 と言った…たぶん。指差した方に目線を送ると、確かに食べ物が並んでいる。そうすると僕の英語力もなんとかいけそうだ…ろう。それで自信がついたか、僕はそのことに対して大きく頷いた。けどウエイトレスはなぜか困った顔をしているようだ。僕はただ笑うしかなかった。そんな時、タイミング良く客がやってきた。同じように説明をしているらしい。よーく見ていると、さっきウエイトレスが指差した所にある食べ物が並んでいる場所へ行き、まず物色しているようだ。そして一番左にあるレジに行き、ウエイトレスのお姉さんに何やら話している。最後にお金を払い番号札みたいなものをもらっていた。


 ようするにここではそうするらしい。


 さっそく立ち上がり、実行に移そうとした。けれど見たところでどの食べ物をどう言うかわからず、にらめっこをしていたところ、お姉さんがやってきてまた何やら言ってきた。今度はまた知ったかぶりをして恥をかくのは嫌だったので、最もシンプルに、美味しそうなものを指差しながら、

「I want this and this…」

 という感じで勇気をもって言ったところ、理解してくれたらしく、お金を払い念願の番号札を手にいれた。

 やっとの思いで食べる所までこぎつけたが、期待して待っていた料理は何だかよく分からない味で、僕をがっかりさせた。

 と言うか、舌がどうにかなっている。まったく味覚がない。

 どうやら風邪を本格的にひき始めたみたいだ。そう思いこむとせっかく苦労してオーダーした料理も咽喉を通らずじまいで、もうホテルに戻り休養をしたい気分になっていた。まだ始まったばかりのタスマニア探検もこれではどうしようもない。すっかり意気消沈して、店を後にすることにした。

 


 帰路、頭がクラクラしてきて、体がだるい。あーもうだめだと叫びたい。ちょっと一休みをしようとしたら、ちょうどベンチをみつけた僕はそこへ腰をおろした。うなだれしばらく時間が経っていたが、頭をあげると目の前にタスマニア・トラベル・センターと大きく書かれている看板を見つけた。


 “ポート・アーサーはお勧めだよ”そうお兄ちゃんが言っていたのを思い出した。


 早めに予約しといた方が良いと、僕の勘が言っている。重い腰を上げ、まるで世界の果てにたどり着いた瞬間のように一歩一歩地に足がついている感触を確かめながら目的地へと進んだ。

 

 ここでも苦労はいつものとおり、しかしやっとの思いで言葉の壁を乗り越えることができた。僕の勘というのもたいしたもので、明日を逃すと次のツアーは僕の滞在期間にはないとのことだった……と言っていたと信じたい。


 昼食とこの騒動ですっかり疲れきってしまった僕は、タスマニアタイガーどころの騒ぎではなくなってしまった。しかもツアーは明日と来ているから、今から体を休め体調万全で観光したい。このまま風邪を引きずり旅するのは不本意だから、今日一日を犠牲にしようと心にきめ、ホテルへと急いだ。

 

 本当に体がだるい、頭痛がする。

 顔がほてっていてぼぉーっとしている。

 これから先のタスマニアひとり旅は、ただただ不安だけが残っていたのだ。

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